著者
中澤 克成 横嶋 哲 石川 秀平 久末 信幸
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.22-00116, 2023 (Released:2023-01-23)
参考文献数
46

レベルセット法とVOF法は気液二相流解析によく利用されるものの,両者を客観的に比べた例は希少である.前報(土木学会論文集 A2, 76(2), I 439, 2020)ではACLS法(レベルセット法)とCICSAM法(VOF法)の主に界面移流精度を比べた.本報ではTHINC/WLIC法(VOF法)を加え,複数の気液二相流問題を対象に,精度と計算負荷を比較した.一般にレベルセット法は質量保存に,VOF法は界面曲率評価に難があるものの,ACLS法は界面識別関数の変更,VOF法はS-CLSVOF法の導入によって問題点が大幅に改善された.界面ソルバー単独ではACLS法が他の2手法の数倍の計算負荷を伴うものの,気液二相流解析では流体ソルバーの負荷が卓越するので,トータルの計算負荷はほとんど変わらない.
著者
高橋 浩司 白川 龍生 長沼 芳樹 佐野 至徳
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.9, pp.22-00139, 2023 (Released:2023-09-20)
参考文献数
13

積雪寒冷地での道路管理においては,既往の防雪対策を適切に評価することが重要である.防雪設備周辺の吹きだまり等を計測するには,近年活用事例が増えているUAV-SfM測量が効率的だが,積雪環境特有の条件から点群作成の可否や精度低下などの問題点が指摘されていた.そこで本研究では,雪面の雪質や下向き短波放射(明るさの基準),積雪表面の反射率に着目し,使用するカメラのセンサーサイズや撮影高度を変化させ,点群作成の可否とその精度を検証した.その結果,積雪環境下においても,点群が欠けることなく無雪期同様に作成できることを確認した.また,推定値と実測値の比較により,相対誤差の平均値−4%,標準偏差2%が得られた.このことから,吹きだまりを対象とした場合,実用上は問題ないことを明らかにした.
著者
丸山 健司 稲荷 優太郎 長谷 俊彦 神田 智之 加藤 秀章
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.23-00099, 2023 (Released:2023-11-20)
参考文献数
22

橋梁の維持管理の観点から,橋梁用積層ゴム支承には長期の供用期間を確保するための高い耐久性が要求される.一方で,供用中のゴム支承の点検ではゴムのオゾン劣化に起因すると考えられる亀裂の発生事例が報告されている.この様な経年変化による損傷を受けたゴム支承の性能や残存耐力を把握することは,ゴム支承の維持管理において重要である.本研究では超高減衰ゴム支承(HDR-S)を対象として,有限要素解析(FEA)によるひずみ分布や,剥離面を有するモデルの解析結果を元にオゾン劣化による亀裂の進展範囲について検討した.さらにオゾン劣化による亀裂を模擬した供試体の破断特性を評価し,ゴム支承形状や亀裂深さと破断特性の関連性について考察した.
著者
今村 航平 田村 誠 横木 裕宗
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.10, pp.23-00054, 2023 (Released:2023-10-20)
参考文献数
43

気候変動による海面上昇への適応策である住宅移転に関して,住宅地の新規建設が可能な土地を浸水域から地理的距離が近い順に選定するシミュレーションを実装し,日本の全浸水影響人口を移転させる場合の移転費用,土地利用の変化,移動距離をそれぞれ推計した.その結果,2050年,2070年の移転費用はSSP5-RCP8.5では117-118兆円,150-151兆円,SSP1-RCP2.6では100-101兆円,108-109兆円と推計された.これらの金額は既往研究で推計された移転費用の範囲の下限に近かった.移転先の土地利用については,人口減少に伴って生じる荒地の使用が経年増加し,代わりに農地や森林の使用が経年減少した.遠い未来ほど人口減少によって浸水域の近傍に荒地が増えるため,移動距離は短くなった.
著者
西山 孝樹 藤田 龍之 天野 光一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.22-00280, 2023 (Released:2023-06-20)
参考文献数
30

本研究では,江戸幕府の公式記録である『徳川実紀』をすべて読み,「山川掟」の初出とされる1666(寛文6)年以前の治水をするために治山も同時に行わなければならないと言及した法制度に関する事項を抜き出した.その結果,既往研究で「山川掟」の初出とされてきた20年ほど前の1645(正保元)年には,同様の内容に言及した法制度が存在していることを明らかにした.さらに,1666(寛文6)年から1742(寛保2)年の「山川掟」に関する事項も抜き出した.それらを整理したところ,「山川掟」に関するものは6事項が掲載され,約20〜30年ごとに発布されていた.現在においても,「山川掟」のように,治山と治水を同時に考えていくべきであり,江戸時代の政策は現在を生きる我々も,参考にすべき点は大いにあることを示した.
著者
綾野 克紀 藤井 隆史 岡崎 佳菜子
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.12, pp.23-00042, 2023 (Released:2023-12-20)
参考文献数
17

コンクリートの凍結融解抵抗性は,淡水中に比べ塩水中では著しく低下する.コンクリートは,凍結と融解の繰返しによって劣化が進むが,塩水中においては,凍結だけでも破壊に至る.本論文は,このような低温下におけるコンクリートの破壊に,コンクリート中の水酸化カルシウムが与える影響を調べた.また,高炉スラグ細骨材や高炉スラグ微粉末を用いることで塩水中でのコンクリートの劣化を抑えられることが,コンクリート中の水酸化カルシウムの溶解が少ないことに関係していることを明らかとした.
著者
染谷 望 望月 紀保 大谷 俊介 曽根 幸宏
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.23-00036, 2023 (Released:2023-11-20)
参考文献数
16

電気防食状態にあるコンクリート中の鋼材の腐食速度を管理指標とするためには,電気防食状態の腐食速度評価手法の確立が必要である.筆者らは電気防食状態にある湿潤環境におけるコンクリート中の鋼材の腐食速度評価手法として,RAP法(Reciprocating Anode Polarization Curve Measurement Method)を提案しているが,大気環境でのRAP法の評価精度は未検討であった.本研究ではモルタル試験体を用いた室内試験より,RAP法の大気環境における評価精度を検討した.RAP法は,自然腐食状態および電気防食状態ともに,既往研究で用いられるターフェル外挿法と比較して精度が向上することを確認した.
著者
三村 泰広 山岡 俊一 富永 哲史
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.22-00334, 2023 (Released:2023-11-20)
参考文献数
7

近年,地方都市では財政上の課題を背景に道路整備や維持管理における住民の当事者意識の重要性が叫ばれている.当事者意識の醸成を図るに当たり,まずは道路に対する価値意識の理解が不可欠である.本研究は,特に住民に身近な生活道路に対する価値意識を把握しようとするものである.東海3県に居住する調査会社のモニター(n=1,039)を対象に,生活道路に求める価値を調査した.結果,地方都市に住む住民は,生活道路の価値として,安全・安心であること,高齢者や子供,障害者といった交通弱者の使いやすさ,通りやすさを重視していることを示した.また,これらの価値に対する意識の高さが,当該道路の維持管理における当事者意識の高さと相関するとはいえず,むしろ,行政主導で維持管理すべきとする意向の高さと相関していることを示した.
著者
赤塚 真依子 飯村 浩太郎 高山 百合子 源 利文
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.17, pp.23-17158, 2023 (Released:2023-11-01)
参考文献数
11

環境DNAを活用した水生生物モニタリングは経時的な生物情報の収集手段として期待されている.他方,海域では流れの変化が大きく,環境DNA量は採水地点や時刻により変わるため,流れの影響を把握してサンプリングすることが重要である.本研究では固着生物であるアマモを対象に,藻場における環境DNAの時空間分布特性の把握を試みた.海域調査では環境DNAの岸沖方向の分布と藻場内の時間変化を捉えることができ,これにより藻場の環境DNAは藻場分布に依存して藻場より数100m広い範囲に分布が形成され,流れによりその分布形状が変化することが示唆された.また環境DNAを物質濃度に模擬した移流拡散計算により時空間分布を定性的に再現し,流れの条件を変えたケーススタディによって最適な採水範囲を選定する方法について提案した.
著者
関 和彦 山口 愛加 窪田 諭
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.10, pp.22-00071, 2023 (Released:2023-10-20)
参考文献数
20

我が国の人口減少と少子高齢化により,熟練を有する橋梁点検技術者の不足を招くことは必至である.適切な予算配分を行い橋梁の長寿命化修善計画を策定するために,その状態を把握する基盤となる点検データの品質向上および平準化は重要な課題である.そのうえで,損傷進行状況を適切に把握し的確な診断および適切な対策の計画を実施しなければならない. 本研究では,橋梁の点検現場作業を支援することを目的として,橋梁の3次元点群データの差分によるヒートマップにより損傷箇所を可視化し,点検技術者が損傷を発見することを支援する技術を提案した.そして,提案技術の適用可能性を複数の実橋梁で実験した.点検技術者による評価を実施し,現場支援技術への要求事項および課題を整理した.
著者
小松 怜史 松尾 豊史 三浦 智久 石川 哲哉
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.10, pp.22-00212, 2023 (Released:2023-10-20)
参考文献数
23

洋上風力発電設備コンクリート浮体の疲労特性を解明するため,本研究では縮小部分模型供試体を製作し,供用環境を想定した各種条件(水の有無,応力強度比など)にて常時圧縮応力下での疲労載荷実験を行った.結果,コンクリート内に湿潤する水の影響により水中では気中と比べ疲労寿命が2オーダー低下することなどが示された.また最大振幅の応力強度比が大きい場合,接合部近傍では部材中央部と比べて疲労寿命が低下する傾向にあった.具体的には最大振幅が応力強度比70%の場合,接合部近傍が中央部と比べ疲労寿命が1オーダー短くなった.接合面の面着状態が大きく影響していると考えられる.なお本実験の範囲内では,現行のコンクリート標準示方書の疲労強度式を適用して,PRC部材(設計基準強度60N/mm2相当)の疲労寿命を概ね評価可能であった.
著者
岡本 航希 川端 祐一郎 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.10, pp.22-00222, 2023 (Released:2023-10-20)
参考文献数
10

近年,新幹線建設が当初計画から大きく遅延する傾向にあり,財政規律による事業費の削減はその一因である.新幹線建設の遅延は国民経済上の損失となり得るが,遅延の原因や,その経済財政的帰結について総合的分析を行った既往研究は存在しない.本研究では,新幹線建設遅延の実態を定量的に評価した上で,財政制約と新幹線建設遅延の関係に関する仮定を置き,現状の財政制約が国民経済と税収に及ぼす影響を分析した.その結果,現状の財政制約に基づく建設ペースでは2050年までの累計名目GDPが最大約266兆円,税収が最大約35兆円,それぞれ減少する等,財政制約により多額の経済・財政的損失が発生する可能性が示された.この損失の抑制のため,財政規律を見直し,十分な事業予算を投入し新幹線建設を早期化することが必要と考えられる.
著者
坂本 淳
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.8, pp.22-00326, 2023 (Released:2023-08-20)
参考文献数
19

自力で避難が難しい要介護者の自然災害による被災を避けるためには,介護施設をハザードに晒される場所に立地させないことが重要である.本研究では,全国の介護施設の災害リスク分析と,災害レッドゾーンに立地する施設の移転によるリスク軽減効果を評価する.主な使用データは,介護施設の位置情報,要介護者数,事業開始年,およびハザードマップである.その結果,洪水ハザード内にある施設の割合が,その他のハザードと比較して高いことがわかった.また近年は災害レッドゾーンに立地する施設の割合が高く,その施設の要介護者の避難を支援する職員数が十分でない可能性があることが把握できた.さらに,ハザードに晒される場所に立地する,2000年以前に事業が開始された施設の移転を促すことで,要介護者の安全を確保できる可能性がわかった.
著者
及川 大輔 岩崎 圭音 後藤 文彦 青木 由香利
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.22-00348, 2023 (Released:2023-07-20)
参考文献数
22

橋梁の振動特性を把握することは,橋梁全体の剛性の評価などの観点から重要である.しかし,橋梁の振動測定で用いられるサーボ型速度計などの測定機器は高価なものが多く,点検目的や研究目的で誰もが容易に入手して使用できるものではない.そこで,本研究では加速度計が搭載されている安価なタブレット端末を用いて,木歩道橋に対して十分な精度の振動測定が行えるかどうかを検討した.最も卓越する鉛直逆対称モードに関しては,雑音の影響も少くタブレット端末による測定値と数値解析との誤差は−4.0%程度となり,加速度計を搭載したタブレット端末による振動測定の有用性が確認された.また,固有振動数や減衰定数の値を,鋼・コンクリート橋に対する概算式から得られる値と比較することで,測定した木歩道橋の振動特性について考察した.
著者
宮原 史 堤 盛人
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.22-00132, 2023 (Released:2023-01-23)
参考文献数
23

高齢化が進行するインフラを保全してゆくためには,必要な技術力を有する技術者が継続的に確保できるように,研修を評価し,改善するマネジメントの方法論を確立する必要がある.しかし,インフラの保全は暗黙知に支えられている部分も大きいと言われるように,研修の効果を評価しようにもそもそも目標となる技術力の全体像や構成要素が明らかでないことが課題となる.そこで本研究では,教育分野で開発されたブルーム・タキソノミーの枠組を用いて筆者らが先行研究にて具現化した技術力の一例を用いて,道路橋の点検に関する研修の技術力向上効果を評価するとともに,改善案を立案し得ることを示す.そして,インフラの維持管理に関する研修を評価,改善する方法論を提示する.
著者
山下 三平 阿野 晃秀 丹羽 英之 森本 幸裕 佐藤 正吾 深町 加津枝
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.22-00156, 2023 (Released:2023-02-20)
参考文献数
43

本研究はグリーンインフラの一つである雨庭のデザインに役立つ知見を得るために,伝統的な枯山水庭園である京都の相国寺裏方丈庭園を対象とした雨水収支の実測評価を試みた.また新しい雨庭のデザインと維持管理に寄与する提案を行った.実測評価の主な知見は以下のとおりである:1) 本庭園は京都の100年確率日雨量推定値を上回る307.5mmの雨水を貯留だけで流出抑制できる.2) 本庭園は増水時に平均82.7%,最小でも57.8%,減水時は平均32.7mm/h,最小でも14.1mm/hで浸透できる.3) 本庭園には短期の集中的強雨と長期の分散的弱雨のいずれの降雨パターンにも対応する高い浸透機能が確認される.4) 砂礫地質で10-15cmの径を含む構成が,高い浸透機能の持続に寄与すると推察される.
著者
細田 暁
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.12, pp.23-00037, 2023 (Released:2023-12-20)
参考文献数
12

山口県の品質確保システムにおける橋台のコンクリート施工記録を活用して,ひび割れ発生確率曲線を作成し,示方書に示される曲線との比較や考察を行った.示方書の曲線と比較し,明らかに左にシフトしたものが得られ,解析に用いた熱膨張係数が,山口県のコンクリート工場群で作製した供試体の計測から得られた熱膨張係数よりも大きいことによると考察した.実験で計測された熱膨張係数を用いて作成した曲線は示方書の曲線とほぼ重なることが確認された.コンクリート施工記録の全てのリフトのデータを用いた場合,正規分布を仮定して曲線を作成する際の引張強度,引張応力の変動係数が19%と既往の研究に比べて大きくなり,2010年以降のデータのみの場合の変動係数は12.5%と小さく,施工の基本事項の遵守が浸透したことで,品質が向上したと考察した.
著者
羽佐田 紘之 長谷川 大輔 本間 裕大 佐野 可寸志 大口 敬
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.22-00347, 2023 (Released:2023-11-20)
参考文献数
28

目的地として訪問するだけの魅力を有する施設は,その整備効果を多角的に検証することが望まれている.本研究は,訪問に費やす移動費用を表すトラベルコストに基づいて,訪問移動が生じるのに必要な各施設の効用値や消費者余剰を算出し,目的地となる施設自体が有する価値を評価する手法を提案する.同時に,嗜好の異質性を考慮し,効用値が共通であるセグメントへの訪問者の分類も行う.ETC2.0データから構築した茨城県内の道の駅への訪問移動データへと適用し,訪問数は少ないものの有する価値の大きい道の駅の存在や,道の駅の魅力度向上に寄与する機能を明らかにした.提案手法は,inverse shortest paths problemモデルにより代替施設との競合関係の考慮が可能な新たなるトラベルコスト法と位置付けられる.
著者
金森 紘代 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.22-00205, 2023 (Released:2023-11-20)
参考文献数
5

開始から70年以上が経過している地籍調査事業だが,その進捗率は52%にとどまり,残り138,361km2とされる地籍調査の全域完了に要する事業費や期間は明らかになっていない.本研究は,地籍調査の全域完了を見据えた事業計画策定の一助とするため,残る調査対象地域における事業費の試算を行うものである.試算手法としては,公開されているGISと固定資産に関するデータをもとに「地籍調査事業費積算基準書2022年版」に則り全国の残事業費を積算する.その結果,調査完了に必要な費用は約6.43兆円であり,現行の年間事業費ベースでは今後243年を要することが示された.そのうえで事業完了を現実のものとするための具体的な改善策について検討する.
著者
那須川 佳祐 升井 尋斗 車谷 麻緒
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.23-00190, 2023 (Released:2023-11-20)
参考文献数
23

本論文では,鉄筋コンクリートの詳細なメゾスケールモデルの作成から,非線形メゾスケール解析までを行える方法を開発し,鉄筋コンクリートはりのメゾスケールにおける3次元破壊挙動をできるかぎり忠実に再現することを目的とする.メゾスケールモデルの作成では,異形鉄筋の3次元形状に加えて,ボロノイ分割法を利用して粗骨材の3次元形状と粒度分布を再現する.モルタルと粗骨材で構成されるコンクリート相には,異種材料を表現可能な損傷モデルを適用し,コンクリートのメゾスケールにおけるひび割れ進展挙動を再現する.曲げ破壊型およびせん断破壊型の鉄筋コンクリートはりの4点曲げ実験と同様の数値実験を行い,メゾスケールにおける複雑な3次元破壊挙動を再現するとともに,シミュレーション結果と実験結果が定量的に一致することを示す.