著者
岡野 多門 安東 重樹
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会論文誌 (ISSN:18835856)
巻号頁・発行日
vol.23, no.5, pp.232-239, 2012 (Released:2012-11-27)
参考文献数
14
被引用文献数
2 1

鳥取県の8海岸で撤去を伴う漂着ごみ調査を7年間毎月行い,河口から調査地までの距離と,そこでの由来地別漂着量について分析した。河口近くでは日本ごみが多く,外国ごみは少ない。これは地元のごみを含む河川水が,海表面を河口から扇型に広がる表流水効果で説明できる。日本ごみの量は河口からの距離にほぼ反比例するので,地元ごみと遠方からの日本ごみの量を推算できる。千代川流域圏では日本ごみの半分近くが地元由来となり,それは地名情報を印刷した漂着宣伝ライターの地名割合と一致した。この地域の漂着ごみは長崎県から鳥取県までの範囲から来るが,千代川流域圏の人口は,その地域の約3%にすぎない。これは河口から流出した地元ごみが,その地域の沿岸域に滞留しやすいことを示す。ここで発見した浮遊ごみに対する表流水効果と沿岸域滞留現象は一般的と判断できるので,地元海岸の漂着ごみを減らすためには,地元からのごみの流出を防止することが最も重要である。
著者
岡野 多門 安本 幹
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会論文誌 (ISSN:18835856)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.97-104, 2013 (Released:2013-10-10)
参考文献数
20

海岸に漂着する医療や衛生用品ごみは感染の危険だけでなく,見た人に強い嫌悪感を与える。その投棄実態を知るために,アジア地域の海流の下流に位置する鳥取県で毎月の漂着数を調べた。医療用瓶と注射器の年間平均漂着数は24.5個/(hm・y) で,中国由来が大半で,日本と朝鮮半島由来は少ない。しかし浣腸や痔薬容器,タンポンアプリケーターの大半は日本由来で,合計は2.5個/(hm・y) で,これは日本文字のあるライターの値と大きく相違しない。漂着数/消費数を漂着からみた投棄率とするなら,浣腸とタンポンの投棄率はペットボトルや栄養ドリンク瓶の投棄率と同程度である。これは屋内消費の医療衛生用品ごみが,あえて屋外に持ち出されて投棄されていることを示す。これは投棄者の責任であるが,在宅医療廃棄物と一般家庭の衛生用品ごみの収集体制の相違にも起因する。このように漂着量や投棄率は隠れた投棄の防止策を考える上で重要である。
著者
岩見 億丈 笹井 康則
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会論文誌 (ISSN:18835856)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.106-116, 2016 (Released:2016-08-23)
参考文献数
13
被引用文献数
2

福島第一原発事故による放射性セシウム汚染牧草を遠野市一般廃棄物焼却炉で焼却した際の行政資料を分析し,物質収支により放射性セシウムの挙動を検討した。2012年11月から2014年7月までの394日分のデータから274日分を選別し,ベイズ統計回帰分析を行った結果,灰中回収率は 64.7 % (95 % 信用区間56.9~72.6 %) となった。設備へのセシウム吸着量を評価すると,バグフィルターの排ガス中放射性セシウム除去率は 64.6 % であった。排ガス中Cs137濃度は 1.4 Bq/m3N 前後まで上昇したと推定されるが,現行の測定法では不検出となる数値である。物質収支の視点からも放射性物質の大気への排出を検討し,科学的説得性のある排ガス中濃度測定法を実施することが,放射性廃棄物の焼却を行う際の科学的必要条件であると考えられる。
著者
石森 洋行 遠藤 和人 山田 正人 大迫 政浩
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会論文誌 (ISSN:18835856)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.39-49, 2017 (Released:2017-04-11)
参考文献数
11
被引用文献数
2

放射性物質に汚染された廃棄物の焼却灰はその濃度によって埋立方法が異なるものの,放射性物質の拡散防止対策として土壌吸着層の設置は義務付けられており,その性能評価は重要である。本研究では,放射性セシウムに対する土壌や廃棄物,吸着材等の吸着特性を把握するために,放射能汚染飛灰から作製した4 種類の飛灰溶出液を溶媒として,22種類の試料を対象に吸着試験を行った。その結果より分配係数を評価し,その影響因子を検討した。また試料に吸着した放射性セシウムの脱着特性を調べるために,純水,1 mol/L 酢酸アンモニウム,人工海水,飛灰溶出液を溶媒とした溶出試験を行い溶出率を評価した。
著者
桑原 智之 山本 祥平 吉田 俊介 西 政敏 帯刀 一美 佐藤 利夫
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会論文誌 (ISSN:18835856)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.50-57, 2017 (Released:2017-04-18)
参考文献数
12
被引用文献数
2 3

竹チップ燃料の燃焼残渣からカリウム(K)を高効率かつ低コストで回収するため,抽出条件(抽出液の種類と固液比),回収方法(加熱濃縮-温度差析出法)について検討した。抽出液が 1.0 mol L−1 HCl,固液比が1:10 の条件で高効率に K を抽出でき,このとき抽出液から K を 85.4 wt% で回収できた。ただし,薬品コストを考慮すると 0.01 mol L−1 HCl がより妥当であると考えられ,さらに燃焼残渣を微粒化することで抽出率を 65.5 wt% に維持することができた。回収物は水溶性 K を 53.7 wt% 含有しており,回収物の K の化学形は KCl であったことから,肥料としての適用性について検討した。その結果,肥料取締法に基づく KCl 肥料としての含有率の基準を満たしていた。また,As, Cd, Cr, Ni, Pb についても,同様に実験した結果,肥料取締法に基づく焼成汚泥肥料における許容含有量を下回った。よって,竹チップ燃料燃焼残渣からの回収物は K 肥料として使用可能なことが明らかとなった。
著者
足立 千尋 大沼 進
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会論文誌 (ISSN:18835856)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.65-71, 2021

本研究は 2020 年 7 月に施行されたレジ袋有料化の影響を調べるために,札幌市内のコンビニエンスストアの店頭にて次の観察調査を行なった;1-1) 有料化前後での人々の行動の変化,1-2) 有料化を導入した店舗と導入していない店舗でレジ袋辞退率の比較,2) 有料化後もレジ袋を購入する客の購買時の特徴の調査。調査 1 は 2020 年 6 月から 8 月に店頭にて実施し,観察による 554 のデータを得た。有料化前後において有料化を行なった店舗とそうでない店舗で辞退率が大きく異なっていた。調査 2 は 9 月に実施し,4,289 のデータを得た。レジ袋辞退率と購入者の属性の関連について分析を行なった。その結果,レジ袋辞退率に関して以下のような買い物客の特徴が確認された;a) エコバッグ持参率は全体的に低く,b) 弁当やそれに準ずるものを購入するときや購入点数が多いときに辞退率が低かった,c) 声掛けがない場合のほうが辞退率が高かった。
著者
笹尾 俊明
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会論文誌 (ISSN:18835856)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.75-87, 2020 (Released:2020-11-07)
参考文献数
20
被引用文献数
1

持続可能な廃棄物処理を行う上で,廃棄物の収集運搬や処理の方法が費用に与える影響を把握することは重要である。廃棄物処理費用に関する既存の計量経済分析では,収集運搬・中間処理・最終処分の部門ごとの分析や,単独で事業を行う市町村と一部事務組合等との比較検討は不充分であった。本研究では,収集運搬・中間処理・最終処分の部門ごとに,単独で廃棄物処理事業を行う市町村と一部事務組合等の違いも考慮して,一般廃棄物の収集運搬・処理費用に関する計量経済分析を行った。分析の結果,収集運搬・中間処理・最終処分の全部門で規模の経済が確認され,特に中間処理と最終処分でそれが顕著であることがわかった。単独で収集・処理を行う市町村と比べ,組合等では収集運搬に係る平均費用が低く,また全部門で規模の経済の効果がより大きいことを明らかにした。組合等における費用削減要因として,委託費抑制による可能性を指摘した。
著者
柳瀬 龍二 平田 修 松藤 康司 花嶋 正孝
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会論文誌 (ISSN:18835856)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.12-23, 2009 (Released:2009-05-29)
参考文献数
19
被引用文献数
3

1983年,水銀を含む乾電池が使用済み後に埋立処分され,乾電池から水銀が流出し環境汚染が懸念されるとして,大きな社会問題となった。筆者らは,1985年より乾電池と廃棄物を混合充填した大型埋立実験槽を用いて,水銀の浸出水への流出や水銀の気化特性等を長期にわたって調査研究してきた。本報は,埋立10年間にわたる嫌気性埋立実験と,埋立20年間にわたる準好気性埋立実験の結果を基に,埋立地における水銀の流出特性を比較検討した。埋立20年間に埋立実験槽から流出した水銀は総水銀量の2%以下であり,浸出水への流出は0.2%以下と小さく,大気拡散による流出が大部分を占めていた。埋立10年後,20年後に回収した乾電池は外装が腐食し,乾電池中の6%前後の水銀が乾電池から廃棄物層へ移行していた。また,埋立層内が嫌気性雰囲気の方が水銀の流出を抑制していた。したがって,埋立20年後も90%以上の水銀が埋立地に残存し,水銀の流出は極めて小さかった。
著者
西島 亜佐子 中谷 隼
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会論文誌 (ISSN:18835856)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.44-53, 2016 (Released:2016-04-18)
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

レジ袋は一度使用されただけで廃棄されることもあるが,自治体指定のごみ袋が導入されていない自治体ではごみ排出袋として再使用されることもある。また,プラスチック製容器包装 (容リプラ) の分別収集が実施されている自治体では,レジ袋の削減は容リプラのリサイクルにも影響を与える。そのため,小売店が実施するレジ袋の配布削減による効果は,各店舗が立地する自治体の廃棄物施策の実施状況にも依存する。こうした背景から,自治体の廃棄物施策による波及的影響の差異を考慮して,ライフサイクル評価 (LCA) によってレジ袋の配布削減による温室効果ガス (GHG) 削減効果を算定した。その結果,レジ袋の配布削減がレジ袋のライフサイクルに与える影響のみを考慮した場合は,立地自治体にかかわらず削減効果はほぼ等しくなったが,他製品への波及的影響も考慮した場合は,ごみ排出袋としての再使用や容リプラとしてのリサイクル等,レジ袋が有効利用されていた自治体ほど効果は小さくなることが示された。
著者
岡野 多門 加藤 郁美
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会論文誌 (ISSN:18835856)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.25-37, 2015 (Released:2015-03-19)
参考文献数
29

海に流出した浮遊ごみの一部は海岸に漂着するため,漂着量は各国での固形廃棄物の管理体制の指標となる。ここでは日本からのごみの流出抑制を目的として,鳥取県の8海岸の延べ4 km区間で,8年間半の毎月の漂着ごみ量を測定した。その結果,漁業ごみが最も多く,ロープ,フロート,20 Lプラスチック容器の3種の年間平均漂着重量は約65 kg/(hm・y) であった。日本製漁具は少なかったが,飲料や洗剤,調味料容器,耐圧缶,およびライターの民生ごみの年間平均漂着重量は約28 kg/(hm・y) で,その約半分が日本のごみであった。最も深刻な日本ごみは小型のペットボトルで,近くの河川流域と海浜周辺で投棄されていた。この2つの投棄地からの漂着数の比は大型ペットボトルとタブ型飲料缶を説明変数とする重回帰分析で推定できる。これは漂着数と海浜での投棄数を推定するための初めての方法で,実効性のある排出防止対策の実施に利用できる。
著者
石村 雄一 竹内 憲司
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会論文誌 (ISSN:18835856)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.7-15, 2016 (Released:2016-02-17)
参考文献数
36

本研究は,東日本大震災によって発生した災害廃棄物の広域処理について,受入自治体の特徴をマスコミ報道内容等の調査および統計的手法によって明らかにした。ロジットモデルによる分析の結果,義援金額,ボランティア参加率が災害廃棄物の受け入れに有意な正の影響を与えていることが示された。すなわち,住民による被災地への支援が大きい自治体ほど,災害廃棄物の受け入れに積極的であり,その傾向は東日本の自治体において顕著であることがわかった。また,福島第一原子力発電所からの距離,農業従事者の人口割合が受け入れに有意な負の影響を与えていることがわかった。これらは放射性物質のリスクに対する懸念が,広域処理にとって大きな障害となっていることを示しているものと解釈できる。
著者
岡野 多門 安東 重樹 池田 圭吾
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会論文誌 (ISSN:18835856)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.285-292, 2011 (Released:2011-11-30)
参考文献数
13
被引用文献数
3

鳥取県の複数の海岸で,飲料用ペットボトルの毎月の漂着数と,中国と台湾由来ボトルの製造年月日を調査した。その分析結果から,東アジアモンスーンがボトル投棄から漂着までの過程に大きな影響を与えていることがわかった。5月から6月頃に中国南部と台湾から海に流出したボトルは7月に漂流経路を日本海方向に変え,8月から9月頃に漂着する。長江流域とそれ以北に由来するボトルは7月から8月頃に河川を経由して流出し,10月から11月頃に漂着する。東南アジア由来ボトルは8月から11月にかけて漂着する。夏に流出した朝鮮半島由来ボトルは日本海の沖合を漂流し,北寄りの風の強まるころから南下を始め,おもに11月から1月に漂着する。東シナ海から日本海への流入可能期間は約3~4ヶ月間で,それ以外の期間は太平洋に流出していると推定される。ただ漂着数は日本由来ボトルが圧倒的に多く,この結果は多量のペットボトルが日本の太平洋側を含む東アジアから太平洋に流出していることを示唆する。
著者
松藤 敏彦 石井 翔太
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会論文誌 (ISSN:18835856)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.382-395, 2011 (Released:2012-01-17)
参考文献数
11
被引用文献数
4 3

ごみ処理計画においては,元素組成,発熱量などのごみの特性値を知ることが重要である。しかし環整95号は代表試料採取の難しさと,組成間の水分移動,異物付着などによる誤差が生じやすい。本研究は,細組成分析値と細組成別特性値からより正確なごみ特性値の推定が行えるとの考えから,細組成別の特性値データベースを作成した。対象は家庭系ごみ中の可燃性成分である紙類,プラスチック類の種類別,および厨芥とし,それぞれ水分流出,異物付着を避けるため,容器包装プラスチック,雑がみの分別区分から試料を採取し,厨芥は燃やせるごみの中から厨芥類のみを入れたプラスチック袋をサンプリングした。紙類,プラスチック類の組成区分は細組成分析実施自治体を参考に決定し,それぞれ43種,36種の試料を分析した。厨芥の試料数は31である。各特性値の分布を示すほか,セルロース,プラスチックの素材,炭水化物,たんぱく質などと比較することで,ごみの詳細な特性を検討した。また分析値の使用例として,ごみ中の塩素の由来,プラスチック中の炭素量を推定し,自治体におけるごみ質分析方法について提案した。
著者
土手 裕 原田 秀樹 関戸 知雄
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会論文誌 (ISSN:18835856)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.23-29, 2023 (Released:2023-07-24)
参考文献数
9

シリコン系太陽光パネルセルから分離されたカバーガラスと比重分離残渣のコンクリート用細骨材としての環境安全性を評価するために,カバーガラス,比重分離残渣,これらの混合物である廃パネル骨材,廃パネル骨材を用いた利用模擬試料,セメントペースト試料について JIS A 5011-1 による溶出量試験,含有量試験を行なった。比重分離残渣のPb含有量が環境安全品質基準値を 1.5 倍超過したが,廃パネル骨材の Pb 含有量はカバーガラスと比重分離残渣の混合による希釈効果により含有量基準を満足した。カバーガラスの Sb 溶出量が指針値を 1.1 倍超過したが,廃パネル骨材の Sb 溶出量は指針値を満足した。廃パネル骨材が含有量基準 ・溶出量基準を満足したことにより,利用模擬試料も含有量基準・溶出量基準を満足した。よって,今回対象とした廃太陽光パネルセルをコンクリート用細骨材として用いた場合,骨材,利用模擬試料どちらで評価しても環境安全上利用が可能であるといえた。
著者
野々村 真希
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会論文誌 (ISSN:18835856)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.152-163, 2018 (Released:2018-08-21)
参考文献数
86
被引用文献数
6 2

家庭の食品ロスが大きな問題となっている。この家庭の食品ロスは消費者行動の変化により削減される可能性が大きい。では,家庭で消費者は食品に対してさまざまな行動をとる中で,ロス削減のためには特にどのような行動が変わる必要があるだろうか。この問いに答えるために,本稿は近年多数公表されている家庭の食品ロス研究の成果をその調査方法も考慮して体系的に整理し,どのような行動がロス発生に大きくかかわっているのかを検討した。その結果,消費者のさまざまな行動のうち,食材の下処理で可食部まで除去する,在庫を積極的に消費しようとしないなどの行動がロス発生に大きくかかわっていることが示されていることを確認した。表示期限で判断して食品を廃棄するケースが多いことも明らかにされていた。今後は,これらの行動はどうすれば変化するのかを探ることが必要である。
著者
鈴木 和将 大畠 誠 川本 克也
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会論文誌 (ISSN:18835856)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.157-171, 2012 (Released:2012-09-22)
参考文献数
10
被引用文献数
1

近年,ごみ焼却施設は,公衆衛生の向上,環境保全といった目的だけでなく,地球温暖化防止,資源・エネルギー消費の抑制等,低炭素・循環型社会に果たす役割が強く求められている。本研究は,ごみ焼却施設の低炭素・循環型社会への適合性を評価する手法の開発を目的として,15の焼却施設に対してLCA等の詳細調査を行い,評価指標の検討を行った。その結果,評価指標として,投入されるエネルギー量,CO2排出量,搬出残渣量等を抽出した。また,施設から外部へ供給する電気と熱という質の異なるエネルギーを同じ尺度で評価できる,外部へのエネルギー供給率を指標として提案した。さらに,これらの指標を用いて,発電効率の高い97焼却施設に適用評価し,ベストプラクティスである焼却施設の実態を把握するとともに,ベンチマーキングの基礎情報を得ることができた。また,これらの結果をわかりやすく示すことができるスコアリングおよび表示方法を提示した。
著者
齊藤 由倫
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会論文誌 (ISSN:18835856)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.55-64, 2020 (Released:2020-09-24)
参考文献数
28

ごみ減量に関する意識高揚を目的に,市民アイデアコンテストが日本各地で行われている。本研究は,その応募作品から主要な応募者の意識を発掘できるかを実証分析するため,群馬県主催のコンテストを対象に応募作品のテキストマイニング分析を行った。応募者の 8 割超を占めた小学生の作品に焦点を絞って分析した結果,多くの小学生がもつ理解として,頻出名詞の「紙」「服」「ペットボトル」「皮 (食品廃棄として)」が指すごみへの問題意識が強いこと,ごみ種別ごとにリデュース,リユース,リサイクルのどれを推進すべきかの認識の強さが異なることが明らかとなった。一方,コンテストの一般的な審査による得点と抽出語の関係分析からは,言語的に他と類似しない一部の独創的な作品が高評価を得て入選しやすい特性が示された。したがって,応募者の多数意見を捉えることのできる本論の手法は,既存のコンテストに新たな付加価値を見出せることが期待された。
著者
大澤 正明 島岡 隆行 中山 裕文
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会論文誌 (ISSN:18835856)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.291-302, 2009 (Released:2009-11-25)
参考文献数
22

わが国における廃棄物対策は公衆衛生の向上を目的とすることから始まったが,衛生状態が高いレベルで安定化している今日においては,公衆衛生対策としての貢献を評価されることは少なく,また,現在まで廃棄物対策が公衆衛生の向上のために何をどのようにして行い,その効果がいつ頃から現れてきたのかということに関して十分に検証されてこなかった。本研究では,廃棄物対策とりわけごみ処理に着目し,衛生状態の向上との関連性について検討した。その結果,ごみ処理は,上水道整備や下水道整備と並び,公衆衛生の向上に大きな貢献を果たしてきたことが明らかになった。特に,清掃法施行下の取り組みが大きな効果を発揮し,昭和50 (1975) 年前後におけるごみ焼却施設の基本的な整備の完了をもって,衛生対策としてのごみ処理の役割を達成していたことがわかった。
著者
白波瀬 朋子 貴田 晶子
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会論文誌 (ISSN:18835856)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.217-230, 2009 (Released:2009-09-16)
参考文献数
27
被引用文献数
5 6

廃パソコンを詳細解体し,化学分析により40元素について全含有量を求めた。パソコン1台中の基板約1kg (電源基板を除く) には,Ag, Au, Pd, Al, Cu, Pbがそれぞれ,0.79, 0.14, 0.19, 91, 187, 17.8g含まれ,そのうちマザーボードに含まれる割合は,Ag, Au, Pdは58%,Cuは66%であった。廃パソコン11kgに含まれるAg, Au, Pd, Al, Cu, Fe, Zn, Nd, Pbの含有量はそれぞれ,0.79, 0.14, 0.19, 420, 320, 7,200, 77, 23, 20gであった。また,Ni, Sn, Sb, Mg, Mnは57, 28, 2.1, 1.6, 1.0gと推定した。含有量が0.02g以下の金属元素は,Co, Nb, Cd, Te, V, Ga, Sc, 0.01g以下の金属元素は,Se, Ta, As, Bi, In, Hf, Ir, Li, Pt, Tl, Y等であった。2004年の廃パソコンの発生量747万台から,年間に廃棄されるパソコン中の金属量 (廃製品から回収しうる最大量) を推定し,Au, Ag, Pdについてそれぞれ,1.1, 5.9, 1.4tonと見積もった。
著者
泉 優佳理 白井 義人
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会論文誌 (ISSN:18835856)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.36-44, 2014 (Released:2014-04-15)
参考文献数
12

東日本大震災で発生した放射能汚染の恐れのある災害廃棄物の広域処理の受け入れを検討した自治体ではさまざまなリスクコミュニケーションが展開されている。広域処理を受け入れた自治体の一つである北九州市は,タウンミーティングおよび住民説明会における参加者アンケートの結果等をHP上に公表しており,そのアンケートの自由記述欄のテキストデータをコンピュータソフトKH Coderを用いて分析した結果,共起ネットワーク図よりタウンミーティングと住民説明会での参加者の意見の異同が明らかになった。共起ネットワーク図に他の説明会よりも強い反対意見が表れているタウンミーティングでは,住民説明会と比較して基調講演,来場者との意見交換が「よくわからなかった」と答えた人の割合が高かった。その際参加者の年齢層は低く,市外からの参加者を35%含み,居住地から会場までの推定移動距離は長く,受け入れの判断基準が異なることが示唆された。