著者
中町 鴻 廣瀬 正明 木川田 喜一 廣瀬 勝己 岡田 往子 鈴木 章悟 本多 照幸
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.64, no.8, pp.589-594, 2015-08-05 (Released:2015-09-03)
参考文献数
12
被引用文献数
4

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震及び,それにより発生した津波によって東京電力福島第一原子力発電所(以下,福島原発)は大きな被害を受け,環境中に多量の放射性核種を放出した.その影響で関東地方においても高濃度の放射性セシウム(134Cs,137Cs)が大気中でも検出された.本研究では大気粒子状物質(APM)に着目し,神奈川県における福島原発事故由来の放射性セシウムを長期的に観測することで,APM中の放射性セシウム濃度の経時変化並びに,大気環境中における放射性セシウムの存在形態について検討した.その結果,大気中の放射性セシウムの放射能濃度は2011年3月から2011年9月にかけて105分の1にまで減少したものの,その後は緩やかな減少にとどまり,2014年3月時点でも1.0 × 10-5 Bq m-3の放射能が検出されていることが明らかとなった.大気環境中における放射性セシウムの存在形態については,粘土鉱物中に強く固定されてしまう土壌中の放射性セシウムとは異なり,水溶性成分のものが50% 以上の割合を占め,土壌等のほかの環境中の放射性セシウムに比べ移動能が高いことが分かった.
著者
岡田 往子 平井 昭司
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.249-254, 1993-04-05
被引用文献数
6 3

半導体構成材料として広く利用されている高純度Al中のUとThを陰イオン交換分離法とLaF_3共沈分離法を伴う放射化学中性子放射化分析法(RNAA)を用いて定量した.次に試料溶液を陰イオン交換樹脂に流して, U及びThの分析目的核種である^<239>Np及び^<233>Paを吸着させ, 主な不純物を選択的に分離した.次に9MHCl-5MHFて^<239>Np及び^<233>Paを溶離した後, LaF_3共沈で^<239>Npと^<233>Paとを沈殿させ, わずかな不純物からの分離を行った.その後, 濾紙に捕集した沈殿物のγ線測定をした.より低レベルの分析を可能にするために, 試料重量の増加を現在放射化分析ではん用されている原子炉の中央実験管のカプセルに入る最大10g程度まで行い、それに伴う自己遮へい効果及び自己吸収効果の検討を行った.結果として, 試料重量の増加による照射時の自己遮へい効果はなかった.測定時の自己吸収効果は機器中性子放射化分析(INAA)では試料重量による補正が必要となった.10g程度の試料でRNAA法で定量し, Uで2〜9ppt, Thで9〜14ppt程度の分析が可能となった.