著者
木村 真理 渡邉 映理 岸田 聡子 今西 二郎
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学 (ISSN:13452894)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.268-282, 2012-03-31 (Released:2017-01-26)

【目的】健常成人女性を対象に,鎮静,または覚醒作用が期待される精油を用いてハンド・フットマッサージを実施し,心身への効果の違いを検討するため試験を行った.【方法】対象者は,試験説明を行って同意を得られた22-30歳の健康成人女性16名であり,精油なし,真正ラベンダー2.5%+ゼラニウム2.5%(LA/GE),ペパーミント2.5%+レモングラス2.5%(PE/LE)の3条件で,30分間のハンド・フットマッサージを1名ずつ実施した.試験デザインは無作為化クロスオーバー対象比較試験とした.対象者は心拍計を装着し,10分間安静,30分間の施術,10分間安静の順で試験を行い,心拍変動解析によりHF値,LF/HF比を算出した.また,施術前・中・後(10分安静後)の3回唾液を採取し,コルチゾール(CS)濃度,イムノグロブリンA(IgA)濃度を分析,測定した.施術前後の2回,心理質問紙への記入を行った.【結果】二元配置分散分析により,施術中30分に「LA/GE」条件では,HF値の上昇,LF/HF値の低下が,逆に「PE/LE」条件ではHF値の低下,LF/HFの上昇が見られた.また,施術後10分に「LA/GE」及び「PE/LE」条件でCS濃度が大きく低下した.心理指標は「精油なし」条件と比較して「LA/GE」条件で,否定的感情を示す得点が大きく低下し,「PE/LE」条件では,肯定的感情は「精油なし」と比較してより大きく上昇し,他の2条件に比べて疲労度が最も低下した.また,LF/HFやCS濃度,IgA濃度は対象者の月経周期,自覚的健康度に強く影響されており,これらを被験者間因子として二元配置分散分析を行うと,3条件によるCS,IgAの施術前・中・後の動きが有意に異なることが示された.【結論】健常成人女性にハンド・フットマッサージを施すと,精油の使用によって心身への効果がより高まり,精油の種類により,同じ手技のマッサージを行っても異なる効果が得られることが示された.アロマセラピー・ハンド・フットマッサージにおいて鎮静作用や覚醒作用を有する精油を使い分けることは,女性特有の症状緩和のために有効であると思われる.