著者
田崎 ゆかり 李 和容 崔 健平 アコスタ トマス J. 奥田 潔
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
日本繁殖生物学会 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.103, pp.55, 2010

【目的】黄体後期のウシ子宮由来プロスタグランジン F2&alpha; (PGF) は強力な黄体退行誘導因子として知られている。子宮の PGF と卵巣のオキシトシン (OT) の間には正のフィードバック機構が存在することが報告されている。しかし、我々はウシに OT アンタゴニストを PGF と同時に投与しても PGF の分泌は抑制されず、むしろ刺激されることを見出した。このことから PGF 分泌に OT は必須でなく、子宮で合成される PGF が局所調節因子として PGF 分泌に作用するという仮説をたてた。本研究では上記の仮説を証明するためにウシ子宮内膜における PGF 分泌への PGF の関与について多角的に検討した。【方法および結果】1) 発情周期各期 (排卵日: Day 0、黄体初期: Days 2-3、黄体形成期: Days 5-6、黄体中期: Days 8-12、黄体後期: Days 15-17、卵胞期: Days 19-21) の子宮内膜組織における PGF レセプター (<I>FPr</I>) mRNA およびタンパク発現を調べた。<I>FPr</I> mRNA 発現は黄体初期と比較して卵胞期に高く、タンパク発現は黄体初期と比較して黄体後期に高かった。また、黄体後期の子宮において FPr タンパク局在は子宮内膜上皮細胞、腺上皮、血管内皮細胞とその周辺ならびに子宮平滑筋にみとめられた。2) 黄体後期の子宮内膜組織における PGF 分泌におよぼす PGF (0.01-1 &mu;M) の影響を組織培養により検討し、EIA により解析した。PGF は黄体後期のウシ子宮内膜組織の PGF 分泌を濃度依存的に刺激した。また、PGF (1 &mu;M) の影響を黄体初期、中期および後期で比較したところ、黄体後期に強かった。さらに、PGF は単離したウシ子宮内膜上皮細胞における PGF 分泌を有意に促進したが、間質細胞に有意な影響をおよぼさなかった。【総括】ウシ子宮内膜によって合成される PGF が局所調節因子として子宮内膜上皮細胞における PGF 分泌を刺激する「自己増幅機構」の存在すること、また、ウシ子宮における PGF の自己増幅は黄体後期に強いことが示唆された。