著者
秩父盆地団体研究グループ 石田 吉明 小泉 潔 正井 信雄 宮川 武史 小幡 喜一 岡野 裕一 佐瀬 和義 満川 知代 岡本 康 芳賀 勇一
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.279-294, 2004-09-25
被引用文献数
5

関東山地北東部に位置する秩父盆地には新第三系が分布している.秩父堆積盆地の発生過程を明らかにする目的で,新第三系最下部層の分布する盆地西縁部の調査をおこなってきた.その結果,盆地西縁部の新第三系最下部層に発達する泥岩層中に凝灰岩層が何枚かはさまれており,このうちの一枚が北縁地域の子ノ神層(秩父盆地団体研究グループ1999)に連続することが確認された.このことにより,本調査地域の新第三系は鍵層をもって盆地北〜北西縁部の層序区分と対比し,下位より牛首層,富田層,子ノ神層,宮戸層,吉田層に区分した.基盤と新第三系の接触関係を25ヶ所で観察することができ,このうち18ヶ所は不整合関係であり,そのうちの9ヶ所は高角不整合と考えられる.堆積盆地の発生過程は,断裂が発生することから始まり,その後に4期にわたる陥没が発生し,それぞれの時期に対応して火山活動が生じている.断裂が生じる前に,マグマの上昇にともなう地表部で隆起が生じたことが推定される.このことは秩父堆積盆地も火山性陥没盆地と同じような過程をへて発達したことを示す.本調査地域では新第三系堆積時に沈降域の中心が北側から南側(南東方)へ移動しており,いわゆる将棋倒し構造をなしている.