著者
小川 博久 神田 伸生 岩田 遵子 杉山 哲司 樋口 利康 岡 健 小川 哲男
出版者
日本女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、現代の学校において、子ども達が学校生活を快適に過ごしているか、学校は子ども達にストレスの無い生活の場を提供しているか、といった問題意識を追究するために、幼稚園や小学校においてフィールドワークを行い、自由な活動の場である遊びに焦点をあて、子ども達の姿を追い、その実態を分析することによって、現代の学校(幼稚園を含む)の課題の解決の方向を探ったものである。当初、小学校における学校の余暇時間における子どもの遊びに着目していたが、学校の居場所性を追求するためには、結局、子ども達の学校生活全体を把握せざるを得ず、われわれの課題は、小学校においては、学級における個と集団の問題を焦点にフィールドワークを続けることになった。その結果、この研究を通して明らかになったことは、幼稚園の室内遊びにおいては、室内に遊びのコーナーの設定がなされ、そこで日常的に繰り返し遊びを続けることで、幼児たちの間に同型的同調や応答的同調の「ノリ」が生成し、遊びが盛り上がり、幼児たちに成立する遊びの内部的秩序感覚(「ノリ」)を通して、個と集団のよき関係が成立すること、同じことが園庭では、エンドレスリレーやサッカーにおける循環や応答の動きのパターンを通して言えることが明らかとなった。また、小学校におけるフィールドワークからは、以下の点が明らかになった。現代の学校の本質として、教授活動を中心に、学業成績の階層的序列化によって、子ども達の能力も差異化され、特に「問題児」は、学級から排除される可能性をはらんでいるが、学級の個と集団の関係が子どもたちにとって豊かな居場所性を獲得するためには、物的・空間的環境の豊かさによって、子ども達の身体的同調を図るよりもこ教師と子どもとの間の相互的な言語コミュニケーションによって「ノリ」を確立することが重要であることが明らかとなった。
著者
岩田 遵子
出版者
東京都市大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、子ども同士の関係性が親密になり、どの子にも居場所が保障されるようなクラス集団の形成過程において、定型的・儀礼的なコミュニケーションの積極的意義を明らかにしたものである。定型的表現は、一般には子どもの個性的な表現を抑圧するものとして否定されるが、これらはノリの共有を促し、親密な人間関係形成を促すこと、また、それが演技パフォーマンスの向上のみならず、知的能力の向上とも関連していることを明らかにした。