著者
海野 剛裕 菅原 正義 中久喜 輝夫 岡田 嚴太郎
出版者
The Japanese Society of Applied Glycoscience
雑誌
澱粉科学 (ISSN:00215406)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.21-27, 1993 (Released:2010-06-28)
参考文献数
12
被引用文献数
4

β-グルコオリゴ糖のヒト腸内フローラに与える影響について検討した.β-グルコオリゴ糖は,微生物起源のβ-グルコシダーゼの糖転移・縮合反応を有効に利用して製造されたβ-グルコオリゴ糖を主成分とするシラップ(商品名:ゲントース)を用いた.In vitroでの腸内細菌による資化性試験においては,β-グルコオリゴ糖はBifidobacteria, Lactobacilliに選択的に資化された.また資化性試験に用いた4株のClostridium perfringensにはほとんど資化性は認められなかった. さらに,β-グルコオリゴ糖をヒトに投与し,腸内フローラの測定を行った結果では,49/日のβ-グルコオリゴ糖の投与によりBifidobacteriaの菌数が有意(p<0.05)に増加し,その占有率は21.5%にまで増加した.この期間の糞便のpHは投与前後に比較して約0.5pH単位の低下が認められた.また被験者の健康状態については異常なガスの発生および鼓脹感はみられず,約6割の被験者において便通および便の硬さの改善がみられた. 以上の結果からβ-グルコオリゴ糖は49/日の摂取量で有効なBifidobacteriaの増殖因子であること,便性改善効果がある新規な澱粉糖として利用できることが示唆された.