著者
下村 道子 島田 邦子 鈴木 多香枝
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.27, no.7, pp.484-488, 1976-10-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
5

魚肉 (マアジ肉) を純水, 2%食塩水その他の溶液中で30℃から100℃の間, 10度間隔の温度で加熱した場合の魚肉の変化を調べた.結果は次のようである.1) 加熱溶液へのたんぱく質の溶出は, 40℃から50℃にかけて増加し, 50℃から60℃では, あまり変らないか, また減少する場合も見られ, 60℃から70℃では再び増加がみられた 食塩水やしょうゆ水では, たんぽく質の溶出率が高くなり, 清酒を加えると, やや抑えられる傾向がみられた.2) 加熱溶液が水の場合, そのアミノ酸分析においてエキス分に含まれているアミノ酸とともに, 90℃で加熱した場合にはゼラチンに由来すると思われるアミノ酸が多く含まれていた.3) 加熱した魚肉の硬さは, 40℃から50℃にかけて著しく減少し, 50℃付近で最低となり, 60℃より100℃まで漸次増加した.調味料の影響はあまりみられなかった.4) 魚肉の凍結切片を水, 食塩水, 酒水および魚類用塩類溶液に入れ, 加熱し顕微鏡で観察したところ, 水では40~50℃で筋せんいの収縮が始まり, 70℃までさらに凝集がすすむのがみられた. 60℃をすぎると結締組織の溶解がみられた 食塩水に切片を入れると, 筋せんいは溶解したように拡がり, 加熱による変化はあまりみられなかった. 酒水では, 加熱しなくても筋せんいの収縮がみられ, 低湿でも変性が起こると思われた. 魚類用塩類溶液では, 食塩水に似た変化がみられた.
著者
下村 道子 島田 邦子 鈴木 多香枝 板橋 文代
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.24, no.7, pp.516-523, 1973-11-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
10
被引用文献数
1

1) 官能検査においてしめさばとして好まれたものは塩じめ時間の短かいときは食塩量の多い方が, 塩じめ時間の長いときは食塩量の少ないものが好まれた.2) 塩じめによる食塩の魚肉への浸透は食塩量が多い場合に表面と内部ではかなりの濃度差を生ずるが, これを1時間酢じめにすることによって, 表面に近い部分の食塩は溶出し, 一部はさらに内部に浸透し, 全体で平均化してくる.官能検査の結果と比較してみると食塩濃度2.5%ぐらいのものが好まれている.3) 魚肉の塩じめによる硬さは, 食塩量と塩じめ時間によるものであり, 硬さの測定値は頭部, 尾部が高く, 胴部が低いが, これは生の状態で残っている部分が柔らかくこの影響によるものと考えられる.官能検査で好まれたものは, 表面がしまり, 内部が一部柔らかいもので, 柔らかすぎるもの, 硬すぎるものは好まれなかった.カードメーターによる硬さの測定値と塩じめによって変色した部分の割合との間に有意な相関関係がみられた.4) しめさばの重量は, 塩じめによって減少する.そして, 酢に浸漬することによって, 食塩の少ないものは重量が増加し, 食塩の多いものはさらに減少した.重量の増加するものは, 表面が柔らかく, 官能検査においても好まれなかった.