著者
岩崎 圭祐
出版者
全国社会科教育学会
雑誌
社会科研究 (ISSN:0289856X)
巻号頁・発行日
vol.95, pp.13-24, 2021-11-30 (Released:2022-10-27)

本稿は,米国の論争問題学習の教師教育に着目し,論争問題学習の効果的な指導法を開発したヘス (Diana. E. Hess)と論争問題学習の指導法を教える教師教育者に関する国際比較研究を行ったペース(Judith. L. Pace)の研究アプローチや研究成果を分析することで,日本において主権者教育や論争問題学習を実践するために必要な教師教育や教員養成のあり方を示すことを目的とするものである。 ヘスやペースの研究を分析した結果,論争問題学習を教室で広げるために教師教育において何が教えられるべきかについて,議論の形式や教材の選択,カリキュラム開発を行うといった論争問題学習に取り組むための教師の「スキル」育成から,政治的中立性の逸脱といった批判への対応や生徒の感情的な対立を抑制するというような論争問題学習で起こりうるリスクに取り組む教師の「ストラテジー」の育成へと議論が展開していることが明らかになった。その上で,2者の研究アプローチや研究成果は,現在の主権者教育において課題とされている,主権者教育に取り組む教員養成という視点からも重要な参照軸となることを示した。