著者
時永 神三 森保 洋 宮崎 明雄 島津 宣之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.1793-1800, 1996-11-25
被引用文献数
36

本論文では,時系列がフラクタル的な性質をもつ場合に,これを利用した予測手法を展開し,予測誤差の検討,フラクタル次元の推定,および応用例について示す.まず,時系列をスケール関数の展開形式で表現されたインパルス応答と入力信号との畳み込みにより表現するモデルを仮定し,時系列にフラクタル性がある場合には時間軸の伸長に対してインパルス応答が自己相似的な性質を保持するので,これを用いた予測が可能であることを示す.いくつかのフラクタル次元をもつ時系列について1時刻先の予測誤差が小さくなることを示すと共に,n時刻先の予測についても適応的な手段により求めた予測値を逐次的に観測値として用いた場合の予測誤差を小さくできることを述べる.また,与えられて時系列の共分散行列およびスペクトル形状に基づきフラクタル次元を推定する方法についても述べる.応用例として株価のオプション価格の比較分析をあげ,本論文の手法を用いた戦略の結果が良好であることを示す.