著者
山本 健 海野 剛裕 菅原 正義 合田 敏尚
出版者
The Japanese Society of Applied Glycoscience
雑誌
Journal of Applied Glycoscience (ISSN:13447882)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.475-482, 1999-12-31 (Released:2011-07-01)
参考文献数
21
被引用文献数
14 14

ニゲロースおよびニゲロシルマルトオリゴ糖含有シラップ(商品名:テイストオリゴ®)は,甘味の立ち上がりが緩慢で,芳醇な深み,こく味を有する優れた味質を有し,粘度,浸透圧,水分活性がショ糖に類似していた.吸・保湿性は,ショ糖より優れることから食品の調湿や乾燥防止に有効と考えられる.また,キャンディーテストにおいて,ショ糖と比較して直接還元糖の変化が少なく,pH変化がまったくないため,170℃ での構成糖の熱分解は少なく,テイストオリゴ®は安定性に優れていた. ラット小腸刷子縁膜によるα-グルコシド結合を有する二糖類の水解性は,その速度に差異はあるものの,α-グルコシド結合を有するすべての二糖類が水解されることが明らかとなった.とくにニゲロースは,マルトースの86%程度の水解性を有しており,比較的速やかに水解され,同様にニゲロシルマルトオリゴ糖の水解性は,マルトオリゴ糖とほぼ同じの値を示し,ショ糖の水解性とほぼ同様な数値であることが明らかとなった.またテイストオリゴ®の分解性は,ラット小腸刷子縁膜によりほぼ完全にグルコースにまで分解された.以上のことから,ニゲロースおよびニゲロシルマルトオリゴ糖のエネルギー値は,マルトオリゴ糖,ショ糖および乳糖と同様に4kcal/gであると考えられた. 以上の結果より,ニゲロースおよびニゲロシルマルトオリゴ糖含有シラップは,食品加工に幅広く利用可能な食品素材であることが示唆された.
著者
海野 剛裕 菅原 正義 中久喜 輝夫 岡田 嚴太郎
出版者
The Japanese Society of Applied Glycoscience
雑誌
澱粉科学 (ISSN:00215406)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.21-27, 1993 (Released:2010-06-28)
参考文献数
12
被引用文献数
4

β-グルコオリゴ糖のヒト腸内フローラに与える影響について検討した.β-グルコオリゴ糖は,微生物起源のβ-グルコシダーゼの糖転移・縮合反応を有効に利用して製造されたβ-グルコオリゴ糖を主成分とするシラップ(商品名:ゲントース)を用いた.In vitroでの腸内細菌による資化性試験においては,β-グルコオリゴ糖はBifidobacteria, Lactobacilliに選択的に資化された.また資化性試験に用いた4株のClostridium perfringensにはほとんど資化性は認められなかった. さらに,β-グルコオリゴ糖をヒトに投与し,腸内フローラの測定を行った結果では,49/日のβ-グルコオリゴ糖の投与によりBifidobacteriaの菌数が有意(p<0.05)に増加し,その占有率は21.5%にまで増加した.この期間の糞便のpHは投与前後に比較して約0.5pH単位の低下が認められた.また被験者の健康状態については異常なガスの発生および鼓脹感はみられず,約6割の被験者において便通および便の硬さの改善がみられた. 以上の結果からβ-グルコオリゴ糖は49/日の摂取量で有効なBifidobacteriaの増殖因子であること,便性改善効果がある新規な澱粉糖として利用できることが示唆された.