著者
西山 享 岩尾 慎介
出版者
青山学院大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

戸田格子の解の超離散化に必要な,解の表示の正値性について集中的に研究を行った.Lax表示された戸田格子の方程式と解の離散化について,基礎的な理論に対する理解を深めるとともに,その結果を「特異曲線を用いた有限戸田格子の正値性の代数幾何学的特徴付けについて」として,現在論文にまとめている.一方,戸田格子のLax表示と旗多様体の量子コホモロジー環およびそのK理論への一般化,とくにPeterson同型に関する研究を継続中である.シューベルト多項式,グロータンディク多項式などの計算・その行列式表示に関しても多くの部分的結果を得ているので,まとめて,何らかの形で成果として発表したい.
著者
岩尾 慎介
出版者
立教大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

本研究において、特異なトロピカル曲線と、対応する超離散可積分系をしらべた。通常の可積分系の理論において、滑らかな曲線に対応するテータ関数を用いて得られる解を、準周期解と呼ぶ。ここで、元の曲線代わりに特異な曲線を用いると、その特異性の大きさに応じて、ソリトン解、多項式解、と、より特殊な解を得られる。以上の理論は、超離散可積分系においても、同様に成り立つと考えられる。実際、超離散KdV方程式・超離散戸田方程式・超離散KP方程式などの準周期解は、トロピカル曲線に付随するトロピカルテータ関数を用いて記述で出来ることが知られている。本研究では、超離散可積分系のソリトン解、多項式解を、トロピカル幾何の文脈で解くことを行った。この際、現れるトロピカル曲線は何らかの意味で「特異」なものになると期待されるが、純粋なトロピカル幾何学で知られている「特異トロピカル曲線」の定義では、上記の目標を達することは出来ない。本研究では可積分系の手法によって、新たな特異トロピカル曲線の定義を独自に導出した。具体的な手順は以下の通り:1.離散可積分系の「Lax方程式」を用いて、代数曲線の定義多項式を求める。この時、周期境界条件を課すと滑らかな曲線を得られることは古くから知られているが、周期境界条件を緩めることで、特異曲線があらわれるようにすることができる。2.得られた特異曲線を超離散化する。超離散可積分系への自然な応用が存在するという理由から、私はこちらの「特異トロピカル曲線」の定義のほうがより正当であると信じる。