- 著者
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村上 周三
吉野 博
- 出版者
- 一般社団法人 日本建築学会
- 雑誌
- 日本建築学会論文報告集 (ISSN:03871185)
- 巻号頁・発行日
- vol.325, pp.104-115, 1983-03-30 (Released:2017-08-22)
- 被引用文献数
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住宅の気密性能に関する昭和36年以後の研究報告を一覧にして表-1に示す。わが国ではすでに大正13年に野村が, また昭和3年に大谷が室に存在する隙間の換気に及ぼす影響を実験的に検討しており, 隙間の量を部位別に目測し, その結果を示している。渡辺は, それらの結果を基に, 室容積1m^3当りの隙間面積が, 木造真壁造の和室では構造が粗の場合90cm^2以上, 中の場合60〜50cm^2, 密の場合30cm^2以下であり, コンクリート造の洋室では, 10〜15cm^2であることを述べている。その後, 昭和36年に, 前田, 石原等はコンクリート造集合住宅を対象として部位別の気密性能を減圧法(後述)により初めて定量的に測定した。最近では, 楢崎等が単室及び数室の気密性能及び防音実験住宅の気密性能を, 筆者らは各種住宅25戸を対象に, 市川等は集合住宅を, 浅野は各種住宅10戸を, 旭ダウ(株)の研究グループは北海道の断熱改修もあった。これはサッシの隙間の約3倍の量に達する。また, 3つの集合住宅における部位別のαAを比較した結果, 目につかない隙間は28〜126cm^2と大幅に異った。(3)建物に設置された後のサッシの気密性能は, 本来備わっているはずの性能よりもはるかに劣ることがある。今回測定した中では, Q_<l0>が, 性能試験値の6倍に達するものもあった。(4)住宅全体の気密性能を, 単位床面積当りの隙間の相当開口面積によって表し, 既往の測定結果を含めてグレード表に位置づけた結果, 各国における気密性能の水準が明らかとなり, わが国における気密性能の目標水準を設定するための手がかりを得ることができた。(5)気密性能の異なる3つの集合住宅において, 既設の台所換気扇を運転し室内圧を測定したところ, αAが2.4cm^2/m^2である防音気密住宅の場合, 排気量360m^3/hで-12.8mmAqにも下がった。この住宅で便所系統の換気扇を同時運転したところ, 便所系統のダクトから逆流が生じた。気密住宅において, 逆流やドア開閉時のトラブルを考慮して, 室内圧低下を-4mmAq程度にとどめるためには, 給気ダクトの径を175〜200mmにする必要のあることが, 実測及び数値計算より明らかとなった。