- 著者
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小松 正志
岩松 洋子
安倍 敏
兼平 正史
笹崎 弘己
奥田 礼一
- 出版者
- 東北大学
- 雑誌
- 一般研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1995
水道水に0.04〜0.07%程度の微量のNaClを加え、特殊な隔膜を介して電気的に分解する事により陽極側から生成される酸化電位水は殺ウィルス、殺菌作用を有している。しかし、人体に為害性を有する成分であるCl^-を含有しており、問題があることが指摘されている。NaClに代わる電解促進剤を微量添加することにより、同様の効果を有し、しかも無害の酸化電位水を作成し、その殺ウィルス、殺菌メカニズムの解明をはかることを目的に本実験が行われた。NaClの代わりに各種酸を添加してその濃度と導電率の関係を調べ、1000μs/cm程度の導電率を示した酸の電気分解を行い、その酸化還元電位(ORP),pHを測定したが、ORPが1100mV以上でpHが2.7以下の条件を満たす酸化電位水を作成することはできなかった。酸化電位水の殺ウィルス、殺菌メカニズムを解明するために電解時間、ORP,pH,残留塩素濃度の相関を調べた。電解時間が長くなるにつれ、ORPは漸増し、pHは漸減した。残留塩素は8分までは時間の経過とともに増加し、9〜12分までは減少、その後再度時間の増加とともに増加した。残留塩素濃度が10〜40ppm程度含有されている場合は残留塩素濃度に応じて、ORPは急激に増加し、pHは急激に低下した。40ppm以上になると、濃度に応じてORPは緩やかに増加し、pHは緩やかに減少した。pHが2.14のHCl水溶液を12分間電気分解し、陰極側より得られたpH2.27,ORP-375mVの水(1液)および0.05%NaClを含むpH11.66のNaOH水溶液を同様に電気分解し、陽極より得られたpH11.50,ORP 303mVの水(2液)の連鎖球菌、ヘルペスウィルス、ポリオウィルスに対する殺ウィルス、殺菌効果を調べた。その結果、1液は原液でヘルペスウィルスにのみ効果がみられ、2倍、4倍稀釈したものは効果がみられなかった。2液は原液でヘルペスウィルス、連鎖球菌に効果がみられたが、2倍,4倍稀釈したものでは効果がみられなかった。さらに、NaOClを30ppm含む0.001 N HCl水溶液(10%ハイポライト0.03mlを0.001NHClに溶解し全量を100mlとする)がpH2.0,ORP 1147mVを示し、NaOClを20ppm含む0.0005N HCl水溶液がpH2.26,ORP 1126mVを示すことが判明しており、今後、各濃度とpH,ORPとの関係を詳細に調べると共に、その殺ウィルス、殺菌効果を検討してゆく予定である。