著者
岩井 啓一郎 辻 博 鈴木 統久 東 晃一 藤島 正敏
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.39, no.12, pp.919-923, 1998-12-25 (Released:2010-02-22)
参考文献数
10

経過中に抗核抗体が消失, 再出現しステロイド治療が無効であったautoimmune cholangiopathy (AIC) の1症例を経験したので報告する. 症例は38歳, 女性. 1990年5月に全身倦怠感が出現. 初めて肝機能障害を指摘され, 精査目的で8月13日当科入院. 入院時, アルカリフォスファターゼ1686 IU/l, γ-GTP 1135 IU/lと胆汁うっ滞を認め, 抗核抗体は初診時のみ陽性で, 入院時には陰性化していた. また, 抗ミトコンドリア抗体, 肝炎ウイルスマーカーは全て陰性であった. 1991年より掻痒感が出現. 1992年より抗核抗体が再出現しプレドニゾロンを投与したが肝機能検査に変化はみられなかった. 1994年にも再びプレドニゾロンを投与したが, 肝機能検査に変化はみられなかった. 本症例では, 肝生検組織で小葉間胆管が消失し, 胆管病変が進行したAICであったためステロイド治療が無効であったと考えられた.
著者
岩井 啓一郎 松本 主之 江崎 幹宏 八尾 隆史 鎌田 正博 飯田 三雄
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.48, no.10, pp.2493-2498, 2006-10-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
20

症例は71歳,男性.山で採取したツキヨダケを摂取したところ,その8時間後より激しい腹痛,嘔吐,下痢が出現し来院した.第4病日の内視鏡検査では,十二指腸下行部に浮腫とびらん形成を伴った粗槌粘膜をびまん性に認め,第7病日に施行したX線検査では,十二指腸下行部から水平部にかけてKerckring皺襞の腫大,線状ないし不整形バリウム斑の多発,および亀甲様粘膜面を認めた.保存的治療のみで臨床症状は速やかに改善し,2カ月後の内視鏡検査では十二指腸病変の治癒が確認された.患者血清中にツキヨダケの毒素であるイルージンSは証明できなかったが,臨床経過から自験例はツキヨダケの誤摂取により生じた急性十二指腸炎と考えられた.ツキヨダケによる食中毒は発生件数が多いものの,その消化管病変に関する記載は少なく,自験例は貴重と考えられた.