著者
永井 洋子 原 規子 前田 正 岩田 基秀 土門 薫 石井 孝政 吉澤 定子 秋元 達雄 加藤 博人 瓜田 純久 中西 員茂 杉本 元信
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.45-51, 2009-01-20 (Released:2016-02-15)
参考文献数
19
被引用文献数
2 1

成人ヒトパルボウイルスB19 感染症は典型的経過をとる小児と違い,多彩な症状を呈するため診断が困難なことも少なくない.本検討は,2 年間で11,040 例の当科初診患者のうち発熱,皮疹,浮腫,関節痛,筋肉痛などを主訴とする78 例についてヒトパルボB19 ウイルス感染症を疑って抗体価を測定し,血中IgM 抗体陽性(抗体価8.89±7.86 平均±標準偏差,EIA 法)で,同感染症と診断した15 例について,臨床症状および検査所見の詳細な検討を行ったものである.検討結果より「ヒトパルボウイルスB19 抗体価を測定するべき症例の条件(以下条件とする)を次のように作成した.すなわち,1.CRP が低値か陰性,白血球数上昇なし,2.短期間出現する粟粒大の紅斑(顔面は稀),3.上下肢の関節痛や筋肉痛(必ずしも対称性でない),4.四肢とくに指先,足首,足底の浮腫,5.患児との接触,6.倦怠感,頭痛,発熱など感冒様症状,7.補体価が正常か低値,自己抗体陽性.この7 項目のうち1 を必須項目とし,残り6 項目のうち3 項目以上を満たす症例を「条件」を満足する例とした.78 例について後方視的にこの「条件」を用いた場合の感度,特異度,陽性反応的中度,陰性反応的中度は,それぞれ100%(15/15),88.9%(56/63),68.1%/22),100%(56/56)であった.以上より上記の抗体価測定の「条件」は抗体価を測定すべき症例を選択するのに十分有用であると思われた.成人ヒトパルボウイルス感染症では重症例,遷延例があるため見逃すことなく確定診断をつけることが必要である.