著者
岩本 一将
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.22-00311, 2023 (Released:2023-07-20)
参考文献数
39
被引用文献数
1

日本の近代港湾史における先駆的な事例である三国港突堤は,設計者であるEscherの図面が未発見であったことから,設計内容に関する詳細は不明だとされてきた.本稿では,Escherの設計図面を発見し,彼の設計を引き継いで事業を実施したDe Rijkeと古市公威の図面を含めた複数の一次史料を分析することで,設計内容の変遷および建設経緯の詳細を明らかにした.EscherとDe Rijkeによって設計・施工が先導された三国港突堤の建設事業は,明治13年の開港式時点で導流堤として十分に機能していた一方で,防波堤としては十分ではなかった.そのため,大波や暴風による被害を完全に防ぐことはできておらず,古市公威が設計に修正を加えたことで防波堤としての機能が補完され,完成に至っていたことが明らかとなった.
著者
岩本 一将 山口 敬太 川崎 誠登 川﨑 雅史
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.67-80, 2019 (Released:2019-12-20)
参考文献数
119

本研究は,1900-1920年に電気軌道が開業した地方16都市を対象として,都市構造,事業形態,経営戦略の視点より路線選定の意図および特徴を分析し,電気軌道敷設による都市基盤形成の特質を明らかにした.成果は以下の通りである.1)路線選定について,沿線施設の特徴や市外線の有無より「市内完結」,「市域外遊覧地接続」,「都鄙連絡」の3傾向があったことを示した.2)電気軌道の輸送規模は各都市の人口と強く関係し,人口9万以上の都市では市内で完結し,人口8万以下では市外線が設けられたことを示した.3)民間資本による経営戦略を背景に,各都市の第一期計画路線は,鉄道や港等の交通拠点,官庁施設や中心市街地,娯楽施設を一本もしくは複数本で効率よく接続する選定がされたことを示した.