著者
岩淵 慎助
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.883-890, 2000-03-20
被引用文献数
1 3

成熟期婦人(平均年齢41.3±7.2歳)の機能性子宮出血に, 初診日より子宮内膜組織検査診断までの7日間投与した〓帰膠艾湯エキス群93例と西洋薬止血剤トランサミン+オフタルムK群90例の止血までに要する日数を比較検討した。総体的な止血日数は〓帰膠艾湯では平均4.29±1.54日, トランサミン他では5.54±2.13日で, 〓帰膠艾湯はトランサミン他より有意(P<0.01 t・χ^2検定)に早く止血する。有効率はそれぞれ94.6%と72.2%であった。虚実証の観点から見ると, 虚証, 虚実間証では有意であるが, 実証では有意でなかった。子宮内膜組織像の観点から見ると, 増殖期, 単純型増殖症では有意であるが, 静止期萎縮期と増殖期分泌期混在, 分泌期では有意でなかった。止血の作用機序は不明であるが, 機能性子宮出血の止血には, 〓帰膠艾湯は, 虚実の証や月経周期にこだわることなく使用できる有用な薬方であると思う。なお副作用例や〓帰膠艾湯無効例のその後の対処についても言及した。