著者
森主 宜延 岸本 匡史 宮川 尚之 小椋 正
出版者
The Japanese Society of Pediatric Dentistry
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.604-612, 1998-09-25
参考文献数
27
被引用文献数
2

本研究は,チンキャップ適用の実態と頭蓋顔面硬組織の変化から,チンキャップ適用の妥当性について再検討することを目的とした。対象は,チンキャップ適用者51名であり検討資料は装着後6か月間隔で記録された外来カルテ,歯列模型,側貌頭部エックス線規格写真計測による。結果として,チンキャップの平均撤去年齢が11歳であり,平均使用期間は3年6か月であった。使用目的は下顎の過成長の抑制であり,撤去時の主な理由は被蓋の改善と骨格型要因に不安が解消されたことにあった。また,使用開始時下顎骨の過成長と診断された症例において,被蓋の改善による下顎の過成長の解消と考えられた症例が認められた。使用効果は,使用開始時,∠SNBが正常咬合者と比較し大きく,チンチャップ撤去時並びに撤去1年後も同じく有意に大きな値を示した。しかし,撤去時,∠SNAと∠ANBが有意に増加し改善の傾向もみられた。使用開始時から撤去1年後までの定性的変化から,使用開始時から撤去時の装置使用による計測項目の変化の方向と,撤去時から撤去1年後の計測項目の変化の方向が逆となり後戻り傾向が認められた。結論として,適用理由となる不正要因の診断に注意を要し,撤去理由との矛盾も指摘された。下顎骨成長の絶対的抑制は,形態計測値の変化と思春期開始時に撤去されていることから効果が得られたとはいいがたい。さらに,撤去時,下顎骨の成長と前歯部歯軸で後戻り傾向が認められ,チンキャップ適用への再検討の必要性が示された。