- 著者
-
熊崎 大輔
岩見 大輔
三原 修
守安 久尚
- 出版者
- 社団法人 日本理学療法士協会近畿ブロック
- 雑誌
- 近畿理学療法学術大会 第51回近畿理学療法学術大会
- 巻号頁・発行日
- pp.46, 2011 (Released:2011-10-12)
【目的】
我々は第50回近畿理学療法学術大会において、市民フェスティバルで一般市民を対象に実施した理学療法に関するアンケート調査について報告した。今年度も同様にアンケート調査を実施したので、昨年度の調査結果と比較し、その変化について検討することを目的とした。
【方法】
調査対象は、大阪府理学療法士会泉州ブロックにあるK市が主催する市民フェスティバルの参加者とした。調査は留置法により、質問紙を市民フェスティバル開催日に、会場内にて参加者に配布し、その場で回収した。有効回答数は631(男性300名、女性331名)で、回答者の平均年齢は39.9±21.9歳であった。
調査内容は、デモグラフィクス(性別、年齢、住まい、職業)、リハビリテーション、理学療法、理学療法士各々の認知度、本人、家族の理学療法経験の有無とした。認知度はそれぞれの項目に対して、知っているか、知らないか、理学療法の経験の有無では、経験があるか、経験がないかの二者択一での回答とした。また認知度と理学療法の経験の有無に関しては、昨年度と今年度を比較するため数量化を行った。具体的には、二段階評定を採用し、知っているおよび経験がある、知らないおよび経験がない、それぞれに2、1の得点を与え、間隔尺度を構成するものと仮定した。
データの分析はSPSSVer16を用い、昨年度と今年度の各項目の比較はt検定によって比較した。なお、有意水準は5%未満とした。
【説明と同意】
対象には研究の趣旨を説明し、同意を得た。
【結果】
2011年度の調査における認知度について、リハビリテーションでは、知っている75.3%、知らない24.6%であった。理学療法では、知っている46.6%、知らない53.4%であった。理学療法士では、知っている46.4%、知らない53.6%であった。理学療法の経験については、本人の経験で、ある18.1%、ない81.9%であり、家族の経験では、ある26.5%、ない73.5%であった。
昨年度との比較において、認知度では2010年度、2011年度の順に、リハビリテーションが1.77±0.42、1.78±0.84、理学療法は1.52±0.64、1.47±0.49、理学療法士では1.49±0.50、1.47±0.49であり、すべての項目で有意な差は認められなかった。理学療法の経験では、本人の経験が1.18±0.39、1.18±0.39、家族の経験は1.31±0.46、1.26±0.44であり、すべての項目で有意な差は認められなかった。
【考察】
今回の調査結果から、認知度に関してリハビリテーションは約8割の方が認知しているが、理学療法や理学療法士については約5割の認知であることが明らかになった。言い換えれば、リハビリテーションという用語は認知しているが、理学療法という具体的な内容や、それを担う職種についてはまだ認知が低いということになる。また昨年度との比較において、すべての項目に有意な差が認められなかったことから、1年間で認知度に変化はなかったことが分かった。
大阪府理学療法士会泉州ブロックでは理学療法の認知度を向上させるため、様々な活動に取り組んでいる。直接、一般市民の方々と関わりがある活動としては、市民フェスティバルへの参加、介護技術講習会や市民公開講座の開催などが挙げられる。このような活動に関しても、今後それらの活動を通して、より一般市民の方々に理学療法を認知していただける方法や内容を検討し、具体的・継続的に進めていく必要があると考えられた。
理学療法の経験については、本人が理学療法を受けたことがある方が約2割、家族が受けたことのある方が約3割という結果となり、昨年度との比較においても、有意な差は認められなかった。理学療法の経験については、一般市民の方々が疾患を持ち、理学療法を提供することで向上するものであり、数値が向上すればよいものではない。しかし、医療・介護を問わず、さらに理学療法を提供できる施設が充実し、一般市民が理学療法を必要した際に十分提供できる環境を作っていくことも、我々の地域社会対する役割といえるのではないだろうか。
今回の調査から、今後も理学療法、理学療法士の認知度を向上させるために、一般市民の認知度や経験を経時的に調査・把握し、具体的な活動を行っていくことが重要であると考えられた。
【理学療法研究としての意義】
理学療法士が社会的な身分や職域を確保していくためにも、一般市民の理学療法に対する認知度を調査・把握することには意義がある。一般市民の理学療法に対する認知度を向上させるために、どんな活動を、どんな対象に実施していくべきなのかを明らかにするためにも、認知度調査は理学療法学研究として価値があると考えられる。