著者
嵐 弘美
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.52-60, 2021 (Released:2021-06-29)
参考文献数
11

目的:精神科看護師が自身の身体をとおして,どのように統合失調症者を理解して看護を実践しているのかを明らかにする.研究方法:Merleau-pontyの現象学的身体論に基づいた質的帰納的研究デザインを用い,統合失調症の看護経験が3年以上の看護師15名に半構成的インタビューを行った.結果:1.精神科看護師の身体をとおした統合失調症者の理解と看護実践には,身体性の次元と言語の次元がみられた.2.統合失調症者の生き辛さは,《自分の身体に馴染めない》,《他者の身体に脅かされる》,《自分らしく生きることに困難を抱える》であった.3.精神科看護師は,【共鳴する】ことと【応じる】ことを通して【関係性によって癒す】という実践をしていた.考察:精神科看護師は,統合失調症者の「自己性の形成不全」という生き辛さを,間身体性による付き合い方の身体知によって築いた関係性によって癒すことが示唆された.
著者
嵐 弘美
出版者
日本精神保健看護学会
雑誌
日本精神保健看護学会誌 (ISSN:09180621)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.38-49, 2009-05-31 (Released:2017-07-01)
参考文献数
6

<目的>中井(1989)の「身体-身体像-自我の三者関係からみた統合失調症の経過のモデル」に基づき、統合失調症者に対する身体ケア技術の意味を明らかにすることである。<方法>看護ケアの参加観察からデータを質的に分析した。<結果>研究対象者の身体-身体像-自我の三者関係の障害は、身体→自我→身体像の順に回復し、身体ケア技術は、障害の回復に先んじて、身体→自我→身体像の順にその焦点を移行させていた。また、身体ケア技術は、<精神及び身体の状態を観察・把握する><身体感覚の機能を代理し、回復を促す><自我を保護し、補足する><看護師の身体性を通して、空無化した身体の存在を保証する><身体像の修復を促す>という5つの技術から構成されており、特に<身体感覚の機能を代理し、回復を促す>技術の重要性が示唆された。<結論>結果から、身体ケア技術の意味は、身体-身体像-自我の三者関係に直接的に働きかけることによって、心身の分裂に橋を架け、統合失調症の回復に寄与するものであると捉えられた。