著者
常本 建輔 鈴木 三義 三好 俊三 光本 孝次 小栗 紀彦
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告 自然科学 (ISSN:09193359)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.p1-9, 1992-11

競争馬の競争能力は,走行タイム,獲得賞金,ハンデキャップなどを指標として評価され,他の形質との関係が分析されている。本研究では,競争能力の指標として獲得賞金を取り上げ,それを4つのクラスに分類し,競争馬の体重と競争能力との関係を検討した。さらに,過去20年間の競争馬の体格的な変化についても検討した。日本中央競馬会発行の『1990競争馬成績書』から4才馬雄784頭,雌482頭の体重の記録と4才クラシックレース(皐月賞,ダービー,菊花賞,桜花賞,オークス,エリザベス女王杯)における過去20年間の全出走馬の体重の記録による2つのデータセットを用いた。分析Iでは,馬体重に影響を及ぼす効果を推定した。要因としては,誕生月,獲得賞金クラス,出走距離,および性を考慮し,最小二乗分析を行った。分析IIでは,競争成績と馬体重との関係を過去20年間の競争馬の平均体重の推移から検討した。考慮した要因は全て有意であった(P<0.01)。要因の水準間では,4月,および5月生まれの馬は2月,および3月生まれの馬より体重が重く,競争能力の高い馬は体重が重い傾向にあった。性別では雄は雌より約20kg重かった。クラシックレースにおいても,成績上位馬は成績下位馬より体重が重いものが多く存在した。また,過去20年間に競争馬の体格には大型化の傾向が認あられた。
著者
須田 順子 セルビト ウイルソンA. 小栗 紀彦 松沢 時弘 岡 明男 佐藤 邦忠
出版者
Japanese Society of Equine Science
雑誌
日本中央競馬会競走馬総合研究所報告 (ISSN:03864634)
巻号頁・発行日
vol.1992, no.29, pp.26-31, 1992-12-20 (Released:2010-08-10)
参考文献数
18

若齢雄馬の精巣の組織所見解析に, 多変量解析法の一つである主成分分析の応用を試みた.材料と方法: 臨床所見から, 異常の認められない雄馬5頭の精巣を採取し, 精巣の大きさ (長径×短径×幅cm) と重さ (g), ならびに左右各7ヵ所の組織標本を作成し, Sertoli細胞数, Leydig細胞数および精細管の大きさ (断面の最長径と最短径の積: μm2) を求め, 多変量解析を行った結果:(1) 精巣の大きさと重さ, Johnsenスコア, Sertoli細胞数およびLeydig細胞数, 精細管の大きさ等の要因には, 個体間と精巣の左右間に有意差が認められなかった (P<0.05).(2) Johnsenスコア; Sertoli細胞数と精細管の大きさ. Sertoli細胞数; 精細管の大きさの相関係数には有意性が認められた (P<0.05).(3) 主成分分析で, 精巣からの組織採取部位による所見に差異があることが明らかになった.以上の結果から, 精巣組織所見の分析に主成分分析の応用が可能であることが明らかになった.
著者
フェルナンドトーレス ボジノ 佐藤 邦忠 岡 明男 菅野 幸夫 保地 真一 小栗 紀彦 ヨアヒム ブラウン
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.225-229, 1995-04-15
参考文献数
22

輓用種牡馬4頭について, 精液性状, 繁殖成績, 及び精液の保存性(液状保存と凍結保存)の関係を検討した. 精液性状については膠質除去後の精液量, 精子の濃度, 正常精子率, 及び精子運動性を調べ, また繁殖成績については過去3年間の累積の妊娠率とした. 精液の液状保存は5℃で行い, 0, 24, 48, 72時間目に精子の運動性を調べた. 精液の凍結保存には2種類の異なる希釈液(ブドウ糖-EDTA-ラクトース・卵黄希釈液, 脱脂粉乳-清澄卵黄希釈液)を用い, 凍結融解後の精子運動性と正常精子率を調べた. 精液性状の各値と繁殖成績は通常の変動範囲内にあったが, 膠質除去後の精液量, 正常精子率, 精子運動性, 及び繁殖成績に種牡馬間で有意差が認められた. しかしこれらのパラメーター間には相関性は認められなかった. 液状精液の保存性には種牡馬間で有意差が認められ, 保存前の精子運動性が最も高い個体で最も良好であった. また凍結精液では使用した希釈液にかかわらず融解後の精子運動性(13.8〜26.3%)と正常精子率(19.5〜38.0%)はともに低い値であった. 個々の種牡馬において精液の液状保存と凍結保存の結果には相関性が認められなかった. 以上の結果から, 精液の保存に対する適性を他のパラメーターから類推することは困難であると思われた. 輓用種牡馬精液の耐凍性を向上させるには,現在の凍結精液作製に関わる標準的手法に改良を加える余地が残されている.
著者
保地 真一 崔 龍鎬 Joachim W. BRAUN 佐藤 邦忠 小栗 紀彦
出版者
Japanese Society of Equine Science
雑誌
Japanese Journal of Equine Science (ISSN:09171967)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.145-150, 1994-03-31 (Released:2011-11-29)
参考文献数
21
被引用文献数
4 4

ウマの屠場卵巣からの卵子の採取効率,ならびにそれらの体外培養における第2減数分裂中期への成熟率に影響を及ぼす要因を検討した。卵胞吸引法では1年の試験期間を通して一定の卵子数(卵巣当たり1.3-1.6個)が採取されたが,卵胞吸引に続いて行った卵巣細切法では春季と冬季の卵巣から効率よく卵子が回収された。両法により採取された一卵巣当たり卵子数は,春季(3-5月)で平均5.8個,夏季(6-8月)で3.6個,秋季(9-ll月)で4.0個,冬季(12-2月)で5.1個となった。ウマの品種に関しては軽種馬よりも重種馬の卵巣から多くの卵子が採取された(卵巣一個当たりそれぞれ4.4個,7.6個)。いずれの品種においても屠殺時のウマの年齢は卵子の採取率に影響を及ぼさなかった。春季と冬季の体外成熟率(それぞれ55.5%,58.3%)は夏季や秋季のそれ(それぞれ64.4%,65.7%)とのあいだに有意な差はなかったが,若干低くなる傾向が認められた。軽種馬と重種馬から採取された卵子の体外成熟率には差は認められなかった(それぞれ53.7%,58.7%)。卵巣の保管時間についてはウマの屠殺から卵子採取までの時間が3時間のときの卵子の成熟率は62.3%であったのに対し,6時間で45.0%,9時間で30.4%に低下した。培養小滴当たりの卵子数はそれらの成熟率に影響を及ぼさなかった(卵子数が1-5個のとき55.1%,6-10個のとき56.3%,11-15個のとき50.8%)。ウシ胎子血清の存在下では58.1%の卵子が成熟したが,ウシ血清アルブミンや無血清下でさえそれぞれ62.1%,65.3%の成熟率が得られた。培養気相は成熟率に影響を及ぼさなかった(5%CO295%空気で60.6%に対し,5%CO2 5%02 90%N2 で53.6%)。