著者
田中 創 守屋 岳 岩淵 哲也 日下 博幸
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.213-228, 2010-04-30
被引用文献数
1

近年,GPS可降水量の解析技術の進歩,計算機の高性能化,データ通信回線の大容量化等により数値予報のデータ同化に利用できる精度のリアルタイム解析が可能になった.本論文では,GPS可降水量のリアルタイム解析データの同化について事例解析で予測が改善した例について報告した後,予測ルーチンでの運用を想定した夏季(2007年7-8月)の同化実験を行い,GPS可降水量データのWRFモデルへの同化の影響を評価した.GPS可降水量データに関してはリアルタイム解析でも一定の精度のデータが得られた.事例解析の同化実験では,局地的な強雨の予測に成功した例を示した.統計解析を目的とした夏季2ヶ月間(2007年7-8月)の同化実験では,弱い雨,強い雨ともに降水頻度が増加し,スコア(ETS)がやや悪化した.そのため改善策として同化の際の条件設定について再考した.全期間のスコアでは弱い雨(0〜1mm/h程度)については若干スコアの改善が見られた.気象現象別のスコアでは前線性の降水や台風など比較的スケールの大きな現象についてはスコアの改善は見られなかったが,雷雨などの不安定性降水については陸上の水蒸気の詳細な分布を同化することによりスコアが改善し,GPS可降水量の同化が有効であることがわかった.