著者
岩井 佳子
出版者
特定非営利活動法人 日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.61-65, 2016-02-20 (Released:2016-03-30)
参考文献数
18

手術,化学療法,放射線療法に続く第4のがん治療として免疫療法が登場したが,その効果については長い間疑問視されてきた.1891年にWilliam Coley博士が腫瘍内に細菌を投与する治療を行ったのががん免疫療法のはじまりとされるが,このメカニズムが理解されるようになったのはごく最近で,樹状細胞の発見と病原体認識機構の解明まで約1世紀を要している.がん免疫療法は,がん抗原に特異的な免疫応答を誘導する「特異的免疫療法」と,がん抗原に非特異的に免疫応答を増強する「非特異的免疫療法」に分けられる.免疫システムには,免疫系を活性化するアクセル(共刺激分子)と抑制するブレーキ(共抑制分子)が存在して,免疫応答と免疫寛容のバランスを制御しており,従来のがん免疫療法ではアクセルを踏むことに重点が置かれてきたが,ブレーキ解除によって免疫系のアクセルが入るようにしたのが免疫チェックポイント阻害剤である.PD-1抗体をはじめとする免疫チェックポイント阻害剤はこれまでのがん免疫療法に対する評価を一変させ,有望な治療法として期待されている.