- 著者
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山口 正義
谷 哲弥
加藤 容子
- 出版者
- 日本繁殖生物学会
- 雑誌
- 日本繁殖生物学会 講演要旨集
- 巻号頁・発行日
- vol.108, pp.P-92-P-92, 2015
【目的】哺乳動物では,個体が老化するにつれて生殖能力が低下する。すなわち,雌では,個体の老化に伴い卵子の老化も生じているためである。卵子の老化には,核(染色体)と細胞質中因子の両者に生じる様々な変異が含まれており,一度生じた卵子の老化を消去することは困難で,老齢個体から採取した卵子を若返らすことは容易にはできない。一方,近年,母体の栄養状態や給餌内容(栄養素)が,母体の生殖能力に影響を及ぼすことが相次いで発表されている。そこで,本研究では,老齢マウスの生殖能力を経時的に検討するとともに,給餌内容が母体の老化に影響を及ぼすかどうか予備的に検討したので報告する。 【方法】実験1)ICR系マウスを用い,通常の方法で飼育した6週齢(若齢),12~13週齢(適齢),38~50週齢(老齢)雌マウスを用い,雄マウスとの自然交配率,過剰排卵処理に対する感受性や採卵数,得られた卵子の体外発生能,また,臓器の重量計測等を行った。実験2)給餌内容が母体の生殖能力に影響を及ぼすかについて,抗酸化作用等がありヒトの健康に良いとされる4種類の農産品乾物を加えた飼料を与え,老齢まで飼育し,添加物が母体や卵子の老化に影響を与えるかどうかを予備的に検討した。 【結果】実験1)老齢マウスでは,他の2区と比較して,自然交配率が極めて低く,採卵数も極めて少なかった。しかしながら,得られた卵子については,単為発生刺激後,胚盤胞まで発生することが分かった。 実験2)添加物を給餌するために,飼料の形態を検討した結果,粉末飼料を与えることが適切であることが分かった。飼料添加物としては,まずは既報を参考に,ゴマ,キナコ,日本茶,クズを検討した。現在,経時的に観察,ならびに,給与した個体や卵子の生殖能力について検討中である。