- 著者
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岡田 航
- 出版者
- 林業経済学会
- 雑誌
- 林業経済研究 (ISSN:02851598)
- 巻号頁・発行日
- vol.63, no.1, pp.58-68, 2017 (Released:2017-10-10)
- 参考文献数
- 57
元来,「里山」は地域社会の中で地理区分を表す用語として使用されてきたが,戦後復興の際,防災と森林資源の安定利用を図る過程で政策用語としての「里山」が登場した。1950年代,森林資源の高度利用が目指されると,農用林として使用されてきた「里山」は低位生産力地帯であるとされ,林業基本法制定の際の議論では「里山」における論争が行われた。1960年代末には逆に農用林が利用されないことが問題視され,農政も含めた総合利用のための施策として「里山再開発事業」が行われた。他方,林学の研究者の間では,1970年代以降社会文化的な要素も含んで人と「里山」との関わり合いの意味を捉える考え方が登場し,自然保護運動からは,二次的自然環境保全の重要さを訴えるための旗印として「里山」が積極的に用いられた。他方林業政策では,森林の多面的機能の観点から「里山」の意義を再考しようとする諸調査が行われるが,1990年以後は自然保護分野で「里山」が頻用されていくのとは対照的に,林業政策(森林・林業政策)においては次第に影が薄い用語となっていった。