著者
内田 信之 岡山 健次 半田 祐一 崎村 恭也 倉根 理一 小久江 浅二 横田 修 山根 清美 小林 逸郎
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.48-53, 1985-01-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
13
被引用文献数
1

アルコール性肝硬変症の41才,男性に,突然両下肢の著明な筋力低下と筋痛が出現した. Creatine phosphokinase(CPK)はじめ血清酵素値の高度の上昇と,筋生検にて著明な筋細胞の壊死が認められ,本症例を横紋筋崩壊壊死(rhabdomyolysis)を伴う急性型アルコール性筋症と診断した.アルコール性筋症の臨床病型は,急性型,慢性型および潜在型に分類されており, rhabdomyolysisを伴う急性型は,最も重症で比較的稀とされている.本症例では, CPKの異常高値や独歩可能となるまでに10週以上を要したことより,これまでの報告例に比し, rhabdomyolysisが高度であつた希な症例と考えられた.また今回この症例に阻血試験(ischemicexercise test)を施行し,本症の発生機序に解糖系酵素の活性低下が関与している可能性を推察し,文献的考察を加えた.