著者
広江 一正 富塚 常夫
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
家畜繁殖研究會誌 (ISSN:04530551)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.95-99, 1965-11-30 (Released:2008-05-15)
参考文献数
21

1.牛精漿中の化学成分含量の測定を行なった。果糖713±246.0,総窒素813±167.0,アスコルビン酸8.6±1.52,酸溶性総リン35.3±6.34,カルシウム30.9±11.05.ナトリウム267±39.8,カリウム124±61.1,および塩素154±26.9mg/100ml精漿。また同時に山羊,馬,豚,兎についても測定を行なった。2.牛精漿中の総窒素,アスコルビン酸,酸溶性総リン,カルシウム,ナトリウム,カリウムでは果糖と同じく季節的な量的変化は見られなかった。3.3回続けて精液採取を行なったある1頭の牛の例では,果糖および総窒素は次第に増加の傾向を,アスコルビン酸,酸溶性総リン,カルシウムは次第に減少の傾向を示した。4.尿導球腺液および精のう液についてその化学成分含量の測定を行なった。尿導球腺中の成分含量は精液に比べて非常に少なかったが,精のう液中の成分含量は精液中の含量よりも若干多かった。このことは電気刺激射精法で採取した精液中には尿導球腺液が混入していることを示すものと考えられた。
著者
上村 俊一 佐藤 邦忠 小野 斉 三宅 勝
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
家畜繁殖学雑誌 (ISSN:03859932)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.85-92, 1977-09-30 (Released:2008-05-15)
参考文献数
38

1.54例のホルスタイン種乳牛と1例の短角牛の計55例に,副腎皮質ホルモンによる流産ならびに分娩誘発を試みたところ,妊娠日数60~135日の6例中3例が無効だったほかは,いずれもデキサメサゾン,ベタメサゾン10~20mg,1~3回注射で流産あるいは分娩誘発に成功したが,67.3%に胎盤停滞が発生した。2.妊娠日数250~275日の3例,277~338日の6例ならびに自然分娩牛(対照)8例の計17例について,分娩前後の血中性ステロイドホルモンをRIA法で測定した結果,奇形児妊娠(長期在胎)牛の分娩前血中エストロジェン値の低いことが注目された。3.分娩予定日の7~10日前に分娩させた6例のウシの1乳期の乳量を,試験前及び試験後の産次の乳量と比較したところ,試験時産次の乳量は試験前産次の乳量より平均600kg近い減乳であったが,試験後産次の乳量との比較ではほとんど増減はなかった。4.分娩誘発が次回受胎率に及ぼす影響を自然分娩牛の場合と比較してみたが,差はみられなかった。
著者
若山 照彦 幸田 尚 小保方 晴子 野老 美紀子 リ チョン 寺下 愉加里 水谷 英二 グェン ヴァン トン 岸上 哲士 若山 清香 石野 史敏
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
日本繁殖生物学会 講演要旨集 第106回日本繁殖生物学会大会
巻号頁・発行日
pp.P-102, 2013 (Released:2013-09-10)

【目的】哺乳動物のクローン作出は,優良家畜の大規模な生産や絶滅危惧種の保全を可能にする新しい技術として期待されてる。しかし現在の成功率では一度に大量のクローン動物を作ることは出来ないため,クローン動物の体細胞から再びクローン動物を作り出す連続核移植(再クローニング)技術が必要だと考えられていた。ところがこれまでの報告では,再クローニングを繰り返すごとに出産率は低下し,マウスで6世代,ウシやネコで2世代までが限界だった。この原因は,クローン技術特有の「初期化異常」が,核移植を行うたびに蓄積するためと考えられていたが,成功率が低すぎるため検証できていなかった。そこで今回我々は,最新の技術を用いて再クローニングに限界があるのか確かめてみた。 【方法】我々は2005年にトリコスタチン A(TSA)が初期化を促進し,クローンマウスの出産率を大きく改善できることを発見した。そこでTSAを用いて1匹のドナーマウス(BD129F1)からクローンマウスを作り(G1と呼ぶ),このクローンマウスが3カ月齢になった段階で再びクローンマウスを作製した(これをG2と呼ぶ)。以降これを繰り返した。生まれた再クローンマウスについて,テロメアや妊性,網羅的遺伝子発現などを調べ,自然マウスおよびG1クローンマウスと比較し,エピジェネティック異常が蓄積されるか調べた。 【結果】現時点で27世代,合計645匹のクローンを作ることに成功している。核移植の出産率は1世代目の7%から上昇傾向を示し,最高で15%を記録している。G20クローンの繁殖能力,寿命,テロメアの長さなどに異常は見られなかった。また網羅的遺伝子発現解析により核移植を繰り返しても初期化異常は蓄積しないことが明らかとなった。これらの結果は,再クローニングはほぼ無限に繰り返せることを示している。Wakayama et al., Cell Stem Cell 2013.
著者
Yolanda SEGOVIA Noemí VICTORY Irene PEINADO Laura M GARCÍA-VALVERDE Magdalena GARCÍA Jon AIZPURUA Ana MONZÓ María José GÓMEZ-TORRES
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
Journal of Reproduction and Development (ISSN:09168818)
巻号頁・発行日
pp.2017-009, (Released:2017-04-30)
被引用文献数
11

The development of an effective program that combines in vitro maturation (IVM) and cryopreservation for immature oocytes would represent a novel advance for in vitro fertilization (IVF), especially as a means to preserve the fertility of women in unique situations. The aim of this study was to analyze the ultrastructural characteristics of human oocytes, obtained after controlled ovarian stimulation, to determine whether IVM is best performed before or after vitrification. To this end, we analyzed the following features in a total of 22 MII oocytes: size, zona pellucida and perivitelline space, mitochondria number, M-SER (mitochondria-smooth endoplasmic reticulum) aggregates and M-V (mitochondria-vesicle) complexes, the number of cortical granules and microvilli, and the presence of vacuolization using transmission electron microscopy (TEM). Each oocyte presented a rounded shape, with an intact oolemma, and was surrounded by a continuous zona pellucida and perivitelline space. Statistical analysis comparing oocytes vitrified before or after IVM indicated that there were no significant differences between examined characteristics.
著者
広江 一正 富塚 常夫
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
家畜繁殖研究會誌 (ISSN:04530551)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.27-31, 1965-05-30 (Released:2008-05-15)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

ホルスタイン種雄子牛6頭について,生後5ヵ月から17カ月までの間,電気刺激射精法によって毎週1回精液採取を行ない,精液一般性状検査並びに精漿成分含量の測定を行なった,その結果は次の如くであった。1.春機発動期(puberty)は生後8.5カ月であった。2.精液量が2.5ml以上になったのは生後12カ月,精子濃度が1ml中4億以上になったのは13カ月,総精子数が10億以上になったのも同じく13カ月であった。また精子生存指数が50以上になったのは11カ月であった。3.pHは生後6カ月まではアルカリ性(8.0以上)を示したが,その後次第に中性となり,10カ月以降は6.8以下となった。4.精漿中に果糖がはじめて認められたのは生後5.3カ月であった。5. 果糖および総窒素が500mg/100ml以上に,またカルシウムが19.5mg/100ml以上になったのは生後9カ月であった。酸溶性総リンが35.0mg/100mlになったのは13カ月,アスコルビン酸が6.5mg/100m,l以上になったのは14カ月であった。6. 塩素はpHと同じ傾向を示し,8カ月までは多量に存在したがその後次第に減少し,270mg/100ml以下となったのは11カ月であった。7.ナトリウムとカリウムは生後6カ月から17カ月までの間,特に増減を示さず,ほぼ同じ量を示した。8.以上の結果から綜含して,ホルスタイン種雄牛の性成熟期は生後13~14カ月と認められる。
著者
小野 哲男 水谷 英二 李 羽中 菓子野 康浩 若山 照彦
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
日本繁殖生物学会 講演要旨集 第102回日本繁殖生物学会大会
巻号頁・発行日
pp.1033, 2009 (Released:2009-09-08)

【目的】葉緑体は植物や藻類にみられる細胞内小器官だが、その起源はシアノバクテリアの一種と考えられており、10数億年前に真核生物に1度だけ細胞内共生(1次共生)して葉緑体になったといわれている。本実験では、シアノバクテリアをマウス卵に注入することで人為的に一次共生を再現し、共生の条件検討および胚発生に与える影響を調べた。【方法】まず、注入用培地の検討を行うため、シアノバクテリア(Synechocystis sp. PCC 6803)を10%PVP-H-CZB、H-CZB、NIMに懸濁後、1個、5-10個、20個、それ以上(~100個)をB6D2F1マウスの未受精卵に注入し、生存率、単為発生後の発生率および注入数の影響を調べた。次に注入先の環境の影響を調べるために、未受精卵、単為発生胚(1nあるいは2n)、および受精卵へ注入し、同様な観察を行った。受精卵については細胞質内だけでなく前核内への注入も試みた。注入後に胚盤胞期まで発生した胚は培養を継続し、シアノバクテリアを細胞内にもつES細胞の樹立を試みた。【結果】シアノバクテリアはマニュピュレーターで卵子内へ注入可能であり、またクロロフィルの自家蛍光により染色なしで存在を観察できた。注入用培地の違い、および受容する胚の違いによる胚発生への影響は見られなかった。しかし注入数に関係なく胚の中でシアノバクテリアの増殖は見られず、50個以上のシアノバクテリアを注入した胚の多くは発生が阻害された。さらに、胚盤胞期でシアノバクテリアの存在が確認された胚からES細胞の樹立を試みたが、細胞内にシアノバクテリアの存在が確認できたものの、ここでもやはり増殖は見られなかった。また、発生過程でのシアノバクテリアの細胞質内分布はランダムで、細胞分裂に伴って各娘細胞へ伝わっているのが観察された。今後培養温度や、培養中に光合成可能な光を当てるなどさらなる改良を加えることで卵子内のシアノバクテリアを増殖させることができれば、葉緑体マウスの作出も可能になるかもしれない。
著者
向居 彰夫 岡本 昌三
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
家畜繁殖研究會誌 (ISSN:04530551)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.19-21, 1959-07-10 (Released:2008-05-15)
参考文献数
4

MARDEN(1954)の報告に基き電極(直径4.7cm,長さ33cmの木製円柱の周囲に幅0.85cm,長さ27.5cmの4枚の銅板を90°の間隔ではめ込み,相対する銅板を同極となるよう接続する)及びパルス発生装置(パルスの周波数及び電圧を0~70c/s,0~10Vの連続可変とした最大出力約7W,インピーダンス6~10Ω)を作り25~30c/sの電流を用いて2秒通電,1秒切断を反復しながら電圧を0.7V程度から牛体の反応に応じて徐々に上昇させると,0.7~3.2Vでペニスが勃起し,3.9~6.4Vで射精が開始され,更に数回の反復刺戟によつて良好な精液を得ることに成功した。
著者
前多 敬一郎 大倉 永也 内田 恵美 束村 博子 横山 昭
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
家畜繁殖学雑誌 (ISSN:03859932)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.153-158, 1988 (Released:2008-05-15)
参考文献数
17

乳子による吸乳刺激の代用としての乳腺神経の電気刺激の有用性を検討するため泌乳あるいは発情周期中の雌ラットの乳腺神経をウレタンあるいはチオペンタール麻酔下で電気刺激し,それぞれオキシトシン(OT)と黄体形成ホルモン(LH)の分泌に及ぼす影響を調べた。泌乳ラットにおける乳腺神経の電気刺激はOTの分泌を促進した。しかし,この電気刺激は発情周期中にあるラットにおいてもそのOTの分泌を増加させた。さらに,伏在ならびに正中神経の電気刺激も泌乳及び正常発情周期中のラットにおいて血中OT濃度を増加させた。これらの神経の電気刺激による血中OT濃度の変化はすべて類似していた。しかし,乳子による吸乳時にみられるような変化とは異なっていた。泌乳ラットにおけるチオペンタール麻酔下における乳腺神経の電気刺激は伏在神経の電気刺激に比較して平均血中LH濃度およびLHパルスの頻度並びに振幅を抑制した。以上の結果から,乳腺神経あるいは他の神経の電気刺激が非特異的に働いてオキシトシン分泌を促進したと考えられる。しかし,LH分泌に関しては伏在神経刺激対照群に比較して乳腺神経の電気刺激により強く抑制されたことから,乳腺神経刺激が吸乳刺激に変わる刺激として用いられる可能性は残されていると考えた。
著者
木下 こづえ 稲田 早香 浜 夏樹 関 和也 福田 愛子 楠 比呂志
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
日本繁殖生物学会 講演要旨集 第102回日本繁殖生物学会大会
巻号頁・発行日
pp.1034, 2009 (Released:2009-09-08)

【背景】ユキヒョウは単独性の季節多発情型交尾排卵動物であるにもかかわらず、国内の飼育下個体群は主に施設面での制約のため雌雄を通年で同居させている場合が多い。このような本来の生態とは異なる状態で飼育すると、繁殖を含めた様々な生理面に悪感作が生じると考えられるが、これを科学的に証明した報告は少ない。そこで本研究では、飼育方法の違いが雌の繁殖に及ぼす影響を内分泌学的側面から詳細に検討した。【方法】妊娠歴のある2頭の雌AとBおよび妊娠歴のない雌Cをそれぞれ2007年4月から1年間および2006年6月から3年間にわたって供試した。前2者は雄と通年別居飼育を行い、本種においてエストラジオール-17β(E2)と正の相関関係にある発情行動(Kinoshitaら, 2009)が見られた日にのみ雄と同居させた。Cについては研究1年目は雄と通年同居飼育を行い、2年目は発情行動が見られてから雄との同居を始め、3年目は再度通年で同居飼育を行った。研究期間中週2~7回の頻度で新鮮糞を採取し、その中に排泄されたE2およびコルチゾールの含量をKinoshitaら(2009)の方法に準じてEIA法で測定した。【結果】通年同居飼育を行わなかった場合の年間糞中E2濃度の変動幅は、雌A、BおよびCがそれぞれ0.13~5.44、0.11~12.03および0.19~13.05μg/gであり、Aは1月からBとCは10月から上昇し始め、3頭ともで上昇期間中に交尾行動が確認された。一方、通年同居飼育を行ったCのE2濃度は、初年度が0.11~6.45で、3年目が0.07~4.44μg/gであり、ともに通年同居飼育を行わなかった2年目よりも低く明確な上昇も見られず、常に雄が居たにもかかわらず両年とも交尾行動はなかった。またCにおいて、通年同居を行った年の糞中コルチゾール濃度は0.26~11.20μg/gの範囲で変動し、通年同居飼育を行わなかった年の0.05~6.58μg/gに比べて有意に高い値を示した。以上の結果から、ユキヒョウでは本来の生態に反する通年同居飼育を行うと個体にストレスが掛り、繁殖能力も低下する可能性が高く、種の保存を目的とした飼育下個体群管理には別居飼育が有用であると考えられた。
著者
Midori YOSHIZAWA Masaru TAKADA Satoshi NAKAMOTO Takashi MURAMATSU Akira OKAMOTO
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
Journal of Reproduction and Development (ISSN:09168818)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.115-122, 1993 (Released:2008-05-15)
参考文献数
33
被引用文献数
10 14

Superovulated eggs in (BALB/c×C57BL/6) F1 and ICR (outbred in a closed colony) female mice were fertilized in vitro with spermatozoa obtained from caudal epididymides of ICR males. Air-dried chromosome preparations were made from colcemid-primed 1-cell eggs and stained by the C-banding method. The fertilization rate was lower in F1 eggs than in ICR eggs (88 vs. 92%, P<0.02). The incidence of metaphase ("syngamy") eggs was higher in F1 eggs, and the incidence of pronuclear and late prometaphase ("pre-syngamy") eggs was higher in ICR eggs (P<0.001, P<0.005), showing delayed progress of the first cleavage in the ICR eggs. Developmental rates from 2-cell to 4-cell stage and from morula to blastocyst stage were significantly lower in ICR eggs (P<0.001) than in F1 eggs. These results show that a delay of embryo development had already appeared before male and female genomes fused (pre-syngamy). The incidence of triploidy, which might be caused by dispermy, was higher in F1 eggs, in both the pronuclear and mitotic stages (P<0.001). A little aneuploidy and structural aberration of chromosomes occurred in both F1 and ICR eggs, and no significant difference was observed between F1 and ICR eggs. The sex ratio at the first cleavage stage in both F1 and ICR eggs showed no significant deviation from equality.
著者
丸山 宏二
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
家畜繁殖学雑誌 (ISSN:03859932)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.145-154, 1991-09-25 (Released:2008-05-15)
参考文献数
32

マストミス Praomys(Mastomys)couchaの膣垢周期と発情周期の連関性を検討し,膣垢により判定した発情周期および妊娠期の各時期における血漿progesterone濃度の消長を追究して以下の成績を得た.1.成熟非妊娠マストミスの大半(70%)の発情周期では,多数の白血球と有核細胞から成る膣垢(LN期)が6~9日間隔で1~3日間にわたり出現した.LN期の2日前には小型の有核および角化細胞に白血球の混在する膣垢が,前日には有核および角化細胞のみから成る膣垢がそれぞれ観察され,LN期出現後は白血球主体の膣垢に移行した.排卵検査の結果,LN期出現の2日前,前日および1日目は,それぞれ発情前期(PE),発情期(E)および発情休止期第1日目(D1)に相当するものと判断された.2.PEおよびEが各1日,Dが5日間から成る7日周期中の血漿progesterone(P)濃度は,E以後増加してD1に頂値となり,D3には基底値に減少し,7日周期で形成された発情周期黄体からのP分泌は3日以内に減退することが知られた.3.Dが11~13日間持続する長周期のD7のP濃度は高く,7日周期D1の1.8倍で,この動物の示す長周期が偽妊娠である可能性が示唆された.4.妊娠中の血漿P濃度は,妊娠1日目から5日目にかけて増加し,以後7日目にかけて減少して12日目までは低く推移したが,13日目以後胎盤徴候の出現に一致して再び増加し,15~19日目にプラトー値に維持された後,分娩日にかけて急減するという二峰性の変化が観察された.
著者
渡辺 伸也 高橋 清也 赤木 悟史 水町 功子 松田 秀雄 米内 美晴 片山 努 横山 紅子 高橋 正弘 上田 淳一 長谷川 清寿 志賀 一穂
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
日本繁殖生物学会 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.99, pp.149, 2006

【目的】わが国では,多数の体細胞クローン牛が生産されており,これらの牛を対象とした一連の飼養・繁殖試験を通じ,雌雄のクローン牛の成長や繁殖に関する健全性のデータが収集されている。しかしながら,クローン牛由来乳のリスク評価に重要といわれる乳中アレルゲンに関するデータ収集は不十分である。本研究では体細胞クローン牛およびその後代牛が生産した乳中の&beta;-ラクトグロブリン(BLG)の遺伝的変異体(多型)のタイプ(ホルスタイン種では、通常、A型,B型およびAB型の3種類)を調査した。【方法】泌乳中の体細胞クローン牛:11頭(ホルスタイン種:9頭,黒毛和種:2頭),体細胞クローン後代牛:6頭(ホルスタイン種),5頭の体細胞クローン牛(ホルスタイン種)に共通のドナー牛:1頭および対照牛:17頭(ホルスタイン種:15頭、黒毛和種:2頭)より乳を採取し,その中に含まれるBLGのタイプをBLG特異的抗体(森永生化学研究所製)を用いたウエスタンブロット法で解析した。【結果と考察】調査したホルスタイン種におけるBLGタイプは,体細胞クローン牛で,A型:2頭,B型:1頭,AB型:6頭,後代牛で,A型:0頭,B型:2頭,AB型:4頭,また,対照牛で,A型:4頭,B型:4頭,AB型:7頭であった。ドナー牛とこの牛の体細胞より生産されたクローン牛(5頭)に由来する乳のBLGタイプは全て同一(AB型)であった。一方,調査した黒毛和種におけるBLGタイプは,体細胞クローン牛2頭 (同じ体細胞由来) で,ともにB型,対照牛で,A型:0頭,B型:1頭,AB型:1頭であった。以上の結果は,体細胞クローン操作が,生産されたクローン牛やその後代牛の乳中BLGにおける遺伝的変異体のタイプに影響を及ぼしていないことを示唆している。
著者
中嶋 紀覚 仲田 誠 杉尾 周平 佐野 大介 鈴鴨 知佳 伊藤 潤哉 猪股 智夫 柏崎 直巳
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
日本繁殖生物学会 講演要旨集 第100回日本繁殖生物学会大会
巻号頁・発行日
pp.20099, 2007 (Released:2007-10-17)

【目的】げっ歯類において,ホノルル法を用いた体細胞核移植によってクローン個体を作製するためには,核注入後1時間以内に早期染色体凝集(PCC)を起こし,2つ以上の偽前核を形成することが必要である。我々はラットの生体から卵管遊離した時間を起点として, 75分以内に核移植完了し,かつ卵子を除核前までMG132で処理することで,2前核形成を効率的に誘起できることを報告した(第54回実験動物学会)。本研究ではさらなる胚発生率の向上を目的として,MG132で一定時間処理したラット排卵卵子について最適な活性化処理時期を検討した。【方法】過剰排卵処置をした3-5週齢のWistar系雌ラットから排卵卵子を採取し,0.1% hyaluronidase および7 &micro;M MG132添加 R1ECM-Hepes中で卵丘細胞を除去した。その後,核移植完了までの時間(75分)および核注入後の培養時間(60分)を想定して卵子を7 &micro;M MG132添加R1ECMで135分間培養した。培養後,R1ECMでさらに培養を行い,直後,0.5,1.0,1.5時間後に3 &micro;M ionomycin + 2 mM 6-DMAPで活性化を誘起し,発生能を調べた。また,同時間MG132無添加R1ECMにて培養し,活性化処理したものを対照区とした。【結果】前核形成率および2細胞期率は,対照区に比べて全てのMG132添加区で高い値を示し,特にMG132添加培養後,無添加培地で1.5時間培養した区が最も高い値を示した。また,MG132添加培養し,直後および0.5 時間無添加培養した後に活性化処置を施した区では,胚盤胞形成が認められなかったのに対し,1.0 時間以上培養した区では胚盤胞の形成が認められた。以上のことから,排卵卵子をMG132で一定時間処理し,その後,無添加培地で1.0時間以上培養した卵子を活性化処理することにより,多くの卵子が高い発生能を有することが明らかとなった。今後は核移植を行い,ラット再構築胚の発生能を検討する予定である。
著者
岡本 昌三 石井 尚一 向居 彰夫
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
家畜繁殖研究會誌 (ISSN:04530551)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.22-24, 1959-07-10 (Released:2008-05-15)
参考文献数
8
被引用文献数
2 2

1)ジャージー種牡牛2頭を人工気候室(室温昼間32°C,夜間30°C,湿度55~60%)内に5週間収容して,うち1頭の陰嚢を流水をもつて冷却し,他の1頭は対照として無処置とし,その間の精液性状の変化を調べた。2)精液量は漸増し,精子濃度及び1射精当り総精子数は漸減して,特に第4~5週において著明な減少が認められ,この傾向には両区間に差が認められなかつた。3)活力,異常精子率及び精子生存日数については,対照区では著しく悪化し,精子の運動力を示すものなく,異常精子率は約90%にまで及んだが,冷却区ではほとんど変化が認められなかつた。4)以上の結果から造精機能の保持に対する陰嚢冷却の効果は期待されないが,精子の成熟過程における高温の有害作用はおおむね防除し得ると考えられる。
著者
Arata HONDA Atsuo OGURA
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
Journal of Reproduction and Development (ISSN:09168818)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.435-438, 2017 (Released:2017-10-18)
参考文献数
29
被引用文献数
8

Although the laboratory rabbit has long contributed to many paradigmatic studies in biology and medicine, it is often considered to be a “classical animal model” because in the last 30 years, the laboratory mouse has been more often used, thanks to the availability of embryonic stem cells that have allowed the generation of gene knockout (KO) animals. However, recent genome-editing strategies have changed this unrivaled condition; so far, more than 10 mammalian species have been added to the list of KO animals. Among them, the rabbit has distinct advantages for application of genome-editing systems, such as easy application of superovulation, consistency with fertile natural mating, well-optimized embryo manipulation techniques, and the short gestation period. The rabbit has now returned to the stage of advanced biomedical research.
著者
Masafumi KATAYAMA Takashi HIRAYAMA Tohru KIYONO Manabu ONUMA Tetsuya TANI Satoru TAKEDA Katsuhiko NISHIMORI Tomokazu FUKUDA
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
Journal of Reproduction and Development (ISSN:09168818)
巻号頁・発行日
pp.2016-164, (Released:2017-03-23)
被引用文献数
13

The cellular conditions required to establish induced pluripotent stem cells (iPSCs), such as the number of reprogramming factors and/or promoter selection, differ among species. The establishment of iPSCs derived from cells of previously unstudied species therefore requires the extensive optimization of programming conditions, including promoter selection and the optimal number of reprogramming factors, through a trial-and-error approach. While the four Yamanaka factors Oct3/4, Sox2, Klf4, and c-Myc are sufficient for iPSC establishment in mice, we reported previously that six reprogramming factors were necessary for the creation of iPSCs from primary prairie vole-derived cells. Further to this study, we now show detailed data describing the optimization protocol we developed in order to obtain iPSCs from immortalized prairie vole-derived fibroblasts. Immortalized cells can be very useful tools in the optimization of cellular reprogramming conditions, as cellular senescence is known to dramatically decrease the efficiency of iPSC establishment. The immortalized prairie vole cells used in this optimization were designated K4DT cells as they contained mutant forms of CDK4, cyclin D, and telomerase reverse transcriptase (TERT). We show that iPSCs derived from these immortalized cells exhibit the transcriptional silencing of exogenous reprogramming factors while maintaining pluripotent cell morphology. There were no observed differences between the iPSCs derived from primary and immortalized prairie vole fibroblasts. Our data suggest that cells that are immortalized with mutant CDK4, cyclin D, and TERT provide a useful tool for the determination of the optimal conditions for iPSC establishment.
著者
農林省農業技術研究所家畜部繁殖科 台湾省政府農林庁農業試験所畜産試験分所
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
家畜繁殖研究會誌 (ISSN:04530551)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.59-61, 1956-09-20 (Released:2009-08-14)
参考文献数
3

昭和29年即ち民国42年の夏に日本千葉市にある農林省農業技術研究所家畜部から台湾省台南の新化鎮にある台湾省農業試験場畜産試験分所及び台北市にある農林庁に牛及び豚の精液が空輸された。空輸時間は約7時間であつた。輸送状況及び結果は次の通りである。牛の場合は5回に亘つて4頭8例の精液をセミナンで4,5倍に稀釈し4℃の輸送器に入れて台南県下及び台北市に輸送された。精液採取より到着時の活力検査までの時間は23~49時間,採取から授精までの経過時間は24~55時間であつた。5回中1回は輸送器の温度が輸送中に上昇し,この精液は授精試験から除外された。輸送精液を22頭に各1発情だけ授精し7頭受胎,即ち31.8%の受胎率を得た。供試牝牛中には授精条件の不適なものが多く,授精適期の健康な牝牛を選定すれば更に良好な成績が期待出来ると思われる。豚の場合は3頭7例の精液を原精液にサルファ剤を添加しただけのもの,サルファ剤添加卵枸糖液で倍量に稀釈したもの,及びセミナンで倍量に稀釈したもので,15℃にして輸送した。精液採取より到着までの時間は23~49時間で,到着時の温度は発送時よりも5~11℃上昇していた。然し到着時の精子の活力は1頭を除く他の2頭で70~90 ?? の良好な成績が得られ,静置した対照と余り変る処がなく,充分授精の可能性があることを知つた。本実験では4頭に授精して2頭が受胎した。
著者
谷津 實 佐藤 光寛 小林 仁 大澤 健司 居在家 義昭
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
日本繁殖生物学会 講演要旨集 第105回日本繁殖生物学会大会
巻号頁・発行日
pp.226, 2012 (Released:2012-09-04)

【目的】蔵王キツネ村で飼育しているキツネには個体管理をするために、2011年から約200頭の全頭にマイクロチップを装着している。このキツネ群を安定的に維持するには、個体情報や血縁情報に基づく計画的な交配が必要である。我々は、これまでに電気伝導度の変化を指標とした雌キツネの交配適期の判定法(第104回日本繁殖生物学会)や電気刺激射精器を用いた雄キツネからの採精条件(第18回日本野生動物医学会大会)について明らかにしてきた。今回は、この方法を用いて採精した後の精液性状と凍結保存法、凍結精液を用いた人工受精後の分娩率について検討した。【方法】2012年1月~3月にかけて電気刺激射精器を用いて、延べ18頭から採精した。この内、生存精子が得られた延べ13頭について、EDTAをベースとした凍結保存試作液(EDTA-S)とウシ用凍結保存液(Cow-S)を用いて、精子数5×107/0.5mlストローに調整し、凍結保存した。Cow-Sで凍結融解した精液を10頭に人工授精、その後の分娩率について調べた。【結果及び考察】延べ13頭の精液量は100μl~500μlで、その平均は280.0±117.9μlであった。平均精子数7.8±1.8×108/ml, 総精子数は平均2.1±0.7×108であった。精子生存指数は43.8~95.8、平均83.6±16.6であった。凍結融解後の精子生存指数はEDTA-Sで2.1±2.5、Cow-Sで41.9±9.3であり、Cow-Sで有意(P
著者
若山 清香 岸上 哲士 若山 照彦
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
日本繁殖生物学会 講演要旨集 第100回日本繁殖生物学会大会
巻号頁・発行日
pp.20106, 2007 (Released:2007-10-17)

私たちは以前に、クローンマウスの体細胞(卵丘細胞)からでもクローンマウスを作出できることを報告した。しかし、クローンマウスの成功率は世代を経るたびに徐々に低下し、たった1匹の6世代目のクローンマウスも食殺され、7世代目以降のクローンマウスを作成することはできなかった。クローン牛の場合は2世代目までと報告されている。しかし、当時のクローンマウスの成功率は1-2%であり、コントロール実験ですら産仔の作出に失敗することがたびたびあり、再クローニングに失敗した原因が、再クローニングには限界があるのか、成功率の低さが原因で失敗しただけなのか結論できなかった。[方法] 近年われわれの研究室ではTrichostatin A(TSA)を培地に加えることによってクローンマウスの成功率を劇的に改善することに成功した。そこでTSAを用いて再クローン実験を再挑戦することにした。最初に1匹のBD129F1(BDF1 x 129/Sv:三元交配)をドナーマウスに選び、2-3ヶ月齢で卵丘細胞を採取して最初の世代(G1)のクローンマウスを作出した。G2以降、同様に繰り返した。[結果] 現在までに7世代目まで生まれており、合計すると100匹以上のクローンマウスが1匹のドナーマウスから生まれたことになる。クローンマウスの成功率は1世代目18.0%、2世代目5.0%、3世代目4.5%、4世代目7.4%、5世代目13.2%、6世代目7.0%、7世代目6.5%であり、世代間でのばらつきは大きいが、世代が進んでも成功率の低下は見られなかった。また、いずれの世代においても体重と胎盤重量、および産直死率は通常のクローンマウスと同程度だった。現在7世代目のマウスは多数生存しており、間もなく8世代目を試みる予定である。[考察] 7世代目までの結果で結論を出すことはできないが、少なくとも現時点では再クローニングによる成功率の低下は見られないことから、クローン作成技術をより向上させることに成功すれば、クローン動物を無限に作り続けることができるようになるのではないだろうか。
著者
Mohammad Musharraf Uddin BHUIYAN Yo SUZUKI Hiroyuki WATANABE Eunsong LEE Hiroki HIRAYAMA Koji MATSUOKA Yoshihiro FUJISE Hajime ISHIKAWA Seiji OHSUMI Yutaka FUKUI
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
Journal of Reproduction and Development (ISSN:09168818)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.131-139, 2010 (Released:2010-03-05)
参考文献数
40
被引用文献数
4 10

The objectives of this study were to choose an effective embryo reconstruction method and an effective post-activation agent for in vitro production of sei whale (Balaenoptera borealis) interspecies somatic cell nuclear transfer (iSCNT) embryos. Moreover, trichostatin A (TSA) treatment of whale iSCNT embryos was performed to improve the in vitro embryo development. In Experiment 1, the fusion rate was significantly higher (88.1%) in embryos reconstructed using the intracytoplasmic cell injection method (ICI) than that (48.7%) in the subzonal cell insertion (SUZI) counterpart. The rates of pseudopronucleus (PPN) formation (77.4 vs. 77.2%) and cleavage (24.5 vs. 37.0%) did not vary between ICI and SUZI. However, the PPN formation and cleavage rates were significantly (P<0.05) lower in the iSCNT embryos than in the parthenogenetic control (95.7% and 64.4%, respectively). Although 21.5% of the bovine parthenogenetic embryos developed to the blastocyst stage, no iSCNT embryo developed beyond the 6-cell stage. In Experiment 2, the cleavage rate did not vary between the TSA (50 nM)-treated and non-treated whale iSCNT embryos (30.5 vs. 32.3%, respectively). Moreover, it did not vary between the TSA-treated iSCNT and SCNT embryos (30.5 vs. 32.0%, respectively). Only one TSA non-treated iSCNT embryo developed to a compacted morula with 20 nuclei. One TSA-treated whale SCNT embryo developed to the 8-cell stage, and out of five whale iSCNT embryos, a 6-cell stage embryo was positive for whale DNA. In conclusion, bovine oocytes have the ability to support development of sei whale nuclei up to the 6-cell stage.