著者
溝添 素子 稲垣 昇 岡野 光生 金地 通生 前川 進
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.625-633, 1992
被引用文献数
1

ストックの本葉および胚軸からのカルスおよび器官形成(シュート形成)に及ぼす供試植物の栽培条件(光条件•施肥条件)ならびに培地中の窒素組成の影響について検討した.<BR>1.葉片培養:(1)光および施肥条件の影響;'銀潮'では遮光処理(75%遮光)によリシュート形成が促進された.また遮光の効果は1/2倍水耕液を施用した区で顕著であった.一方,'雪まつり'では1/4および1/2倍液施用区とも遮光処理によってシュート形成は抑制された.(2)培地の窒素組成の影響;'銀潮'および'雪まつり'とも,アンモニア態窒素無添加区(硝酸態窒素のみ)において高いシュート形成率を示し,NH<SUB>4</SUB><SUP>+</SUP>+/NO<SUB>3</SUB><SUP>-</SUP>比を高めるとシュート形成が抑制される傾向を示した.<BR>2.下胚軸培養:(1)光および施肥条件の影響;'リトルゼムイエロー'および'雪まつり'とも,遮光処理によってシュート形成が抑制された.また,外植体当たりのシュート数も遮光処理によって減少した.(2)培地の窒素組成の影響は,'リトルゼムイエロー'および'雪まつり'とも,アンモニア態窒素の添加が,シュート形成率および外植体当たりのシュート数を高める傾向を示した.'リトルゼムイエロー'ではNH<SUB>4</SUB><SUP>+</SUP>+:NO<SUB>3</SUB><SUP>-</SUP>が1:10の培地で,また'雪まつり'ではNH<SUB>4</SUB><SUP>+</SUP>+:NO<SUB>3</SUB><SUP>-</SUP>が1:2の培地でそれぞれ85%と最も高い形成率を示した.<BR>3.形成されたシュートは,大部分が水浸状を呈していた.水浸状の葉は,水分を含んで肥大し,その組織では細胞間隙が大きく,維管束や棚状組織の発達が不十分であった.また気孔の分布が一様ではなく,その数も正常葉と比較して少なく,孔辺細胞が表皮細胞より陥没しているものや隆起しているものなどが観察された.