著者
及川 真司 Song Sung-Jun 前山 健司 岸本 武士 戸村 健児 樋口 英雄
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.52, no.8, pp.551-557, 2003-08-05
参考文献数
10
被引用文献数
4 8

海洋環境における放射能モニタリングに海産生物試料を応用することを視野に入れ,日本近海で採取したスルメイカ中に含まれる13元素(V, Mn, Fe, Co, Ni, Cu, Zn, Ru, Ag, Cd, Cs, Ba, Pb)を,前処理後,誘導結合プラズマ質量分析法によって定量する方法を検討した.このうち,放射能モニタリングを行う上で特に重要であると考えられる9元素(V, Mn, Fe, Co, Cu, Zn, Rb, Ag, Cd)については,中性子放射化分析法によって分析値を比較した.その結果,両者は誤差の範囲内で一致し,誘導結合プラズマに特有な分子イオン形成やマトリックス効果等の影響は見られず,誘導結合プラズマ質量分析法による定量値の妥当性を確認した.この方法で1996年に千葉・銚子沖で採取したスルメイカの可食部,骨部,胃,肝臓及びその他の部位に含まれる上記13元素を定量し,海水に含まれる標準的な濃度と比較することによって濃縮係数を算出した.定量した重金属元素のうち,Mn, Fe, Co, Cu, Ag, Cd及びPb等の肝臓への濃縮が顕著であることが分かった.また,同じ部位であってもZn, Rb及びCsは濃縮係数に差がほとんど見られなかった。一方,その他の元素は同じ部位であっても濃縮係数に差が見られた.本研究で得られた結果から,回遊性のスルメイカが海洋環境の重金属や放射能汚染のための環境影響評価に利用できる天然の指標生物になると考えている.
著者
三浦 勉 森本 隆夫 早野 和彦 岸本 武士
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.245-249, 2000-04-05
被引用文献数
9 29

キレートディスク(3M Empore^<TM> chelating resin disk)を用いた水試料中ウランの予備濃縮分離法を開発した. ウランを100 mM酢酸アンモニウム, 1 mM DCTA, pH 5.0, 流量100〜150 ml min^<-1>の条件でキレートディスクに選択的に捕集(回収率: 100±1.6%)し, 2 M硝酸7.5 mlで溶離する. 試料21を用いて200倍の濃縮が可能であり, 濃縮操作は約20分で終了する. 海水中のウランの定量では, 試料11当たり0.3 molの硫酸ナトリウムを添加することで回収率の低下を改善できた. 本法を用いて海水, ミネラルウォーター中のウランをICP-AESで定暈した. 海水中ウランの定量値は3.1±0.058 μg l^<-1> (n=3)であり, ICP-MS, α線スペクトロメトリーによる結果と一致した. ミネラルウォーター中のウラン濃度は<0.1-1.7 ug l^<-1>であった.