著者
名久井 忠 岩崎 薫 早川 政市
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.318-323, 1981-10-30 (Released:2017-07-07)
被引用文献数
1

トウモロコシホールクロップサイレージの品種および刈取時期と乳牛の末消化子実排泄との関係を検討した。供試品種は「ヘイゲンワセ」,「ホクユウ」,「P3715」の3品種で,刈取時期は乳熟期から過熟期までの2〜4ステージについて行なった。フォレージハーベスタ収穫における子実の完全粒割合は登熟とともに増加した。末消化子実の排泄は,サイレージの子実割合が30%以下ではほとんど認められないが,40%以上になると7〜13%排泄された。でんぷん排泄率は子実割合が30%以下でも,約10%排泄され,40%以上では15〜20%に達した。乳牛による刈取時期別TDN含量は,「ヘイゲンワセ」が乳熟期70.9%,黄熟初期73.6%,黄熟後期70.8%,過熟期66.3%であり,また,「ホクユウ」ではそれぞれ,67.4%(黄熟期),63.6%(過熟期)であった。「P3715」は63.0%(乳熟期),56.0%(糊熟後期)あり,早生品種が中・晩生品種よりも高い値を示した。
著者
名久井 忠 岩崎 薫 早川 政市
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.412-417, 0000
被引用文献数
3

早生品種「ヘイゲンワセ」「ワセホマレ」を供試して,飼料成分,発酵品質,乳牛の採食性,栄養収量の面から,ホールクロッブサイレージとしての刈取適期を検討した。(1)子実重歩合は登熟とともに増加し,黄熟後期にはヘイゲンワセが48.3%,ワセホマレが46.2%に達した。(2)サイレージの飼料成分のうち,水分はワセホマレが糊熟後期が79.4%,黄熟後期が66.6%,過熟期が62.5%と登熟とともに低下した。ヘイゲンワセも同様の傾向を示した。でんぷんは登熟とともに増加し,黄熟後期にはワセホマレが29.6%,ヘイゲンワセが28.4%であった。粗蛋白質はヘイゲンワセが10.2%から7.2%へ,ワセホマレが9.9%から7.2%へ登熟とともに低下した。(3)pHは登熟とともに上昇し,黄熟後期はワセホマレ,ヘイゲンワセとも3.8であった。サイレージの評点は黄熟後期が最もすぐれていた。(4)乾物あたりTDN含量はヘイゲンワセが乳熟期70.4%,黄熟初期および黄熟後期73.6%,過熟期70.8%であった。また,ワセホマレは糊熟後期70.8%,黄熟中期68.1%,黄熟後期69.1%,過熟期65.4%であった。DCP含量はヘイゲンワセが登熟とともに低下したが,ワセホマレは過熟期に至って低下した。(5)乳牛の乾物摂取量は乳熟期8.39kg,黄熟初期10.87kg,黄熟後期12.3kg,過熟期11.3kgであり,黄熟後期が最も多かった。(6)10アールあたり栄養収量は黄熟後期が最もすぐれていた。(7)以上の知見をもとに総合的に判断した結果,ホールクロップサイレージの収穫適期は黄熟後期であることが確認された。
著者
岩崎 薫 名久井 忠 早川 政市
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.418-423, 0000
被引用文献数
1

トウモロコシサイレージの原料が被霜した場合,サイレージの発酵品質,飼料価値,圃場損失にどのような影響を及ぼすかについて検討した。供試品種は交8号,ホクユウ,P3715で,被霜の程度は軽微なものは2〜3回,強いものは5〜14回であった。軽微な霜を被ると植物体の上部1/3程度が脱色し,強霜を被ると全体が脱色した。また,被霜により,サイレージの水分,粗蛋白質,単少糖が減少した。サイレージの発酵品質は,強霜を被ると総酸が顕著に減少し,その結果pHが4.5〜5.3に上昇した。粗蛋白質消化率は被霜回数が増加すると共に低下し,DCP含量も同様に低下した。一方,乾物消化率,TDN含量は被霜しないものと同等か,やや低い値を示した。ハーベスター収穫による圃場損失は被霜により増加した。以上の結果,良質なサイレージ原料を得るためには,2〜3回の降霜後にすみやかに収穫することが望ましいと推察された。
著者
名久井 忠 櫛引 英男 阿部 亮 岩崎 薫 早川 政市 仲野 博之
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.300-307, 1975-12-25

十勝地方で栽培されたとうもろこしの早生品種「ヘイゲンワセ」,「ホクユウ」と晩生種「交8号」,「ジャイアンツ」について,栽培ならびに動物試験による栄養価の査定を行ない,それぞれの特性を比較検討した。(1)子実重歩合は「ヘイゲンワセ」が60.9%,「ホクユウ」が47.3%,「交8号」が31.6%,「ジャアンツ」が20.6%であり,早生品種が明らかに高かった。(2)乾物収量は晩生種が多いが,栽植密度の増収に対する影響をみると早生種が勝っていることから,栽培密度を高めることにより,晩生種の水準まで向上させ得るものと推察された。(3)サイレージの品質は良質であり,その評点は早生種が明らかに優れていた。(4)消化率は,早生種が晩生種よりも乾物が7〜10%程度高く,エネルギーにおいても同様の傾向が認められた。(5)TDNおよびDEについてみると,「ヘイゲシウセ」は69.4〜71.6%および3.12〜3.16kcal/g.DM,「ホクユウ」が67.0〜70.7%および3.14kcal/g.DM,「交8号」が61.1〜62.1%および2.90〜2.93kcol/g. DM,「ジャイアンツ」が60.7〜60.9%および2.69〜2.89kcal/g.DMであり,早生品種が優れていた。(6)10aあたりのTDN収量(密植区)は「ヘイゲンワセ」が655kg,「ホクユウ」が792kg,「交8号」が692kg,「ジャアンツ」が621kgであった。また,可消化粗デンプンは早生品種が239〜274kgであるが,晩生品種は106〜153kgと,前者が明らかに多かった。
著者
阿部 亮 名久井 忠 櫛引 英男 石栗 敏機 岩崎 薫 早川 政市 仲野 博之
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.291-299, 1975-12-25
被引用文献数
2

ヘイゲンワセ,交8号,ジャイアンツの3品種のとうもろこしを9月6日以降,ほぼ10日間隔に経時的に採取し,飼料価値および収量の調査をするとともに,それらの品種を含む15点のとうもろこしサイレージについて飼料値価の調査を行なった。その結果,乾物率,子実含量および収量について品種間に大きな差異が見出された。また,いずれの品種も収量は9月24日以降ほぼ一定となったが,その後も乾物に占める子実割合は増加した。また,とうもろこしサイレージの飼料値価について見ると,可消化粗蛋白質,可消化粗脂肪の含量は品種間で大差なく,TDN含量の大小に関しても大きな位置を占めず,可消化全炭水化物の含量がTDN含量の大小に大きく響いた。可消化全炭水化物の中味について見ると,デンプン,単少糖類などの可消化非構造性炭水化物と可消化構造性炭水化物の割合で,試料間に大きな差異が見られた。熟期が進むにつれて構造性炭水化物の消化率は減少の傾向を示し,その可消化量も減少するが,逆にデンプン含量が増加するため,可消化非溝造性炭水化物と可消化構造性炭水化物含量との間には高い負の相関(r=-0.91)が認められた。また,粗蛋白質,粗脂肪,構造性炭水化物の含量と可消化量との間には,いずれもr=0.95以上の有意(P<0.01)の相関関係が得られた。