著者
岩川 奈津 佐野 真紀
出版者
愛知教育大学特別支援教育講座・福祉講座
雑誌
障害者教育・福祉学研究 (ISSN:18833101)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.67-76, 2018-03

障害のある当事者の生活史をインタビューにより聞き取り,その語りからエンパワメント過程を記述する試みがなされてきている。当事者の経験したエンパワメント過程の多様性を明らかにするためには,研究件数をより一層増やしていくことが望まれる。そのためには,障害のある人の生活史についての語りから,その人ならではのエンパワメント過程を記述するための分析方法が必要である。先行研究を比較検討し,M-GTAとエピソード記述法を実施し結果を組み合わせる分析方法を仮定した。この仮定の下,肢体不自由の当事者であるX氏に協力を得て,以前に収集していたインタビューデータを再分析した。その結果,複数の分析方法を組み合わせるほうが,単一の分析方法のみ実施するよりも,調査協力者のその人らしさを反映したエンパワメント過程の記述が可能となった。
著者
岩川 奈津 都築 繁幸
出版者
愛知教育大学障害児教育講座
雑誌
障害者教育・福祉学研究 (ISSN:18833101)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.55-66, 2017-03

障害者のエンパワメントに寄与する支援のあり方を検討するためには,社会福祉領域におけるエンパワメント概念の全体的な枠組みと障害種別のエンパワメントの内容を検討する必要があると考えた。社会福祉領域におけるエンパワメント概念の全体的な枠組みを検討し,具体的な内容を示しながら,障害種別のエンパワメントの内容を検討した。エンパワメントは複雑な内容をもち,定義を一つに決めることができない面がある。エンパワメントを理解するためには,複数の定義の統合が有効である。障害者のエンパワメントにおける支援者や当事者のあり方は,エンパワメント・アプローチとセルフ・エンパワメントの二つの側面からエンパワメントを捉える枠組みが適していると考えられた。エンパワメントの定義を捉える上で基本となる性質とエンパワメントを専門職と当事者という視点から捉える枠組みを示した。エンパワメントの障害種別の内容を検討した。特定の障害があるからといって,その人が経験したエンパワメントの内容がすべてその障害種特有のエンパワメントの内容とはいえず,障害者のエンパワメントの内容を分析する観点として重要であることを述べた。