著者
峰崎 岳夫 梅田 秀之
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

近年の研究によりガンマ線バーストは大質量星の重力崩壊による極超新星に伴う現象であることが次第に明らかになってきた。したがって初期宇宙で発生したガンマ線バーストを用いて星と銀河が生まれ始めた太古の宇宙を解き明かすためには、ガンマ線バーストに付随する極超新星現象の諸性質、発生条件などを理解することが重要である。しかしながら極超新星に関する研究は始まったばかりで極超新星およびガンマ線バースト現象の理解のためには、詳細な観測が可能な近傍の極超新星やガンマ線バースト残光の研究が欠かせない。そこで本研究では近傍で発生した極超新星ないしその候補の可視〜近赤外線の多波長モニター観測を遂行し、精密な光度曲線データをもとに個々の事例について理論モデルを構築して超新星の諸性質(爆発エネルギーや親星の質量など)を求めることを目的としている。Ib型超新星SN 2008Dは2008年1月9日にSwift XRTによって偶然にもX-ray transientとして発見された大変貴重な超新星であり、そのX線放射は超新星のショックブレークアウトに伴うものともガンマ線バーストやX線フラッシュの低エネルギー版とも言われている。本研究課題に基づき、1月12日から100日以上にわたって東京大学ビッグバン宇宙国際研究センター2m望遠鏡を用いてこのSN 2008Dの可視近赤外線モニター観測を行い、精密な多波長光度曲線を得ることができた。このデータから求めた輻射光度曲線とスペクトルの情報を理論モデルで解釈することにより、SN 2008Dが爆発エネルギーや親星質量の観点から極超新星と通常の重力崩壊型超新星の中間的な性質を持つことが示された(Tanaka et.al. 2009 ApJ, 692, 1131 ; Minezaki et.al. in preparation)。