著者
岩尾 友秀
出版者
一般社団法人 日本薬剤疫学会
雑誌
薬剤疫学 (ISSN:13420445)
巻号頁・発行日
pp.27.e1, (Released:2022-07-22)
参考文献数
57

近年,世界的に医療情報データベースの利活用の気運が高まっており,我が国においてもリアルワールドデータ (RWD) を臨床研究に有効活用することが期待されている.一方で,電子カルテやDPC,レセプト等の蓄積された既存データを用いるデータベース研究は,統計解析の前に実施するデータ前処理の負荷が極めて高いことが知られている.しかしながら,データベース研究に関するデータ前処理の課題や研究を学術的な観点から体系的に整理した文献はほとんど見られない.そこで,本稿ではデータベース研究におけるデータ前処理の課題を疫学,および工学的な観点から体系的に整理し,それらの課題に取り組んでいる研究を紹介した後に,残された課題や今後の研究動向について考察する.本稿では,データベース研究の課題を,①データコンテンツ,②データ構造,③大容量データの処理,という三つのカテゴリーに分類した.次に,データ前処理に取り組んでいる研究について調査し,課題ごとに体系的に取り上げた.調査の結果,データ前処理分野の研究は,解析に必要なデータコンテンツを既存のデータベースに補完することで,信頼性を高めることを目的とした研究がほとんどを占めていた.一方で,データ構造や大容量データ処理に関する課題解決を主目的とした研究は十分になされているとはいえない状況であった.データ前処理は生物統計学や機械学習等の関連領域と比較すると歴史が浅く,社会的な認知度が低いこともあり,当該分野を専門とする理工系の研究者が極めて少ないことが一因であると考えられる.本稿が端緒となりデータ前処理の重要性が認知されることで,傑出した研究成果が生まれ,臨床研究の領域においてRWD の利活用がますます興隆することを期待する.
著者
岩尾 友秀
出版者
一般社団法人 日本薬剤疫学会
雑誌
薬剤疫学 (ISSN:13420445)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.49-59, 2022-10-20 (Released:2022-11-21)
参考文献数
57

近年,世界的に医療情報データベースの利活用の気運が高まっており,我が国においてもリアルワールドデータ (RWD) を臨床研究に有効活用することが期待されている.一方で,電子カルテやDPC,レセプト等の蓄積された既存データを用いるデータベース研究は,統計解析の前に実施するデータ前処理の負荷が極めて高いことが知られている.しかしながら,データベース研究に関するデータ前処理の課題や研究を学術的な観点から体系的に整理した文献はほとんど見られない.そこで,本稿ではデータベース研究におけるデータ前処理の課題を疫学,および工学的な観点から体系的に整理し,それらの課題に取り組んでいる研究を紹介した後に,残された課題や今後の研究動向について考察する.本稿では,データベース研究の課題を,①データコンテンツ,②データ構造,③大容量データの処理,という三つのカテゴリーに分類した.次に,データ前処理に取り組んでいる研究について調査し,課題ごとに体系的に取り上げた.調査の結果,データ前処理分野の研究は,解析に必要なデータコンテンツを既存のデータベースに補完することで,信頼性を高めることを目的とした研究がほとんどを占めていた.一方で,データ構造や大容量データ処理に関する課題解決を主目的とした研究は十分になされているとはいえない状況であった.データ前処理は生物統計学や機械学習等の関連領域と比較すると歴史が浅く,社会的な認知度が低いこともあり,当該分野を専門とする理工系の研究者が極めて少ないことが一因であると考えられる.本稿が端緒となりデータ前処理の重要性が認知されることで,傑出した研究成果が生まれ,臨床研究の領域においてRWD の利活用がますます興隆することを期待する.
著者
荒牧 英治 若宮 翔子 岩尾 友秀 川上 庶子 中江 睦美 松本 妙子 友廣 公子 栗山 猛
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.337-348, 2018 (Released:2020-02-28)
参考文献数
8

急速な医療のIT化と共に,様々な医療情報や医薬品情報が電子化されつつある.しかし,医薬品の適正使用に欠かせない添付文書については表記が統一されているか等の質に関して,これまで体系的な調査は実施されていない.そこでわれわれは,小児領域に着目し,添付文書に小児に関する情報がどのような形で記載されているかを調査した.その結果,小児に対する用法・用量の情報が記載されている割合は添付文書全件の13.5%,小児頻用医薬品についても49.2%にとどまっていることが分かった.特に,詳細な小児区分である低出生体重児や新生児に関しての記述が少ないことが判明した.さらに,添付文書の記述方法についても,年齢区分や安全性,記載場所に曖昧性が存在し,小児医療の現場での医薬品適正使用の障壁となっている可能性が高い.本研究により,今後は添付文書の表現のゆれや曖昧性をなくす等の添付文書自体の質の向上も必要であると考えられる.