著者
岩島 聰 荻野 恭平 梶原 峻 青木 淳治
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.89, no.12, pp.1157-1162, 1968-12-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
7
被引用文献数
3

ベンゼン環6個からなるベンゾ[g,h,i]ペリレンは,合成ならびに高温石炭タールからの今離によってえられる。合成法としてはニトロベンゼン中で無水マレイン酸とペリレンを反応させるか,あるいはペリレンを無水マレイン酸およびクロルアニルとともに加熱してベンゾ[g,h,i]ペリレン-1,2-ジカルボン酸無水物を合成し,この無水物をソーダ石灰と350℃ で加熱脱水し,さらに440℃ で減圧昇華することによってベンゾ[g,h,i]ペリレンをえることができる。しかし,この合成法では精製したペンゾ[g,h,i]ペリレン-1,2-ジカルボン酸無水物を用いても,それから生成したベンゾ[g,h,i]ペリレンの一部が高温反応のため酸化され,ソダ石灰と作用してペリレンが生ずることを見いだした。高純度ベンゾ[g,h,i]ペリレソは,粗ベンゾ[g,h,i]ペリレンと無水マレイン酸およびグロルアニルを再度反応させ混入している微量のペリレンをベンゾ[g,h,i]ペリレン-1,2-ジカルボン酸無水物としてクロマトグラフィーにより分離し,さらに昇華,再結晶によって精製を行なった。この高純度ペソゾ[g,h,i]ペリレンを標準試料とし,ペリレンを10-1~10-8mol%添加した二成分系のべンぜン溶液をつくり,その吸収スペクトル,ケイ光スペクトルを測定し,ベンゾ[g,h,i]ペリレン中に混入する不純物としてのペリレン濃度を測定した。この結果から合成単離した高純度ベンゾ[g,h,i]ペリレン中のペリレンの混入量を少なくとも10-6mol%以下におさえることがまできることを見いだした。また既知の合成法-ペリレンと無水マレイン酸を作用させてえる方法-およびタールから分離した芳香族炭化水素は,再結晶,昇華など通常の精製法を適用してもなお試料中のペリレン混入垂は10-2~10-3mol%であることがわかった。
著者
岩島 聰 大野 公一 梶原 峻 青木 淳治
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.90, no.9, pp.884-888, 1969-09-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
13
被引用文献数
4

コロネンをえるには種々な合成法が報告されている。しかし,いずれの合成法でも不純物としてペンゾ[g,h,i]ペリレン,あるいはペリレンが微量混入してくることがさけられない。一方,高温タールピッチから抽出分離したコロネン中にも前記不純物を含め多種類の炭化水素が混入してくる。したがって,これらの方法でえたコロネンの光学的性質,とくに不純物の混入に敏感なケイ光の測定は行なうことができない。光学的性質を検討しうる試料をえるためには,不純なコロネンを無水マレイン酸,クロルアニルとともに3時間以上処理し,不純物をカルボン酸無水物として分離除去することによってえられる。この方法によって精製したコロネンは淡黄色の針状結晶で青緑色のケイ光をもつが,そのケイ光はきわめて弱い。その蒸着簿膜のケイ光スペクトルは,室温で528mμ付近,窒索温度では440mμ付近に極大位を示す。ケイ光スペクトルの測定から試料中の不純物 (ベンゾ[g,h,i]ペリレン,あるいはペリレン) の濃度は少なくとも10-6mol/mol以下におさえることができることが見いだされた。
著者
岩島 聰 倉町 三樹 青木 淳治
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1976, no.6, pp.858-864, 1976-06-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
31
被引用文献数
1

高温タールピッチから抽出したカルバゾールには,結晶格子定数などが類似している微量の不純物が混入している。この不純物を除去するには,109の市販カルパゾールと209の無水マレィン酸および19のクロロァニルを1,2,4-トリクロロベンゼン30ml中で加熱処理後,イソペンチルアルコールと金属ナトリウムによる処理を行ない,さらに昇華,カラムクロマトグラフィー,帯域融解をくり返すことがもっとも効果的であることがわかった。不純物の検出には,蒸着薄膜のケイ光スペクトルおよびケイ光寿命の波長依存性を用いた。高純度カルバゾールのケイ光極大位置は,室温で345,358,370nm,液体窒素温度で345,351,370,392nm付近に観灘される。また,不純物が微量混入している蒸着薄膜試料では,高純度試料で観測された位置のほかに,330nm以下,および400nm以上にもケイ光極大が現われる。一方,ケイ光寿命は,'高純度蒸着薄膜試料では345~417nmで18.1~21.0n・sec(室温)を示し,波長依存性も小さい。また,低純度試料では7.3~22.0n・secを示し,その波長依存性も大きい。