著者
森川 宏二 橋本 繁輝 岩永 裕氏 山内 利栄 山崎 光雄
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.36, no.Supplement2-Base, pp.265-283, 1988-06-30 (Released:2011-08-04)
参考文献数
15

NY-198の中枢神経系および呼吸・循環器系に対する薬理作用を検討した。1. 100~1000mg/kgの経口投与でマウスは抑制症状を, 300mg/kg以上の経口投与でラットも抑制症状を示した。また, 300mg/kg以上でマウスの自発運動量の減少, hexobarbital睡眠時間の延長および協調運動抑制作用が現れたが, 懸垂抑制作用は認められなかった。2. 300mg/kg以上の経口投与でマウスおよびラットで鎮痛抗炎症作用, 300~1000mg/kgの経口投与でマウス, ラットおよびウサギの正常体温ならびにラットのyeast発熱体温を下降させた。3. 30mg/kgの静脈内投与でもウサギの急性脳波パターンに影響はなかったが, 30mg/kgの静脈内投与によりネコの脊髄単シナプス反射電位と後根反射電位は抑制された。4. 300mg/kg以上の経口投与でマウスの電撃およびpentetrazol痙攣は増強され, また100mg/kgの経口投与で無麻酔ビーグル犬の脳波に発作発射と間代性痙攣が発現した。5. 無麻酔ラットの血圧, 心拍数にほとんど影響はみられず, 麻酔イヌにおいて3mg/kg以上の静脈内投与で血圧の下降, 大腿動脈抵抗の減少が, 10mg/kg以上の静脈内投与で呼吸数の増加, 心拍数の増加あるいは減少が現れたが, 腎動脈抵抗には著明な影響を与えず, 摘出モルモット心房標本にも著明な影響は認められなかった。
著者
岩永 裕氏
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.119, no.3, pp.185-190, 2002 (Released:2002-12-24)
参考文献数
25
被引用文献数
1 2

過敏性腸症候群(IBS)は,腹痛あるいは腹部不快感などの腹部症状と下痢あるいは便秘などの便通異常を症状とし,原因としての器質的変化を同定しえない消化管の機能的疾患である.ポリカルボフィルカルシウムは高吸水性ポリマーであり,便中の水分を吸水·保持することによりIBSの便性状を改善することが期待された.ポリカルボフィルカルシウムは酸性条件下でカルシウムを脱離し,中性条件下では初期重量の70倍の吸水能を示すとともにゲル化する物理化学的特性を示した.ラット空腸および結腸を用いたin situ試験では,ポリカルボフィルが腸管による水吸収に逆らって管腔内に水を保持することが示された.下痢に対して,マウスのプロスタグランジンE2および5-hydroxy-L-tryptophan下痢モデルおよびラットのヒマシ油下痢モデルで有効性を示し,イヌのセンノシド下痢モデルにおいて下痢便排泄頻度を低下させ便性状を改善した.便秘に対しては,正常ラットおよび低線維食ラット便秘モデルにおいて,排便量を増大させた.正常イヌにおいても下痢を誘発することなく,排便頻度,排便量および便水分含量を増加させた.また,ポリカルボフィルはラットおよびイヌにおいて消化管から吸収されず,代謝を受けることなく糞中に排泄された.さらにイヌにおいて,併用投与した薬物の吸収に影響を及ぼさなかった.IBS患者を対象とした二重盲検法による用量設定試験において本剤は,下痢,便秘いずれに対しても有効性を示し,マレイン酸トリメブチンを対照とした比較試験の結果,有効性において有意に優れ,安全性において差を認めなかった.副作用としては,嘔気·嘔吐や口渇などが認められたが,薬理効果過剰による便秘や下痢の発現はわずかであり,ユニークな作用に基づくIBS治療薬として期待される.