著者
吉田 敬 高村 明 梅田 秀之
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究ではr-processやνp-processなど重元素合成に関するネットワークの拡張やニュートリノ駆動風におけるこれら重元素合成の計算を行い,r-processのベータ崩壊率に対する依存性や極超新星のニュートリノ駆動風におけるνp-processについて調べた.しかしニュートリノ自己相互作用については動径方向近似での計算は可能となったが角度依存性の導入や最終的な定式化には至らなかった.そのため今後も研究を継続していきたい.超新星元素合成についてはニュートリノ元素合成で作られるフッ素の銀河化学進化や超巨大質量星を起源とする極超新星における元素合成の特徴を明らかにした.
著者
吉田 敬 梅田 秀之 高橋 亘 石徹白 晃治
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会講演概要集
巻号頁・発行日
vol.71, pp.315, 2016

<p>我々から数100pc離れた近傍で超新星爆発が起こる時,爆発前から親星での核燃焼によって生成されるニュートリノを現行及び将来のニュートリノ検出器で検出することが期待できる.そして,ニュートリノイベントの時間進化から爆発直前の星の燃焼過程を推定できる可能性がある.本講演ではKamLAND, JUNO, Hyper-Kによる前兆ニュートリノ観測から得られる爆発直前の星の燃焼過程の情報について議論する.</p>
著者
梅田 秀之
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-10-20

電子捕獲型超新星とは重力崩壊型の超新星のうち最も質量が軽い星の爆発である。一般に星の数は軽い星ほど多いため、この型の超新星が実在するのであれば超新星の光度曲線などの観測にも、元素の起源に関しても重要なはずであるが、これまでそれらの研究対象としてあまり考えられて来なかった。その主な理由の一つは、より重い鉄の核を形成するものとその進化過程が大きく異なり複雑なため親星の計算がほとんどなされていなかった事があげられる。今回我々はほぼ30年ぶりにその進化計算を更新された物理を用いて計算することができた。この親星モデルを爆発させることにより、今後この超新星に関する理解が深まることが期待できる。
著者
峰崎 岳夫 梅田 秀之
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

近年の研究によりガンマ線バーストは大質量星の重力崩壊による極超新星に伴う現象であることが次第に明らかになってきた。したがって初期宇宙で発生したガンマ線バーストを用いて星と銀河が生まれ始めた太古の宇宙を解き明かすためには、ガンマ線バーストに付随する極超新星現象の諸性質、発生条件などを理解することが重要である。しかしながら極超新星に関する研究は始まったばかりで極超新星およびガンマ線バースト現象の理解のためには、詳細な観測が可能な近傍の極超新星やガンマ線バースト残光の研究が欠かせない。そこで本研究では近傍で発生した極超新星ないしその候補の可視〜近赤外線の多波長モニター観測を遂行し、精密な光度曲線データをもとに個々の事例について理論モデルを構築して超新星の諸性質(爆発エネルギーや親星の質量など)を求めることを目的としている。Ib型超新星SN 2008Dは2008年1月9日にSwift XRTによって偶然にもX-ray transientとして発見された大変貴重な超新星であり、そのX線放射は超新星のショックブレークアウトに伴うものともガンマ線バーストやX線フラッシュの低エネルギー版とも言われている。本研究課題に基づき、1月12日から100日以上にわたって東京大学ビッグバン宇宙国際研究センター2m望遠鏡を用いてこのSN 2008Dの可視近赤外線モニター観測を行い、精密な多波長光度曲線を得ることができた。このデータから求めた輻射光度曲線とスペクトルの情報を理論モデルで解釈することにより、SN 2008Dが爆発エネルギーや親星質量の観点から極超新星と通常の重力崩壊型超新星の中間的な性質を持つことが示された(Tanaka et.al. 2009 ApJ, 692, 1131 ; Minezaki et.al. in preparation)。