著者
佐藤 知樹 藤本 司 大滝 博和 佐藤 隆一 岸本 浩次
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.287-294, 2002-09-25 (Released:2009-06-05)
参考文献数
22

両側頸動脈永久結紮ラットを用い,黄連解毒湯,当帰芍薬散の脳虚血性障害出現への影響を検討した.虚血手術の14日前から薬物を連日直接胃に注入し,術後も30日間同様に投与した.途中で死亡した場合はその時点で脳を摘出し,生存例は30日後に動脈採血後脳を摘出した.脳はHE染色,トルイジンブルー染色,組織化学染色(VEGF, bFGF, ER, PgR)を行ない,エストローゲン(E1,E2,E3)の血中濃度を測定した.黄連解毒湯,当帰芍薬散,蒸留水投与群の急性期の死亡率は3/13(23%),5/12(42%),5/12(42%)であり,生存例中脳梗塞巣を認めたのは0/7(0%),1/7(14%),5/7(71%)であった,VEGF,bFGF陽性細胞はともに梗塞巣周辺部(penumbra)で増加していたが,程度や分布は群間で差を認めなかった.血中エストローゲン濃度,ER,PgR陽性細胞出現頻度,分布にも群間に有意な変化を認めなかった.黄連解毒湯,当帰芍薬散の脳虚血障害への防御効果が示唆された.