著者
加藤 珠理 松本 麻子 勝木 俊雄 岩本 宏二郎 中村 健太郎 石尾 将吾 向井 譲 吉丸 博志
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第125回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.303, 2014 (Released:2014-07-16)

‘枝垂桜’は野生のサクラであるエドヒガンから生じた突然変異体であると考えられ、筆者らが行ったこれまでの研究成果においても、その可能性は支持されている。現在、‘枝垂桜’には複数の系統が存在するが、それらの起源は原種であるエドヒガンから、一回だけ生じた変異個体に由来するものか、それとも、独立に生じたいくつかの変異個体に由来するものかはわかっていない。また、原種である野生のエドヒガンについても、どの地域のエドヒガンがもとになって、‘枝垂桜’が生じたのかについてはわかっていない。この研究では、‘枝垂桜’の起源に関する様々な疑問を解決するために、‘枝垂桜’とその原種であるエドヒガンの関係を集団遺伝学的手法に基づいて評価し、考えられうる可能性を示したいと思う。研究材料としては、全国各地から収集され、多摩森林科学園で保存・管理されている‘枝垂桜’を用いた。比較のために用いるエドヒガンは複数の地域からサンプリングした集団を用いた。SSRマーカーを用いたDNA分析により、‘枝垂桜’とエドヒガン集団の遺伝構造について比較解析を行っており、本発表ではその結果について報告する。
著者
奥 敬一
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第125回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.40, 2014 (Released:2014-07-16)

薪の利用は、生態系サービス概念では通常「供給サービス」の中の「燃料供給」と位置づけられる。しかし、薪ストーブを媒介として薪を利用することは、一定のライフスタイルのもとでは精神的・レクリエーション的な「文化的サービス」の発揮にもつながり、健康、安全、豊かな生活、社会的な連帯の形成、教育といった人間社会の福利へと生態系サービスを拡張する可能性を含んでいる。 こうした視点から、京都、滋賀の都市近郊において、里山林からの薪を利用している薪ストーブユーザー4軒を対象として3~5年間にわたるモニター調査を行った。その運転記録と生活の質に関わる聞き取り調査から、薪ストーブによって拡張された文化的サービスの実態について報告する。調査結果からは、薪ストーブを「里山林から得られる供給サービス(燃料)を、複合的な生態系サービスに拡張する装置」ととらえることができ、そのことが生活の質の向上の実感に大きく関わっていることが示された。
著者
金澤 泰斗 久保田 耕平
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第125回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.179, 2014 (Released:2014-07-16)

【目的】関東平野において自然度の高い森林に局所的に分布しているコシビロダンゴムシ科等脚類のうち、従来トウキョウコシビロダンゴムシとされてきた個体群について遺伝子解析と形態解析を行い、その多様性の実態を明らかにする。【方法】関東平野の38地点で採集したコシビロダンゴムシ類について形態を観察し、従来識別形質とされてきた雄第一腹肢外肢については楕円フーリエ記述子を用いて定量解析を行った。また、ミトコンドリア遺伝子COI領域の配列を決定し、種内及び近縁他種との系統関係を解析した。【結果】遺伝子解析の結果、従来トウキョウコシビロダンゴムシとされてきたものの中に遺伝的に大きく異なる2系統が存在することがわかった。この2系統は雄第一腹肢外肢の形態に明確な差は見られなかったが、背板側縁部の体色によって区別された。2系統が同所に共存する地点は確認されず、生殖干渉などにより排他的な分布となっていると考えられ、両者が遺伝的にも形態的にも分化した別種であることが推定された。また、2系統間で採集地点の標高に有意な差が見られ、それぞれの分布が生息地の環境の違いや地史的背景を反映している可能性が示唆された。
著者
科学部所属 杉山拓、小林勇太、中澤颯、間仁田和樹
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第125回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.197, 2014 (Released:2014-07-16)

群馬県の県木はクロマツであり、かつては赤城山に広く植樹されていたが、多くが枯れてしまった。私たちは、枯れた原因について異なる説を聞いた。そこで、枯れた原因を探るとともに、マツがどのように減少し、今後はどうなるか、調べることにした。 まず、林業試験場などで聞き取り調査や文献調査を行うとともに、マツの現状を現地で確認し、現地で撮影した映像やwebからの情報をもとに、地図上に分布などを記録した。次に、過去の3つの現存植生図を用いて、どのように変化したか調べた。 聞き取り調査、文献調査の結果、赤城山では酸性雨が降っていたがマツの生育には影響しない程度であり、枯れた原因はマツクイムシが道管を破壊するためであると分かった。文献調査から、赤城山のマツ林は90年前と比べ、約90分の1まで面積が減っていたことが分かった。また、現地調査や現存植生図からは、かつては広い林も多くあったが、現在は数本が点在している場所が多くなっていることが分かった。 マツは現在も樹齢やマツクイムシの影響で枯れていくものがあるが、枯れる本数と植林本数がほぼ同じであり、マツクイムシの被害が抑えられれば、本数は増加していくと考えられる。
著者
岩城 常修 平尾 聡秀
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第125回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.371, 2014 (Released:2014-07-16)

本研究では、冷温帯の人工林および天然林の下層木において、鳥類やコウモリ類による捕食が節足動物の摂食活動に及ぼす影響を調べた。調査は東京大学秩父演習林で行った。人工林ではカジカエデ、天然林ではヒナウチワカエデを対象として各種20個体を選木し、それぞれ10個体については2013年5月に網掛けによる鳥類とコウモリ類の排除を行った。そして5月から8月に毎月一回対象木から葉を採取して食痕数を調べ、葉の概形を描画ソフトで復元し食害率を算出した。また、葉の質が節足動物の摂食活動に及ぼす影響を考慮するため、葉の面積当たり重量、含有タンニン量、フェノール量を測定した。その結果、人工林でも天然林でも捕食者の排除によって食痕数と被食率は増加を示し、その差の変化は5月から6月の間が顕著であり、その後は処理木も対照木も同じように推移した。葉の質に関しては網の有無による差はみられなかった。本調査により、人工林でも天然林でも同じように鳥類やコウモリ類の捕食が節足動物の個体数制御に大きく関与しており、秩父ではその活動は5月から6月に活発であること、葉の質が節足動物の摂食活動に与える効果は小さいことが分かった。
著者
興梠 克久 椙本 杏子
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第125回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.21, 2014 (Released:2014-07-16)

静岡県では自伐林家グループが多数設立されており(興梠、2004),生産性、持続性といった従来の視点に社会性の観点を新たに加え,これらが地域森林管理の担い手たり得るか評価することが研究の目的である。事例として,集落外社会結合である静岡市林業研究会森林認証部会と集落社会結合である文沢蒼林舎の2つの自伐林家グループを取り上げた。 それぞれの集落内で個別経営を行っていた自伐林家の一部が,集落外で機械の共同利用や共同請負、森林認証の共同取得を目的とした機能集団を形成していった。しかし,その機能集団が地域森林管理を担う主体になるのではなく,機能集団の活動を経た自伐林家が,今度は各集落で再度、地域森林管理を担うためのグループ活動を展開し,集落内の林家全体が再結合していた。この再結合に、認証部会メンバーによる一部の活動(自伐林家が共同で経営計画を作成するケース、事業体化し地域の森林を取りまとめ管理を行うケース)と、文沢蒼林舎の活動(集落の自伐林家が集落全体の森林管理を担うケース)があてはまり、これらのケースは地域森林管理の担い手として評価できると考えられる。
著者
安宅 未央子 小南 裕志 深山 貴文 吉村 謙一 上村 真由子 谷 誠
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第125回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.388, 2014 (Released:2014-07-16)

日本の森林で一般的な複雑地形の林床面では、落葉が不均一に分布し、その結果として分解呼吸や土壌呼吸の空間変動の要因となると考えられる。落葉堆積量の空間分布は、有機物量の違いによって呼吸量を変動させるだけでなく、水分に代表される環境因子を変化させることによって分解呼吸量に影響を与えるため、堆積量-環境因子関係を考慮に入れた堆積量-分解呼吸量の変動特性を調べる必要がある。本研究では、京都府・山城試験地(1.7ha)を190プロット(10×10m)に分け、落葉堆積量の測定(プロット毎にN=12)を年に3回(2,6,10月)行った。これと落葉量を変えて連続観測した分解呼吸と落葉層内含水比の結果から、落葉堆積量の空間分布が分解呼吸の時空間変動特性に与える影響の評価を行った2,6,10月の落葉堆積量はそれぞれ0.2~6.6、0.3~5.5、0.2~2.9tC/haで、流域内の空間変異が非常に高いことを示した。呼吸観測からは、堆積量によって異なる落葉層内の含水比鉛直分布が、分解呼吸の時間変動に強く影響を与えることを示した。本発表ではこれらをふまえて、複雑地形における落葉堆積量の空間分布が群落全体の有機物分解過程に与える影響の評価を試みる。
著者
平野 恭弘
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第125回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.786, 2014 (Released:2014-07-16)

三重県松阪市および多気町で覆われている櫛田川流域において、流域の持続可能性を危惧する事象の一つに、森林地域のシカ問題があげられる。臨床環境学研修では、博士後期課程の学生が、地域住民に聞き取り調査などを行い、農林業被害を引き起こすシカによる森林環境の変化に焦点をあて、臨床環境学的診断と処方に取り組んだ。特にシカの活用とシカ肉の流通に関して問題となる点を明らかし改善の提案をすること、また本流域の持続可能性に問題となりうるその他の事象について、シカ問題を中心にそれらのつながりを俯瞰的に明らかにすることを目的とした。 シカの活用と流通については、個体数管理のため廃棄されているシカに着目し、狩猟者、肉屋、シェフに聞き取り調査を行うことで、枝肉として利用することが三者にとってコスト的にもメリットがあることを処方箋として提案した。さらにシカ個体数の増加は、単に人工林の管理不足など森林だけでなく、少子高齢化や都市山村間のグローバリズムなどの問題とも密接に関連している可能性が問題マップを描くことで示唆された。