著者
秀島 眞佐子 岩元 澄子 原口 雅浩
出版者
久留米大学
雑誌
久留米大学心理学研究 (ISSN:13481029)
巻号頁・発行日
no.5, pp.149-156, 2006

本研究では,Grunwaldの「空間図式」について統計的に再検討し,空間象徴図式の展開を試みた。研究1では,青年群86名,中高年群83名を対象に,Grunwaldの「空間図式」の16語の言葉のイメージを,SD法を用いて測定した。主成分分析の結果,「生存の資源」と「生存の促進」の2つの主成分を採用した。各言葉のイメージ得点を両群で比較したところ,「生存の促進」において,違いが見られた。すなわち,青年群では,すべてプラス得点であったのに対し,中高年群では,プラスとマイナス得点に2分された。これを「空間図式」と参照したところ,中高年群でのプラス得点の言葉は「空間図式」の下側に,マイナス得点の言葉は上側に位置して一致した。このことから,「空間図式」は,中年期以降におけるSD法で得られるような抽象的なイメージを反映したものであると考えられた。研究2では,青年期以降の110名を対象に,研究1で用いた「空間図式」の16語の言葉の,コラージュ法による配置を行った。クラスター分析およびχ2検定の結果,用紙上の,(1)中央に「心」・「身体」,中央から上方にかけて「母性」・「父性」・「誕生」,(2)上下に「希望」・「失望」,「空気」・「大地」,(3)左右に「過去」・「未来」が有意に位置した。このことから,用紙上の空間に対する言葉の具体的なイメージによる象徴性は(1)中央を自己スペースとして,(2)上下に感情と生活,(3)左右に時間で構成される世界と考えられた。以上の結果から空間象徴図式は言葉の抽象的なイメージによるものと具体的なイメージによるものとでは異なるものであることが示唆された。
著者
秀島 眞佐子 岩元 澄子 原口 雅浩
出版者
久留米大学
雑誌
久留米大学心理学研究 = Kurume University psychological research (ISSN:13481029)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.149-156, 2006-03-31

本研究では,Grunwaldの「空間図式」について統計的に再検討し,空間象徴図式の展開を試みた。研究1では,青年群86名,中高年群83名を対象に,Grunwaldの「空間図式」の16語の言葉のイメージを,SD法を用いて測定した。主成分分析の結果,「生存の資源」と「生存の促進」の2つの主成分を採用した。各言葉のイメージ得点を両群で比較したところ,「生存の促進」において,違いが見られた。すなわち,青年群では,すべてプラス得点であったのに対し,中高年群では,プラスとマイナス得点に2分された。これを「空間図式」と参照したところ,中高年群でのプラス得点の言葉は「空間図式」の下側に,マイナス得点の言葉は上側に位置して一致した。このことから,「空間図式」は,中年期以降におけるSD法で得られるような抽象的なイメージを反映したものであると考えられた。研究2では,青年期以降の110名を対象に,研究1で用いた「空間図式」の16語の言葉の,コラージュ法による配置を行った。クラスター分析およびχ2検定の結果,用紙上の,(1)中央に「心」・「身体」,中央から上方にかけて「母性」・「父性」・「誕生」,(2)上下に「希望」・「失望」,「空気」・「大地」,(3)左右に「過去」・「未来」が有意に位置した。このことから,用紙上の空間に対する言葉の具体的なイメージによる象徴性は(1)中央を自己スペースとして,(2)上下に感情と生活,(3)左右に時間で構成される世界と考えられた。以上の結果から空間象徴図式は言葉の抽象的なイメージによるものと具体的なイメージによるものとでは異なるものであることが示唆された。
著者
森岡 育子 岩元 澄子 Ikuko Morioka
出版者
久留米大学大学院心理学研究科
雑誌
久留米大学心理学研究 = Kurume University psychological research (ISSN:13481029)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.52-61, 2011-03-31

近年,小学校1年生の学校不適応が「小1プロブレム」として問題となっている。本研究は,小学校1年生の入学期の実態を情緒・行動の特徴と学校適応の観点から明らかにするとともに,それらとレジリエンスとの関連について検討することを目的とした。対象は,N 県内のA 小学校およびB 小学校への入学予定児で,幼稚園の担当教諭あるいは保育所の担当保育士に,小学校入学の2カ月前にレジリエンス尺度への回答を求めた。また,その児の保護者に,入学の2カ月前,入学後の4月と6月に,CBCLへの回答を求めた。さらに,その児の担任教諭に,入学後の4月と6月に学校適応感尺度への回答を求めた。統計学的分析によって,情緒・行動の特徴としては,「身体的訴え」が,入学の2カ月前よりも4月の方が有意に高いことが示された。また井潤他(2000)の一般児童の臨床域人数と比較して,1年生は,4月には「社会性の問題」が臨床域である児が有意に多く,「非行的行動」が臨床域である児が有意に少ない傾向にあることが示された。また学校適応としては,「安心感」が,4月より6 月の方が有意に高いことが示された。レジリエンスと情緒・行動の特徴との関連では,4月,6月ともに,「ソーシャルスキルの柔軟な利用」,「意欲」とさまざまな情緒・行動の特徴との間に有意な負の相関がみられた。またレジリエンスと学校適応感との関連では,4月には「ソーシャルスキルの柔軟な利用」と「集団適応」,「安心感」,「意欲」と「集団適応」,「資源」と「安心感」との間に正の相関がみられたが,6月には「意欲」と「集団適応」にのみ正の相関がみられた。これらのことから,「小1プロブレム」の実態が,情緒・行動の特徴と学校適応という観点から明らかになるとともに,入学前のレジリエンスを把握することで,入学後の子どもたちの情緒・行動の特徴や学校適応を予測できる可能性,さらには「小1プロブレム」防止のための援助の要点が示唆された。