著者
前川 進 中村 直彦
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学農学部研究報告 (ISSN:04522370)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.181-184, 1979
被引用文献数
2

花木の切枝促成時の環境条件と花色との関係を明らかにするため, モモ'矢口', ボケ'緋の御旗'及びサクラ'十月桜'の切枝を8∿10cmの長さに調整し, 10%しょ糖溶液に切口を浸して種々の温度及び光条件下で促成を行い, 次のような結果を得た。1) 15°, 20°, 25°及び30℃の温度条件下でモモ花らいの発育は温度が低くなるにつれて遅くなったが, アントシアニンの生成量は増加した。いずれの温度下においても, アントシアニン含量は開花前に最高に達し, その後開花に近づくにつれて減少した。ボケとサクラについても同様の結果が得られ, 促成温度の低下とともに多くのアントシアニンを生成した。2) 光のアントシアニン生成に対する影響について, モモでは暗黒下で多くの生成が見られたのに対し, ボケとサクラでは, アントシアニンの生成は暗黒下で殆んどなく, 可視光の照射によって刺戟された。特にサクラでは可視光とともに紫外線の照射によって, さらにアントシアニンの生成量は増加した。
著者
前川 進 寺分 元一 中村 直彦
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.251-259, 1980
被引用文献数
3 9

開花後濃色化する変色型バラ品種′絵日傘′(F1.)の花色素生成に及ぼす光の影響を調べるために, 鉢植え個体の花蕾及び単離花弁への種々の光処理を行った.<br>20°C下での単離花弁の培養において, 10~20%しょ糖培地で多くのアントシアニンの生成が得られ, 置床後3日間はその生成量も多かった.<br>暗黒及び可視光のみの照射のもとでアントシアニンは生成されず, 330nmより短いUVを含む光の照射によってはじめて生成が認められた.<br>UVの強さや照射時間が増すにつれて, 色素量は増加するが, 強いUVを短時間照射するよりも弱くても長時間与えた方が同じエネルギー量で効果が大きかった.<br>一方, 可視光はUV照射の前かあるいは同時に照射された場合, アントシアニンの生成に促進的に働き, UVのみの照射と比べて著しく色素含量を増加した. 更に, その可視光の強さが増すとともにアントシアニンも比例して多く生成された.<br>可視光とUVを交互に照射したとき, その周期が短いほど生成されるアントシアニン量は多かった.<br>栽培中のバラに対して, UVを夜間より日中に照射した場合, より多くのアントシアニンが生成された.
著者
稲垣 昇 津田 和久 前川 進 寺分 元一
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.369-376, 1989 (Released:2007-07-05)
参考文献数
14
被引用文献数
4 11

暖地におけるアスパラガスの生理•生態的特性を明らかにし合理的な栽培体系を確立することを目的に, 本報では物質生産の基礎となる光合成特性について検討した.(1) アスパラガスの主たる光合成器官は葉状茎であったが, 側枝や主茎でも光合成が行われており, 特に0.5~1mmほどの太さの側枝では単位乾物重当りで見ると葉状茎の光合成速度の30%近い値を示した.(2) 光合成速度に及ぼす光強度の影響を見ると, 光飽和点は生育前期及び中期の株で40~50klx付近, 生育後期の株では10~20klxであった. また, 光補償点は1.5~2klx付近であった.(3) CO2濃度の影響を見ると, CO2濃度を上げながら (400→1,400ppm) 測定した場合は600~1,000ppm付近にCO2飽和点があることが観察されたが, CO2濃度を下げながら (1,400→400) 測定した場合は1,400ppmでも飽和しなかった. また, 後者はそれぞれの測定濃度での光合成速度において前者を下回っていた.(4) 光合成に好適な温度範囲は20±5°Cであることが推察され, アスパラガスが冷涼な地域に適した作物であることを示していた.(5) 光, CO2及び温度に対する各生育期間 (生育初期, 中期及び後期) の株の反応特性はほぼ共通していた.(6) 光合成の日内変動はポットの状態で測定した場合顕著に見られ午後に光合成速度が低下する傾向を示した. 一方根から切り離した状態で測定した場合はほとんど違いはみられなかった.
著者
水町 寿伸 米湊 健 鶴田 修 佐田 通夫 中原 慶太 前川 進 副島 満 高木 優 荒木 祐美子 芹川 習 田宮 芳孝 渡辺 靖友
出版者
一般社団法人 日本消化器がん検診学会
雑誌
日本消化器がん検診学会雑誌 (ISSN:18807666)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.43-54, 2009

背景:新・胃X線撮影法の前壁撮影ではフトン使用が必須とされている。しかし, フトンの具体的な使用法に関する報告は少なく, 胃形によっても撮影の難易度が異なる。目的:胃形に合わせて任意に調節可能なバスタオルのり巻き法の有用性を明らかにする。対象:施設検診において直接胃X線検査を施行した83例(鈎状胃群43例, 牛角胃群40例)。方法:バスタオルのり巻き法として, バスタオル1枚を鈎状胃群に対しては薄巻き, 牛角胃群には厚巻きに調節して撮影した。胃形別の前壁二重造影像(腹臥位正面位, 第二斜位)に関して, 1)ポジショニング, 2)示現範囲, 3)造影効果をバスタオル使用の有無別に比較検討した。結果:バスタオル使用の場合, 鈎状胃群では2)示現範囲, 3)造影効果が, 牛角胃群は3項目すべてが有意に適切となった。結論:バスタオルのり巻き法は胃形に対するバスタオル形状の調節が簡便で, 高い画像精度が得られる有用な手技と思われた。
著者
前川 進 稲垣 昇 寺分 元一
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.174-179, 1983
被引用文献数
1 3

キキョウ花色に及ぼすMoの影響を明らかにするため, キキョウ品種'サミダレ'を用いて, モリブデン酸ナトリウム溶液の切花浸漬処理や花弁への散布処理を行った.<br>Mo溶液に切花の切り口を浸漬処理することによって, 青紫色から真青色へと花弁の青色化が起こった.Moの花弁に対する散布処理によっても, 切花の浸漬処理同様の著しい青色効果が見られた.<br>Mo浸漬処理後の生花弁の吸収スペクトルは処理前のものに比べて, 吸収極大波長は長波長側へ移行し, さらに, その吸光度も増大した. このような吸収スペクトルの変化は抽出したアントシアニン溶液にMoを添加する <i>in vitro</i> での実験においても認められた. Mo処理によって青色化したアントシアニン溶液へEDTAを加えるとMoに基づく青色効果は減少した.<br>このようなことから, Moの吸収によるキキョウ花弁の青色化はおそらくアントシアニンの金属錯体の形成によるものと推論された.
著者
溝添 素子 稲垣 昇 岡野 光生 金地 通生 前川 進
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.625-633, 1992
被引用文献数
1

ストックの本葉および胚軸からのカルスおよび器官形成(シュート形成)に及ぼす供試植物の栽培条件(光条件•施肥条件)ならびに培地中の窒素組成の影響について検討した.<BR>1.葉片培養:(1)光および施肥条件の影響;'銀潮'では遮光処理(75%遮光)によリシュート形成が促進された.また遮光の効果は1/2倍水耕液を施用した区で顕著であった.一方,'雪まつり'では1/4および1/2倍液施用区とも遮光処理によってシュート形成は抑制された.(2)培地の窒素組成の影響;'銀潮'および'雪まつり'とも,アンモニア態窒素無添加区(硝酸態窒素のみ)において高いシュート形成率を示し,NH<SUB>4</SUB><SUP>+</SUP>+/NO<SUB>3</SUB><SUP>-</SUP>比を高めるとシュート形成が抑制される傾向を示した.<BR>2.下胚軸培養:(1)光および施肥条件の影響;'リトルゼムイエロー'および'雪まつり'とも,遮光処理によってシュート形成が抑制された.また,外植体当たりのシュート数も遮光処理によって減少した.(2)培地の窒素組成の影響は,'リトルゼムイエロー'および'雪まつり'とも,アンモニア態窒素の添加が,シュート形成率および外植体当たりのシュート数を高める傾向を示した.'リトルゼムイエロー'ではNH<SUB>4</SUB><SUP>+</SUP>+:NO<SUB>3</SUB><SUP>-</SUP>が1:10の培地で,また'雪まつり'ではNH<SUB>4</SUB><SUP>+</SUP>+:NO<SUB>3</SUB><SUP>-</SUP>が1:2の培地でそれぞれ85%と最も高い形成率を示した.<BR>3.形成されたシュートは,大部分が水浸状を呈していた.水浸状の葉は,水分を含んで肥大し,その組織では細胞間隙が大きく,維管束や棚状組織の発達が不十分であった.また気孔の分布が一様ではなく,その数も正常葉と比較して少なく,孔辺細胞が表皮細胞より陥没しているものや隆起しているものなどが観察された.
著者
川上 幸治郎 高山 昭康 前川 進
出版者
神戸大学
雑誌
兵庫農科大學研究報告. 農芸化学編 (ISSN:04400216)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.20-24, 1961

1. 標高差による種イモの春作における比較では, 1,000m(5月4日植&acd;8月20日掘)産及び1,400m(5月14日植&acd;9月5日掘)産は, 収量ことに大イモ収量が多い。標高600m(4月23日植&acd;8月10掘)産は劣る。前2者は月令が6&acd;7で適令の範囲にあるのに対し後者は適令を過ぎて7.5に達しているためである。2. 600mのところでは普通植よりも3週間晩く(5月14日)植付けすることにより生産性の高い種イモができ, これは月令を切り下げるためである。1000mで晩植の効果がないのは月令のこの程度の切り下げがなお適令を外れないからである。3. 掘上げは茎葉枯凋期がよく, これを晩くすることは種イモの品質を高めることとはならない。
著者
前川 進
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学農学部研究報告 (ISSN:04522370)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.199-204, 1975
被引用文献数
1

紫外線や光の強さがカーネーションの生育や花色の発現にどのように影響するかを知るために, 'ショッキング・ピンク・シム'及び'イルミネーター'を用いて紫外線吸収フィルムや黒寒冷しや被覆下で実験を行った。1. 被覆フィルムの紫外線透過の良否によって, アントシアン生成量はほとんど影響されなかった。2. 黒寒冷しや被覆による低照度のもとで, 葉, 花弁及で花冠はいずれも小さくなり, 特に, 茎が細くなるのが目立った。3. アントシアン生成量はしゃ光しない高照度下のものに比べ, 低照度のもとで少なかった。その程度は, イルミネーターの場合に著しかった。4. 花弁の表色はアントシアン生成量と関係が深く, 低照度下で退色が認められた。また, 高照度下での花弁は低照度のものよりやや黄色味が強かった。5. 葉ならびに花弁中の直接還元糖, 非還元糖及び粗殿粉含量は低照度のもとでいずれも少なかった。なお, 還元糖は葉より花弁中に多量に含まれた。