著者
黒田 顕 木島 綾希 金 美蘭 松下 幸平 高須 伸二 石井 雄二 小川 久美子 西川 秋佳 梅村 隆志
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第39回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.P-115, 2012 (Released:2012-11-24)

【目的】鉱物由来ワックスであるオゾケライトは、主にC29~C53の炭化水素から構成される高分子化合物であり、既存添加物としてチューインガムのガムベースに使用されているが、その毒性に関する報告は少ない。そこで今回、オゾケライトの長期投与の影響を検討するため、 ラットにおける慢性毒性・発がん性併合試験を実施した。【方法】6週齢の雌雄F344ラット各190匹を7群に分け、慢性毒性試験では0、0.05、0.1および0.2%(各群雌雄10匹)の用量で1年間、発がん性試験では0、0.1および0.2%(各群雌雄50匹)の用量で2年間、混餌投与した。実験期間中の一般状態観察、体重および摂餌量測定、剖検後の病理組織学的検査、慢性毒性試験ではさらに血液学検査、血液生化学検査、肝臓のGST-P陽性巣の定量解析を行った。【結果】慢性毒性試験では、雄0.1%以上で体重増加抑制、雌雄0.05%以上で貧血所見、AST・ALTの増加、TP・Albuminの減少、雄0.2%および雌0.1%以上で白血球数の増加、雌0.2%でBUNの増加が認められた。また雌雄0.05%以上で肺重量の増加、雌雄0.1%以上で肝臓および脾臓重量の増加、雄0.2%で腎臓重量の増加が認められた。病理組織学的には、雌雄0.05%以上で肝臓の泡沫細胞集簇、雄0.2%および雌0.05%以上で肝臓およびリンパ節の異物肉芽腫が認められた。肝臓のGST-P陽性細胞巣は、雌雄0.05%以上で数あるいは面積が増加した。発がん性試験では、雌雄0.1%以上で体重増加抑制、雌雄0.1%以上で肺、脾臓、肝臓および腎臓重量の増加が認められた。また、雄の0.1%以上で肝細胞腺腫の発生率および肝臓における総腫瘍発生率の増加が認められた。【考察】リンパ節ならびに肝臓で認められた泡沫細胞集簇および異物肉芽腫は、難吸収性高分子化合物の大量投与により惹起される病変と考えられた。また、GST-P陽性細胞の定量解析ならびに発がん性試験結果からオゾケライトは雄ラットの肝臓に弱い発がん性を有すると考えられた。
著者
三森 国敏 岡村 美和 金 美蘭
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会 第33回日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.24, 2006 (Released:2006-06-23)

1997年に開催された第4回医薬品に関する国際ハーモナイゼーション会議では、1種類のゲッ歯類を用いた長期がん原性試験と遺伝子改変マウスなどを用いた短期がん原性試験のデータから医薬品のがん原性は評価可能であると結論され、新しいがん原性試験ガイドラインが策定された。今までにこれらの遺伝子改変動物についての検証作業が実施されてきており、ヒトプロト型c-Ha-ras遺伝子導入トランスジェニックマウス(rasH2マウス)やp53の片側アレルをノックアウトしたマウス[p53(+/-)マウス]は遺伝毒性発がん物質に非常に感受性が高いことが示されている。さらに、rasH2マウスではPPARαアゴニストのような非遺伝毒性発がん物質に対しても感受性を示すことが報告されている。我々の研究室では、今までに多くの発がん物質についてのrasH2マウスに対する発がん感受性に関する研究およびその発がん増強機序についての研究を実施してきており、導入遺伝子の過剰発現がその腫瘍発現増強に関与しており、内因性のras遺伝子もその発がんに関連していることを見出した。さらに、その発がんには、osteopontin、 Cks1b、Tpm1、Reck、gelsolinなども関与していることを見出している。一方、2004年7月には、米国FDAは、PPARγないしα/γアゴニストの発がん性はp53(+/-)マウスでは評価できないことから、これらの医薬品の発がん性評価には従来のラットやマウスを用いた2年間がん原性試験のデータの提出を要求するという規制を開始した。しかし、γアゴニストであるトログリタゾンのrasH2マウスを用いた6ヶ月混餌投与試験を実施したところ、血管系腫瘍が6000ppm投与群(長期がん原性試験での発がん用量)で誘発され、rasH2マウスがPPARアゴニストの発がん性を検出できないわけではないことが示されている。