著者
安倍 敏
出版者
東北大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

MRSA、HIVあるいは肝炎ウイルスなどの院内感染が社会問題になっている。歯科治療時には、出血の頻度が高いことから、血液を介する感染性疾患に対しては十分な感染予防対策が必要である。また、近年、易感染患者に歯科治療を行う頻度が高くなり、歯科治療室環境の改善が必要である。本研究では酸化電位水、すなわち蒸留水あるいは水道水に0.07%NaClを添加した後、電気分解して得られる、pH2.6、酸化還元電位(ORP)1,100mV、有効塩素濃度16ppmの水を用いて、消毒剤としての有効性について検討し、次の結論を得た。1. 酸化電位水を口腔内に用いると、塩素臭や酸味のため不快感がある。そこで、酸化電位水:ペパーミント:キシリトールを1.0リットル:0.025ミリリットル:8.0グラムに調合することにより、従来の酸化電位水と同等の消毒力が得られ、不快感も消失した。2. 酸化電位水に金属製医療用器具を浸漬すると、腐食が生じる器具がある。セラミックやチタンを用いて耐腐食性を高めた、試作歯科用タービンに細菌を付着させ、エタノール、次いで酸化電位水に浸漬し超音波洗浄した結果、除菌率99%以上と有効な成績が得られた。3. 酸化電位水の有効塩素濃度に応じて、細菌の消毒効果に差異が認められた。従来はORPとpHが酸化量位水の指標として用いられてきたが、ORPが1,000mV以上であっても、有効塩素濃度が低下するとその殺菌効果は著しく消失した。
著者
小松 正志 岩松 洋子 安倍 敏 兼平 正史 笹崎 弘己 奥田 礼一
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1995

水道水に0.04〜0.07%程度の微量のNaClを加え、特殊な隔膜を介して電気的に分解する事により陽極側から生成される酸化電位水は殺ウィルス、殺菌作用を有している。しかし、人体に為害性を有する成分であるCl^-を含有しており、問題があることが指摘されている。NaClに代わる電解促進剤を微量添加することにより、同様の効果を有し、しかも無害の酸化電位水を作成し、その殺ウィルス、殺菌メカニズムの解明をはかることを目的に本実験が行われた。NaClの代わりに各種酸を添加してその濃度と導電率の関係を調べ、1000μs/cm程度の導電率を示した酸の電気分解を行い、その酸化還元電位(ORP),pHを測定したが、ORPが1100mV以上でpHが2.7以下の条件を満たす酸化電位水を作成することはできなかった。酸化電位水の殺ウィルス、殺菌メカニズムを解明するために電解時間、ORP,pH,残留塩素濃度の相関を調べた。電解時間が長くなるにつれ、ORPは漸増し、pHは漸減した。残留塩素は8分までは時間の経過とともに増加し、9〜12分までは減少、その後再度時間の増加とともに増加した。残留塩素濃度が10〜40ppm程度含有されている場合は残留塩素濃度に応じて、ORPは急激に増加し、pHは急激に低下した。40ppm以上になると、濃度に応じてORPは緩やかに増加し、pHは緩やかに減少した。pHが2.14のHCl水溶液を12分間電気分解し、陰極側より得られたpH2.27,ORP-375mVの水(1液)および0.05%NaClを含むpH11.66のNaOH水溶液を同様に電気分解し、陽極より得られたpH11.50,ORP 303mVの水(2液)の連鎖球菌、ヘルペスウィルス、ポリオウィルスに対する殺ウィルス、殺菌効果を調べた。その結果、1液は原液でヘルペスウィルスにのみ効果がみられ、2倍、4倍稀釈したものは効果がみられなかった。2液は原液でヘルペスウィルス、連鎖球菌に効果がみられたが、2倍,4倍稀釈したものでは効果がみられなかった。さらに、NaOClを30ppm含む0.001 N HCl水溶液(10%ハイポライト0.03mlを0.001NHClに溶解し全量を100mlとする)がpH2.0,ORP 1147mVを示し、NaOClを20ppm含む0.0005N HCl水溶液がpH2.26,ORP 1126mVを示すことが判明しており、今後、各濃度とpH,ORPとの関係を詳細に調べると共に、その殺ウィルス、殺菌効果を検討してゆく予定である。
著者
宮本 弘平 高橋 世紀 安倍 敏 遠藤 達雄 小松 正志
出版者
日本接着歯学会
雑誌
接着歯学 (ISSN:09131655)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.187-197, 2002-12-25 (Released:2011-06-07)
参考文献数
35

これまで, ハロゲンランプ (HA) を光源とする光照射器が光重合型コンポジットレジンの重合に用いられてきた. 近年, キセノンランプ (XE) や青色発光ダイオード (LED) を用いた光重合器が開発され, 臨床応用されている. これらの光照射器は照射時間の短縮や発熱量軽減という利点をもつが, コンポジットレジンの重合や接着に与える影響については不明な点が多い. この研究では各種光照射器の使用によるコンポジットレジンの硬化と接着強さに与える影響について調べた. 各種光照射器の光強度を測定し, 3種類のコンポジットレジンを用い試料を重合後, ビッカース硬さ, 新鮮抜去牛歯に対する引張接着強さを測定した. 光強度はHA, XE, LEDの順に348mW/cm2, 1, 993mW/cm2, 131mW/cm2であった. XEおよびLED使用群で, すべてのコンポジットレジンのビッカース硬さはHA使用群に比較して低かった. XEはその高い光強度によって, 5秒間のみの光照射でボンディング材の重合に有利であると思われた.