著者
大野 公一 前田 理
出版者
分子科学会
雑誌
Molecular Science (ISSN:18818404)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.A0042, 2011 (Released:2011-06-04)
参考文献数
83
被引用文献数
2 2

It has been a long standing problem to answer the following fundamental questions in chemistry; (1) what kinds of chemical compounds (isomers) can be produced from a set of atoms given by a chemical formula, such as H4C2O2, (2) how the isomers can be converted to one another, (3) how they are decomposed into smaller species, or conversely (4) how they are made of smaller species. Although this problem can be solved theoretically if all minima and pathways among them via saddles could be searched on the potential energy hypersurface, it has been believed to be impossible, when the number of atoms exceeds four in the target chemical formula. A very simple tool like a compass for voyage could be discovered for global reaction route mapping (GRRM) in the chemical world. That is the anharmonic downward distortion (ADD) which enables one to follow all reaction pathways from an equilibrium (EQ) point toward structures of transition states (TS) surrounding the EQ point. Subsequent downward followings from already found TSs can easily be made as conventional intrinsic reaction coordinate (IRC) followings to reach some EQ points and dissociation channels (DC). Further quests around newly found EQs will yield many more reaction pathways via many other TSs. Such one-after-another procedures will continue until no new EQ could be found, and finally one can obtain a global reaction route map of the chemical formula as well as the answers to the fundamental questions in chemistry. Now, one should step into the new era of chemical problems to perform a perfect microscopic control of chemistry involved in the stereo reaction dynamics of atoms and molecules, based on leading information on typical trajectories searched by the automated exploration of chemical reaction pathways.
著者
岩島 聰 大野 公一 梶原 峻 青木 淳治
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.90, no.9, pp.884-888, 1969-09-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
13
被引用文献数
4

コロネンをえるには種々な合成法が報告されている。しかし,いずれの合成法でも不純物としてペンゾ[g,h,i]ペリレン,あるいはペリレンが微量混入してくることがさけられない。一方,高温タールピッチから抽出分離したコロネン中にも前記不純物を含め多種類の炭化水素が混入してくる。したがって,これらの方法でえたコロネンの光学的性質,とくに不純物の混入に敏感なケイ光の測定は行なうことができない。光学的性質を検討しうる試料をえるためには,不純なコロネンを無水マレイン酸,クロルアニルとともに3時間以上処理し,不純物をカルボン酸無水物として分離除去することによってえられる。この方法によって精製したコロネンは淡黄色の針状結晶で青緑色のケイ光をもつが,そのケイ光はきわめて弱い。その蒸着簿膜のケイ光スペクトルは,室温で528mμ付近,窒索温度では440mμ付近に極大位を示す。ケイ光スペクトルの測定から試料中の不純物 (ベンゾ[g,h,i]ペリレン,あるいはペリレン) の濃度は少なくとも10-6mol/mol以下におさえることができることが見いだされた。
著者
木村 克美 小倉 尚志 阿知波 洋次 佐藤 直樹 長嶋 雲兵 春日 俊夫 長倉 三郎 中村 宏樹 谷本 能文 北川 禎三 大野 公一 吉原 經太郎 OGURA Haruo
出版者
岡崎国立共同研究機構
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1988

わが国とスウェ-デンとが共通に関心をもち,かつ共に高いレベルを保持している分子科学の諸分野において相互に研究者を派遣し,国際共同研究の態勢をつくり,研究の発展に貢献しようとする目的で本研究課題がとりあげられた.昭和63年3月分子研長倉所長とウプサラ大学シ-グバ-ン教授の間で共同研究の合意書が取り交わされ,これが今回の三年間の共同研究のベ-スになっている.とくに光電子分光及び光化学磁場効果の分野をはじめ,時間分割分光,シンクロトロン放射光科学,理論化学の分野も含められた。ウプサラ大学はESCAのメッカであり,K.シ-グバ-ン教授(昭和56年ノ-ベル物理学賞受賞)の開拓的な仕事が今も受けつがれている.同教授は現在レ-ザ-ESCA計画を遂進中で,新しい装置の開発に取り組んでいる.とくにレ-ザ-技術を導入するESCAとトロイダル回折格子を用いる高分解能光電子分光において,分子科学研究所の協力を求めている.分子研木村らはすでにレ-ザ-光電子分光で進んだ技術をもっており,シ-グバ-ン教授に協力することができた.木村の協力研究者であった阿知波洋次都立大助教授をウプサラに派遣し,レ-ザ-光電子装置の立上げに協力し,ウプサラで最初の光電子スペクトル(レ-ザ-による)が得られた.一方,共鳴線(NeI,HeII)用のトロイダル回折格子は日立の原田達男博士の協力を得て,実現し,高分解能実験の成果を期待している。ウプサラ大物理学研究所C.ノ-ドリング教授はESCAの初期に活躍した人であるが,現在はX線分光の研究を行っているが,ルント大学のシンクロトロン放射光施設でも新しい装置を製作しており,本研究課題の二年目に分子研に招へいすることができ,今後のシンクロトロン放射光研究における共同研究についても意見交換を行い有益であった。光化学反応の磁場効果の研究では長倉三郎総合研究大学院大学学長が開拓的な業績をあげているが,今回のスウェ-デンとの共同研究では,第一年次にウプサラ大学を訪問し,アルムグレン教授と光化学磁場効果について討議をかわした.谷本助教授(広島大)も光化学反応の磁場効果の研究でウプサラ大を訪れ,アルムグレン教授とミセル溶液に代表される微視的不均一溶液系の物理化学過程のダイナミックについて討議した.それぞれ今後の協力関係の基礎がきづかれた。時間分解分光では,カロリンスカ研究所のリグラ-教授は生体系のピコ秒時間分解蛍光分光法およびピコ秒光応答反応について,シンクロトロン放射光による研究と合せて,わが国との協力を希望しており,今後の協力関係が期待できる分野であることがわかった.生体分子構造の分野では分子研北川教授と小倉助手がイェテボリ大学及びシャルマ-ス大学のマルムストロ-ム教授を訪れ,チトクロ-ム酸化酵素に関して密接な協力研究を行った.今後の共同研究の基礎づくりができた。とくに小倉助手はニケ月の滞在で,マルムストロ-ム教授の研究室で,チトクロ-ム酸化酵素の時間分解吸収分光の研究とプロトン輪送の分子機構の理論的研究を行った。東大佐藤助教授はリンシェ-ピン大学の表面物理化学研究室のサラネック教授を訪れ,二ヵ月滞在し,この間に電子分光法による導電性高分子(とくに共役系高分子)とその表面の電子構造の研究で大きな成果をあげ,今回の日本-スウェ-デン共同研究の一つのハイライトでもあった。分子研長嶋助手はストックホルム大学シ-グバ-ン教授を訪れ,ニヵ月滞在して遷移金属錯体の電子構造の理論的計算を行うための計算機プログラムの開発について協力研究を行った。さらに分子研春日助教授は一年目にルント大学マツクス研究所(放射光実験施設)を訪れ,ストレッジリングの加速電子の不安性に関する種々のテスト実験を共同で行い,両者の放射光施設の発展のために有益な実験デ-タが得られた。三年目にはウプサラ大学で,分子科学第一シンポジュ-ムを開催することができ,日本から6名がスウェ-デンから12名の講演者がでて,全部で50名ほどのシンポジュ-ムであったが,極めて有意義なものであった.スウェ-デンとの交流のパイプは少しづつ太くなっており,今後の協力関係が期待できる.
著者
大野 公一 YANG Xia
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

分子やクラスターの平衡構造(EQ)はポテンシャルエネルギー表面(PES)上のエネルギー極小点に相当し、化学反応の遷移状態(TS)はPES上の一次鞍点で近似できる。化学反応は、量子化学計算に基づくPES上でEQとTSを探索することによって理論的に解析または予測できる。しかし、PESは振動の自由度と同数の変数を持つ多次元関数であり、PES全体を考慮したグローバル反応経路探索は非常に難しい課題であった。そのような反応経路ネットワークの探索では、そのネットワーク自身を辿るのが最も効率が良いが、TSからEQへと反応経路を上ることのできる一般的な手法(超球面探索法)を開発し、自動的なグローバル反応経路探索を可能にした。本研究では、超球面探索法を以下の問題に応用した。(1)昨年度に引き続き、星間分子であるアセトアルデヒド、ビニルアルコール、および、エチレンオキサイドを含む組成であるC_2H_4OのPESに本手法を応用し、その反応経路ネットワークの全貌を解析した。さらに、CH_3ラジカルとHCOラジカルなどへの解離極限付近を、それらの電子状態を記述できる量子化学計算と本手法を併用して調べたところ、ローミング機構と呼ばれるラジカル対の再結合反応の遷移状態を初めて見出した。(2)キラリティーを持つ最も単純なアミノ酸分子であるアラニン分子について、そのD体からL体への熱変換反応経路を本手法によって系統的に探索し、4種類のD-L変換経路を見出した。さらに、競合する異性化過程および分解過程を系統的に調べた結果、4種類のD-L変換経路のうちの一つが、最も熱的に有利な過程であることを確認し、アラニン分子を気相中でレーザー光等により過熱した場合には、D-L変換が最も熱的に起こりやすいことを見出した。