著者
保地 真一 崔 龍鎬 Joachim W. BRAUN 佐藤 邦忠 小栗 紀彦
出版者
Japanese Society of Equine Science
雑誌
Japanese Journal of Equine Science (ISSN:09171967)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.145-150, 1994-03-31 (Released:2011-11-29)
参考文献数
21
被引用文献数
4 4

ウマの屠場卵巣からの卵子の採取効率,ならびにそれらの体外培養における第2減数分裂中期への成熟率に影響を及ぼす要因を検討した。卵胞吸引法では1年の試験期間を通して一定の卵子数(卵巣当たり1.3-1.6個)が採取されたが,卵胞吸引に続いて行った卵巣細切法では春季と冬季の卵巣から効率よく卵子が回収された。両法により採取された一卵巣当たり卵子数は,春季(3-5月)で平均5.8個,夏季(6-8月)で3.6個,秋季(9-ll月)で4.0個,冬季(12-2月)で5.1個となった。ウマの品種に関しては軽種馬よりも重種馬の卵巣から多くの卵子が採取された(卵巣一個当たりそれぞれ4.4個,7.6個)。いずれの品種においても屠殺時のウマの年齢は卵子の採取率に影響を及ぼさなかった。春季と冬季の体外成熟率(それぞれ55.5%,58.3%)は夏季や秋季のそれ(それぞれ64.4%,65.7%)とのあいだに有意な差はなかったが,若干低くなる傾向が認められた。軽種馬と重種馬から採取された卵子の体外成熟率には差は認められなかった(それぞれ53.7%,58.7%)。卵巣の保管時間についてはウマの屠殺から卵子採取までの時間が3時間のときの卵子の成熟率は62.3%であったのに対し,6時間で45.0%,9時間で30.4%に低下した。培養小滴当たりの卵子数はそれらの成熟率に影響を及ぼさなかった(卵子数が1-5個のとき55.1%,6-10個のとき56.3%,11-15個のとき50.8%)。ウシ胎子血清の存在下では58.1%の卵子が成熟したが,ウシ血清アルブミンや無血清下でさえそれぞれ62.1%,65.3%の成熟率が得られた。培養気相は成熟率に影響を及ぼさなかった(5%CO295%空気で60.6%に対し,5%CO2 5%02 90%N2 で53.6%)。