著者
岩城 常修 平尾 聡秀
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第125回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.371, 2014 (Released:2014-07-16)

本研究では、冷温帯の人工林および天然林の下層木において、鳥類やコウモリ類による捕食が節足動物の摂食活動に及ぼす影響を調べた。調査は東京大学秩父演習林で行った。人工林ではカジカエデ、天然林ではヒナウチワカエデを対象として各種20個体を選木し、それぞれ10個体については2013年5月に網掛けによる鳥類とコウモリ類の排除を行った。そして5月から8月に毎月一回対象木から葉を採取して食痕数を調べ、葉の概形を描画ソフトで復元し食害率を算出した。また、葉の質が節足動物の摂食活動に及ぼす影響を考慮するため、葉の面積当たり重量、含有タンニン量、フェノール量を測定した。その結果、人工林でも天然林でも捕食者の排除によって食痕数と被食率は増加を示し、その差の変化は5月から6月の間が顕著であり、その後は処理木も対照木も同じように推移した。葉の質に関しては網の有無による差はみられなかった。本調査により、人工林でも天然林でも同じように鳥類やコウモリ類の捕食が節足動物の個体数制御に大きく関与しており、秩父ではその活動は5月から6月に活発であること、葉の質が節足動物の摂食活動に与える効果は小さいことが分かった。