著者
堀口 繁昌 小幡 喜一
出版者
埼玉県立自然の博物館
雑誌
埼玉県立自然の博物館研究報告 (ISSN:18818528)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.1-10, 2022 (Released:2022-11-17)

埼玉県秩父盆地の中新統から初めて発見されたゴカクウミユリ類化石を報告する.本化石標本は秩父盆地南縁部の秩父市上影森,荒川右岸に露出した秩父盆地層群秩父町層上部の角礫質泥岩から産出し,茎部と茎部の一部及び腕の分岐軸の合計14点で,茎部は結合した巻枝を持っているものもある.茎部の直径は大きいものでほぼ10 mm,間節面は星形,花弁は披針形,節板(節間節)の巻枝ソケットはすべて5個,節間板は7枚(ときに8,9枚)等が観察できるが,種同定の決め手となる萼や腕部を欠くため,本標本すべてを ‟Isocrinus ?” sp. として報告する.‟Isocrinus ?” sp. の化石記録は,国内の広島県・北陸・群馬県の前期~中期中新世の外部浅海帯~中部漸深海帯から報告され,秩父町層の堆積環境も同様の深度であったと示唆される.
著者
平社 定夫 石田 吉明 小泉 潔 倉川 博 武藤 博士 小幡 喜一 三谷 豊
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.347-358, 2002-11-25

埼玉県秩父盆地新第三系桜井層に大露頭があらわれ,数多くのカレントリップルマークが観察された.研究地域の堆積相は,礫岩(Cg),含礫砂岩(Sp),塊状砂岩(Sm),砂岩泥岩互層(I)および砂岩泥岩細互層(Im)の5つに区分される.これらの堆積相の特徴から堆積環境は,上部〜中部海底扇状地のチャネル・レビーシステムで解釈される.リップルマークは砂岩泥岩互層(I)に集中的に出現することから,上部〜中部海底扇状地の自然堤防,および,すでに埋積されたチャネルを覆った堆積層に形成されたことが考えられる.また,リップルマークはブーマシーケンスのカレントリップル部(C)に相当し,流痕とリップルマークの示す古流向はほぼ同じである.これらのことから,リップルマークは低密度重力流による一連の堆積作用で形成されたものと考えられる.
著者
秩父盆地団体研究グループ 石田 吉明 小泉 潔 正井 信雄 宮川 武史 小幡 喜一 岡野 裕一 佐瀬 和義 満川 知代 岡本 康 芳賀 勇一
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.279-294, 2004-09-25
被引用文献数
5

関東山地北東部に位置する秩父盆地には新第三系が分布している.秩父堆積盆地の発生過程を明らかにする目的で,新第三系最下部層の分布する盆地西縁部の調査をおこなってきた.その結果,盆地西縁部の新第三系最下部層に発達する泥岩層中に凝灰岩層が何枚かはさまれており,このうちの一枚が北縁地域の子ノ神層(秩父盆地団体研究グループ1999)に連続することが確認された.このことにより,本調査地域の新第三系は鍵層をもって盆地北〜北西縁部の層序区分と対比し,下位より牛首層,富田層,子ノ神層,宮戸層,吉田層に区分した.基盤と新第三系の接触関係を25ヶ所で観察することができ,このうち18ヶ所は不整合関係であり,そのうちの9ヶ所は高角不整合と考えられる.堆積盆地の発生過程は,断裂が発生することから始まり,その後に4期にわたる陥没が発生し,それぞれの時期に対応して火山活動が生じている.断裂が生じる前に,マグマの上昇にともなう地表部で隆起が生じたことが推定される.このことは秩父堆積盆地も火山性陥没盆地と同じような過程をへて発達したことを示す.本調査地域では新第三系堆積時に沈降域の中心が北側から南側(南東方)へ移動しており,いわゆる将棋倒し構造をなしている.