著者
村上 周三 高橋 義文 加藤 信介 崔 棟皓 近藤 靖史
出版者
公益社団法人 空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会 論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.57, pp.105-116, 1995
参考文献数
11
被引用文献数
13

閉鎖空間内の温熱環境を詳細かつ総合的に予測するためには流れ場,放射場を連成させた数値シミュレーションを行うことが有効となる.冷風吹出しと冷却パネルを併用した冷房方式の居室を対象として,壁面対流熱伝達の計算に熱伝達率α_cを壁関数として用いる境界条件を用い,対流場と放射場を連成させた数値シミュレーション(k-εモデル)を行い,温熱環境を構造的に検討した.本報(第1報)では,放射と対流を連成させる数値シミュレーション手法の概要を説明し,冷風吹出しと冷却パネルを併用する冷房居室にこれを適用解析した結果を示す.次報(第2報)では複雑形状をした居室内における対流・放射連成シミュレーションの放射計算にモンテカルロ法を適用し,その精度向上を図るとともに室内に家具などを設置した場合の解析結果を示す.本報に示す主な検討結果は,以下のとおりである.(1)対流熱伝達シミュレーションの精度に十分な注意を払えば,実験と数値シミュレーションは気流分布・空間温度・壁面温度ともに十分な精度で対応している.(2)実験と数値シミュレーションでは,強制対流式冷房の場合,居住域内でドラフトが発生しているが,強制対流・放射併用式冷房の場合は居住域内のドラフトは発生せず,天井冷却パネルはドラフトの軽減に効果的である.(3)ペリメータ部(窓面,外壁面)から室内に侵入する熱,および天井冷却パネルの表面から吸熱される熱は,約半分がその面における対流熱伝達によるものであり,残りの半分は放射熱伝達によるものである.
著者
村上 周三 崔 棟皓 加藤 信介 北澤 智一 高橋 義文 中谷 義宣
出版者
社団法人空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
no.58, pp.145-151, 1995-06-25
被引用文献数
1

前報では,室内モデルにおいて強制対流・放射併用冷房の基本的な室内環境について検討した.本報では,前報と同一居室モデルを用いて室内にベッド,断熱ブラインドなどの障害物がある場合の影響や天井面の冷却方法などを変えた場合の効果を模型実験により検討する.室内の冷房方式に関し,前報で示した天井冷却パネルと外壁の対向壁上部の空調吹出し口による場合に加え,本報では冷却チャンバによる天井冷却を行わず天井中央もしくは天井入隅部に水平スロット吹出し口を設置し,天井面付着流により天井表面を冷却する受動的天井冷却冷房システムに関してもその室内環境を検討する.本報に示す主な検討結果は,以下のとおりである.(1)天井放射パネルを有効に活用するためには窓部からの熱放射を遮断することが肝要となる.(2)天井面を受動的に冷却する冷房方式で放射冷却効果(MRTの低下)が最も顕著に現れたものは,室内の天井と壁の入隅部に吹出し口を設けた水平スロット吹出し冷房である.(3)吹出し噴流を天井面に付着させることにより,天井表面温度の低下が実現されるとともに,室内居住域のコールドドラフトの発生が抑制される.(4)温熱環境指標PMV,SET^*の解析からは,各冷房方式ごとの放射環境場の違いによる顕著な差異は認められなかった.