著者
岩見 億丈 笹井 康則
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会論文誌 (ISSN:18835856)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.106-116, 2016 (Released:2016-08-23)
参考文献数
13
被引用文献数
2

福島第一原発事故による放射性セシウム汚染牧草を遠野市一般廃棄物焼却炉で焼却した際の行政資料を分析し,物質収支により放射性セシウムの挙動を検討した。2012年11月から2014年7月までの394日分のデータから274日分を選別し,ベイズ統計回帰分析を行った結果,灰中回収率は 64.7 % (95 % 信用区間56.9~72.6 %) となった。設備へのセシウム吸着量を評価すると,バグフィルターの排ガス中放射性セシウム除去率は 64.6 % であった。排ガス中Cs137濃度は 1.4 Bq/m3N 前後まで上昇したと推定されるが,現行の測定法では不検出となる数値である。物質収支の視点からも放射性物質の大気への排出を検討し,科学的説得性のある排ガス中濃度測定法を実施することが,放射性廃棄物の焼却を行う際の科学的必要条件であると考えられる。
著者
岩見 億丈 中屋 諒大 笹井 康則
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会研究発表会講演集 第26回廃棄物資源循環学会研究発表会
巻号頁・発行日
pp.381, 2015 (Released:2015-10-20)

宮古市焼却炉周囲9kmの範囲で326ヶ所の土壌調査を行ったところ、焼却炉からの離距離1.7km未満の地点では、土壌中Cs134およびCs137濃度が、離距離1.7km以上の地点に比べ1.7倍および2.4倍高値であり(P値<10-10)、焼却炉で放射性セシウムを高濃度に含む牧草や廃棄物を処分したことが原因と考えられる。今回の観測値は、焼却炉での物質収支による放射性セシウム推定漏出量とほぼ整合していた。一般焼却炉のバグフィルターのみで排ガス中放射性セシウムを99.9%除去できるという仮説は支持できず、バグフィルターの除去能力の見直しが必要である。現行の放射性セシウムの排ガス濃度規制では、一般焼却炉からの放射性セシウム漏出を十分防止できていないと考えられる。